中小企業は焦点の当て方で絞って売上を伸ばす
「岩井さんはどんな業種が強いんですか?」
ある会社を訪問した際、先方からこんな質問をいただきました。
製造業であるその会社にとって、「この人は業界のことがちゃんと分かっているんだろうか?」というのは気になるところです。このようなご質問をいただいた時、私の答えは、いつも「特定の業種が得意ということはありません。」
現実問題として、クライアントさんの業種も様々です。製造業もあれば、飲食業、不動産業、コンサルティング業など業種も多岐に渡ります。数から言えば第三次産業が多いのですが、第一次産業に属するクライアントさんもおられます。
だから、先の回答になるのですが、当然のことながら私の答えに納得されずに、仕事に結びつかないこともあります。また、実際にお客様のご要望が業界に精通していないと解決できない特種な課題の解決であれば、私の方からお断りしています。
一方で、クライアントさんとセッションをやっていて喜ばれるのは、「そんなことは考えもつかなかった!」「この発想は初めてです!!」というようなことです。つまり、業界の外から見た時の新しい気づきや指摘がかえって、すごく新鮮に感じられるという訳です。
先日も「この言葉ってどういう意味ですか?」という素人目線の質問から掘り下げていく中で、「商品の本当の魅力はこの基準をクリアしていることではなくて、『いざという時、安心を生む』ということではないか」という発見がありました。
業界の中では業界人同士なら通じる常識があります。そして、お互いに分かっている人の中で話をしていると「やっぱりそうだよね」とすぐに納得することが少なくありません。
しかし、実際のユーザーや投資家が必ずしもその業界の事情や業種特有の課題をよく分かっているとは限りません。このため、商品の魅力を伝え、最終的に消費者に買ってもらう、会社の将来性に共感して、金融機関や投資家にお金を出してもらう時、業界にどっぷりつかっていないことも貴重な価値なのです。
実際、広告関係のお仕事を長年やっている知人の経営者の方は、ある時ご自分のクライアントさんから、「もうこれ以上ウチのことを詳しくならないで下さいね」と言われました。
あまり会社のことが分かり過ぎてしまうと、かえって広告を作る際に客観性がなくなります。その結果、せっかくの切れ味が鈍る恐れがあることをそのクライアントさんも理解しておられたのです。
もちろん仕事によっては業界や業種に特化した方が良い場合もあります。でも、中にはコンセプトや取組み姿勢がしっかりしていれば、業界や業種に関わりなく、通用していく仕事もあります。
ポイントはどこから焦点を当てて絞るのかということ。
経営資源の限られている中小企業は絞らなければいけないと言われます。一方で、絞るとビジネスチャンスがなくなると感じるので、二の足を踏む経営者も少なくありません。
しかし、絞ると小さくするとは似て非なるもの。焦点の当て方によっては絞ることで、範囲も可能性も大きく広がります。
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