社長!この5年で売上を大きく伸ばしていなければ、それは業績悪化です。
「ウ~ン、具体的に計算してやっと分かったよ。毎月見ているのだけどね、大きく数字が変わらないだろう、問題にするほどではと思っていたんだね。でも決算書で見れば、人件費の割合は、大きくなっていたんだ。
数字は比べることが大事だね。オレがゆでガエルになるとはね、自分を過信し過ぎだ。」
3月は決算の月です。
「いい決算にしよう」と思っている社長さんは、予算案との差異をこの3月中に、見つけ出して、差異を埋めこみます。
差異を埋目込むのに一番大事なのは、直近までの数字をどこまでスピーディに正確に拾えるか、です。経理の力が試されます。
売上はおおよそ予定通りに進んでいたのですが、経常利益が想定よりも一千万円以上低いのです。営業利益も同様。粗利益率が若干低めか、、、?
社長はもともと経理畑の出身者です。
工程管理をきちんと進める社長は、無駄をしない自信がありました。
無駄な支払いは口うるさく削っている。
しかし、確かに予定していた利益が出ていない。
毎年少しずつですが、増加している費用がありました。
「法定福利費」という科目です。
10年前からの社会保険料労使合算料率の推移が下記の表です。
|
健康保険料 |
厚生年金 |
計 |
平成17年 |
9.31 |
14.28 |
23.59 |
平成18年 |
9.45 |
14.09 |
24.09 |
平成19年 |
9.43 |
14.99 |
24.42 |
平成20年 |
9.33 |
15.35 |
24.68 |
平成21年 |
9.39 |
15.7 |
25.09 |
平成22年 |
10.84 |
16.05 |
26.89 |
平成23年 |
11.01 |
16.41 |
27.42 |
平成24年 |
11.11 |
16.76 |
27.87 |
平成25年 |
11.61 |
17.12 |
28.73 |
平成26年 |
11.78 |
17.47 |
29.25 |
平成27年 |
11.62 |
17.82 |
29.44 |
平成28年 |
11.65 |
18.182 |
29.832 |
平成29年 |
11.65 |
18.3 |
29.95 |
平成25年には、新たに社員を一人(年収400万円)雇うと、労災や雇用保険などを含めた会社負担額は、52万円(13%)でした。それが、平成29年には、
61万円(15.56%)です。
社会保険事務所からは、いつもお知らせが来ていました。
もちろん、社長は書類が来ていることは、知っています。
この2月にも、「保険料率についてのお知らせ」が、事務所に届いていました。
お知らせには、「保険料率が変更になります。」と書かれていました。
健康保険料率は、9.96 → 9.91
介護保険料率は、1.58 → 1.65
社長も目にしてはいたのですが、片方が下がって、もう片方が上がっている。
「ああ、変更になったんだね。」
でもよくよく見ると、毎年ちょっとずつの値上げになっているのです。
取引先の業者が、こんなに毎年勝手に値上げしてきたら、社長はきっと業者をかえるはずですが、これは、納税と同じ、お国への支払いだからと、自分で自分を納得させていたのです。
先ほど計算したように、平成25年と平成29年の負担額を比較するとなんと一人当たり6万円も負担が増えています。
会社の従業員が20名であれば負担増加額は、一年で120万円。
社長の会社は、従業員が50名、負担増加額は、なんと850万円も増えていました。
経費の金額で見ても大きな費用増加ですが、この費用を稼ぐにはどれほどの売上が必要か計算してみましょう。
仮に営業利益率が5%であれば、売上金額では17000万円にも相当します。
社長が費用を負担する時に必ずしなければならない大切な思考は、この売上に置き換える、という考え方です。
この金額を稼ぎだすには、いったいいくら売上を上げなければいけないんだ?
売上を上げようとする経費なのか?
直接は売上に結びつかないけれども、お客様のフォローをする経費なのか?
さて、かの社長さんは、がっくり来ています。
この5年間、ほぼ昨対比100%の売上推移。
経費が増えても、利益は出し続けています。
だって、売上が上がらない分、役員報酬を下げているからです。
お国に奉公するのも仕事だからしょうがないけれど、自分で分かって支払うのと何となく支払っているのでは、お金の値が違います。
何となく請求書が来たから払うでは、そのうち自分もゆでガエルになると思ったのです。
売上を持ってくる費用に支払いをかけていく、その意識を改めて決心した社長です。
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