権利主張と義務先行のバランス
働き方改革が叫ばれ、生産性や時短の改善に取り組む企業が増えています。
就業時間が短くなり、その分仕事のやり方を個人や組織内で変革し、結果として生産性が高まるのは良いことだと思います。
しかし、その陰で「顧客に提供する価値」に影響が出ては本末転倒です。
それがエスカレートすると、顧客から「選ばれなくなり」、やがては企業の存在価値を低落させることにもなり得ます。
このような社会の風潮を受けて、上司が、社員の就業時間に対する苦情をそのままを受けてしまい、逆に正しく指導できない、というおかしな事態も一方では起きています。
上司は、「厳しく注意して、社員が辞めてしまったら、私の責任が問われる」ということを恐れ、部下に強い姿勢で臨めない、と言います。
・・・経営者から見れば、このような本末転倒はない。(当たり前ですよね。)
このような現象を考えると・・・社員を育成するということは単に「仕事のやり方」を教える、という姿勢では不十分だと言えるのではないでしょうか。
「仕事は効率よく、無駄な作業は省いて時短する」これは生産性を高めるには大切なことでしょう。
・・・しかし、この「無駄な作業」の中に、会社の提供価値を高める業務が含まれていないか?
仕事に対する考え方や姿勢、また、組織が提供する価値にベクトルが揃っていないと本来顧客に提供するべき価値を高めていくという「義務先行」型ではなく、働き方改革は、労働時間の短縮、とばかりに、「権利主張」型の人材ばかりの組織になると企業の「提供する価値」は低くなっていきます。
その延長線上に、将来その組織が成長し、継続でき得る組織になるとはとても思えません。
・・・では、どのように考えるか。
社員の育成で、最も注力すべきこと。
それは会社が大切にしている「仕事観」を教え、共有していくということではないでしょうか。
「仕事観」・・・すなわち、仕事に対する考え方や捉え方がずれていると、それは本人の働き方におのずと現れ、それが、仕事に対する迷いになったり、顧客の不信感につながったり、社員間の温度差につながったり、就業時間に対する単なる不平不満につながったりします。
確かに、就業規則は大切です。
しかし、それに縛られて、仕事の質が下がり顧客からも「選ばれない」ようになっては、本末転倒。
正しい仕事観をしっかり共有する。
その上で、会社が提供している価値を正しく理解する。
その価値を高めていくために努力し、自分の時間を主体的に効率化する。
会社側も、将来を見据えて、人員の採用〜育成に投資し、働きやすい環境の構築に努力する。
労使が協力し、知恵を絞り、チームワークを高め、工夫するところに、これから目指すべき組織像がある。
顧客への「提供価値を高められる」ように、皆さんと仕事のやり方の改善を進めるのだ、という話を常にリーダーは発信していかねばなりません。
さらに、そもそも会社は何のためにあるのか、なぜ我々は働くのか、といった本質的なことや、仕事は自分の人生にとって何なのか、・・・ということを考える機会は人生の中でそんなにないと思いますが、とても大切なことだと、経営改善の現場でいつも感じています。
特に、社会人経験の浅い社員は、このような本質的な考え方を理解していないと、労働時間に対する考え方を間違い、「権利主張」だけが先行し、会社との信頼関係が築けなくなってしまいます。
それが、せっかく採用した社員が離職する要因にもなる。
「権利主張と義務先行のバランス」。
・・・このような仕事観をしっかりと伝えることが大切です。
会社の提供価値がダウンし、顧客から選ばれなくなると、会社の継続自体もまた、できなくなるのですから。
社内で高め、揃えるべきは「仕事」そのものに対する姿勢です。
あなたの組織では、会社が大切にしている「仕事観」を定義して、社員に浸透させる教育の仕組みを備えていますか?
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