出来すぎる営業マンを抱える会社のリスク
「今週もアポイントが一杯で、おかげさまで忙しくさせていただいております!」
先日、久しぶりにお会いしたある会社の営業マン。相変わらず忙しく走り回っている様子で、「商売繁盛で良いですね~!」と返すと、「いや~なかなか儲けには繋がりませんケドね」とおっしゃっていました。
彼はこの道10年のベテラン営業マンで、“真面目にコツコツ”の姿勢が評価され、多くの契約を抱えているようです。しかしここ数年は忙しすぎて顧客を回りきれず、フォローできない顧客も目立ち始めたそうです。この会社に限らず、デキる人・人気のある人に仕事というのは集中するもので、社内をバランス良く回すことは多くの経営者の共通の悩みなのではないでしょうか?
先ほどの会社も、5名いる営業マンの中では彼が飛び抜けて契約を取り、他の社員は毎月の目標を達成するのも困難な状況…「残りの人間も同じように仕事をしてくれれば良いんだが」と言うのが社長の口癖です。同じ商品を同じように提案しているのに、何故こんなにも差が開くのか?営業とは難しい仕事で、特別な人間にしかできないんじゃないのか?やっぱり営業って大変だよな~…という偏った思考は世の中の“営業”に対する誤った印象を作り上げているように思います。
確かに、決してラクな仕事ではありませんが、他の仕事と同様にやり方を上手く工夫できればこんなに楽しくやりがいのある仕事はない…と私は思っています。うまく成果に繋がらない営業マンを抱える会社の共通点は、
「みんなに同じようにやらせている」
…ところが多いのではないかな?と思います。
例えば、訪問先のリストを作成し、個別の訪問件数の目標を立て、営業ツールの準備とトークの練習もバッチリ!後は、見込みの度合いに応じてランク分けをし、フォローをしていく…という流れをとっている会社があったとすると、ほとんどの場合、毎回の営業会議はその進捗を管理する場となり、目標に達している人間は高く評価される一方で、達成できていない者は“デキナイ人間”扱いをされる、という構図が出来上がってしまいます。ここで気をつけなければならないのは、
「仕組み化してあるので、誰しも同じようにできるだろう」
と思ってしまうことです。
きちんとできる人間が一人でもいると、“できている”ことが普通になってしまい、会社全体で“できない理由つぶし”をしてしまっているケースです。「こんな良い商品なんだから売れるハズだ」「こんなに分かりやすいパンフレットを作ったんだから伝わっているハズだ」「これだけ訪問しても契約につながらないのは、ねばりが足りないからだ」…と吊るし上げられている営業マンを何人も見たことがあります。
できないレッテルを貼られた人のモチベーションは下がる一方で、これではアポイント先に訪問しても、決して楽しそうに話しているようには思えないし、相手との会話が弾み、前のめりになって話しを聞いてもらっている姿など想像できません。
一方で、できる営業マンに対しては「結果がすべて」とばかり社内では過大評価されてしまいます。こちらに対しては、「なぜうまくいっているのか?」「どこが分かりやすいのか?」「何が他の社員と違うのか?」の分析をすることも無く、その人間の力量に任せっきりになっているケースを多く見かけます。しかし、経営者としてはその人の営業力は大きな頼みの綱であり、手を止めて話しを聞いたり分析したりする時間をつい惜しんでしまうものです。
結果、社内の大事な経営資産でありながらいつまで経ってもその人にしかできない特別なものの域を出ない残念な状態が続いてしまうのです。仮に、その人間に自分の分析を自身で行わせようとしてもほとんどの場合できません。営業に限らず、デキる人ほど当たり前にその仕事をこなしているため、多くのスーパープレイヤーは「なぜ自分がスーパープレイヤーなのか?」を言語化する能力が低いと言われいます。これまでに、第三者に分かるよう説明しようなどと思ったことも無ければその必要も無かったからです。
経営者の皆さま。御社にはスーパープレイヤーと言われる社員がいませんか?その人に仕事が集中していませんか?そのスキルは社内資産化されていますか?スーパープレイヤーの手を止めて仕事が減ることは勿論怖いことですが、将来的に仕事が回らなくなることも同じくらい怖いことなんですよ。社内の経営資産は、言語化して他人に伝わってこそ初めて価値となり、それを進めるのは経営者の仕事なんですよ。
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