元HISトップ営業が読み解く「てるみくらぶ事件」と中小企業の営業戦略
格安海外旅行の代表格ともいえるHIS出身者からみた今回の「てるみくらぶ」から、中小企業の営業戦略を読み解きたいと考えます。
報道では言葉の使い方一つで、印象が随分違うものですが、今回のてるみくらぶは、「問題」というよりも「事件」と呼ぶ方が適切ではないかと考えます。
その理由は3点あります。
まず第1に、物事における最大のリスクは人命に関わることですが、海外旅行であるがゆえに、それが発生する可能性すらあったのに考慮されておらず、そのリスクはいまだ残っています。(※最悪のケースはどうやら免れたようですが…4/3現在)
第2に、一企業のトラブルに留まらず、少なくとも記憶が鮮明な1~2年後までは同業の関係ない旅行会社を含め、旅行業界全体への相当な悪影響が予想されます。
第3に、業界・内部事情に詳しい人や、普段から注意深い傾向がある以外の善意のお客様には、予測できない発生の経緯です。著名な新聞にバンバン広告が出ていて、50人も新卒採用していれば、業績好調な会社と思う方が自然です。
ゆえに、意図的でなくとも、法律に反していなくとも、結果的には「おれおれ〇〇」に等しい状態にもなってしまっているのではないでしょうか…。
身の丈にあった経営というのは、言うは易く行うは難しです。
海外旅行業は、市場が2兆円で、トップのJTBグループが業界シェア21.5%、2位のHISグループが17%(出典:日本旅行業協会)と、この2社で約40%あり、他の上位企業も大半は、飛行機・鉄道・運輸やカード事業と別の母体を持つ企業群が占める構造になっています。
要は、過去20年の期間において、独立系で世間一般が認める大企業に成長できたのは唯一「HIS」だけというのが実態であり、更に、代理店スタイルであるため、粗利率そのものが低いビジネスです。
営業戦略上、後発企業が、資金が圧倒的にかかる広告宣伝のやり方で、継続的に成長し続けるのは、最初から無理があるのです。
このような市場では、先行投資型の営業戦略ではなく、いかに循環型で旅行業ならではの口コミやSNS等を活用する営業戦略をとったり、ニッチ分野かコアな客層にアピール(バリ専門、高級ホテル専門)するといったやり方で、一定規模までは成長しても、そこからは規模の拡大を追わず、適正な利益が得られる経営の舵取りをする必要があります。
会社経営において、売上は理屈としては青天井ですが、確実に市場としての見えざる上限が存在するものです。
ゆえに、中小企業は、乾坤一擲の大勝負や奇策に出るよりも、余力があるうちに、先ずは、現有戦力のままて増収増益する体制へと移行し(≒全員営業)、その次の展開として、同じ広告宣伝をするにしても経営リスクを最小にしつつ強化したり、新たに人の採用を行うというのが最善の手順なのです。
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