商品は良い、営業もがんばっている…それでも売上が下がる時の対処法
「辻先生、わが社は、商品は良い、現場もよくやっている、知名度もある。しかし、ここ数年、どうやっても売り上げが上がらないんです。なぜでしょう?」
ある飲食チェーンをコンサルティング指導した時の話です。
その飲食チェーンは、私が大学生の時、「行列で待つなら他を探すのが常識の大阪」で、創業10年たっても行列が続いているというので有名なお店でした。
私が指導する頃、さすがに行列はお昼どきくらいでしたが、親子2代でリピーターのお客様もいる商品レベルで、社員教育はOJT以外も毎月、店長とスタッフ別で10年以上やり続けています。
「商品は水準以上、現場も業界平均以上、知名度もある!」…でも、売上は毎年じわじわと減少するという状況でした。
実際に関わることで見えてきた原因が幾つかありましたが、その一つが、ここ最近は、ヒット商品が出ていないでした。そこで、新しくメニュー検討会を設置して、私もメンバーに入りました。
試食を繰り返し、ようやく自信作と言える新メニューができ、最終決裁で、社長に試食してもらったところ、『ちょっと味が濃い』という判断でした。
ここまで検討を繰り返し、これなら大丈夫という幹部クラスの合意はあっても、相手はオーナー社長なので、営業部長や店長はじめ、誰も何も言いません。
このままだと新メニューは、ボツで仕切り直しか…となりそうだったので、私が一言次のように言いました。
「失礼かもしれませんが、社長の年代の方は、御社のメインのお客様ではありません。20代と60代に受けるメニューは、違うのも自然でしょう。単に味だけでなく、料理全体の品質や御社のメニューとして違和感がないか等の視点でご判断下さい」
目を閉じて少し思案した後、さすが繁盛店を作った創業社長だけあって…
『それは一理あるな。よし、今回は現場の思う通りにやって見ろ』となり、実際に投入し販促をかけたところ、お店によっては、早くも翌月に売上トップ3のヒット商品になりました。
その他、並行して複数の施策を同時進行させた結果、1年以内に、10店舗以上ある全店舗が対前年アップし、会社全体では売上2億円アップとなりました。
商品が良い、現場が強いというのは、売上を上げるために重要な要因ですが、それだけではうまくいかない時があります。特に、成功体験に長くつかっていた会社や経営者であればあるほど、今回に似た落し穴にはまることもあります。
ドラッカーも、私の考えと同様の発言をしています。
「いかに優れた決定に見えようとも、必要条件の理解に不備があれば、成果をあげられないことが確実である」
業種や会社によっては、昔の営業のやり方が通用しなくなったというよりも、環境の変化やお客様を把握しきれていないために、経営判断そのものがズレてしまっていることがあるのです。
さて、御社では、どれくらいお客様を、そして自分たち自身のことが理解できているでしょうか?
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