衰退組織は、空気に寄り添う 成長組織は、理念に寄り添う
「社長、例えば、『役に立つ企業』ってどんな特徴がありますか?」
先日、ある白髪混じりながらも、颯爽とした叩き上げの経営者の方から経営理念、経営計画書に関するご質問を頂きました。いろいろお話をする中で、私のほうから、先ほどの質問させていただきました。
本日も状況、内容、加工の上で、お伝えしていきます。皆様の少しでもお役に立てましたら幸いです。
私の質問に答える形で、その経営者の方は、専務の顔を見ながら、指折り数えて
「例えば、、感謝される。。。」
「例えば、、、顧客にとって、無くてはならない企業。。」
「例えば、、、、、」
途中から専務も参戦して、
「例えば、取引先からも必要とされる、、、」
「例えば、、、、」
こうして、いくつか「例えば、、、」が挙がってきた所で、私の方で復唱確認しました。
その上で、もう一つ質問させて頂きました。
「社長、専務、今頂いた、「例えば○○」社員の人達は同じように答えるでしょうか?」と。社長と専務は、顔を見合わせながら、しばし間。そして、「大体こんなもんじゃないかな。」と社長が言うと、専務もそうだ、そうだと首を大きく縦に振って、互いに頷き合ってらっしゃいました。
一人の人が影響力を与えることのできる組織のサイズは、諸説あります。少ないところで、3人。多くなると100人という説という具合。
ここで確認したいことは、影響力を与える正確な人数を知ることではなく、一人の人が影響を与える人数には限りがあるということです。
つまりは、人が増えるにつれて、社長が共有したい思いや価値、共有すべきルール等が伝わらなくなっていくのだということ。
経営者なら、一度は「え?知らないの?」「え?え?えーーー?オイオイ!」ガックリ、という経験をしたことがあるはずです。
ただ、大切な思いや価値は、共有され知らなくても、売上げ急降下するワケではありませんし、逆に売上げは徐々に増えていく時すらあります。
だから、こそ曲者。
組織の問題は、売上げが拡大している中では、あまり表面化しないもの。ところが、売上げが足踏み状態になる、伸びが鈍化するということが途端に噴出します。
例えば、
- 離職が上がり高止まりする
- 社内対立の激化
- 一人当たりの粗利の低下
- 指示に従わない部下
- 「従来通り」に固執する
- 病欠が増える
- 遅刻が増える 等々
病気と同じで、症状が長く重くなるほど、回復までの時間も余計に掛かるし、お金も掛かります。
一直線に業績が拡大する企業はありません。必ず浮き沈みが伴います。何か適切な手を打っておかない限り、全ての企業がこのような組織の問題を抱えることになるのです。
今、なんとなく上手くいっていることに安心していると、売上げが足踏みするつらい局面でそのツケを払うことになります。
何も手を打たない企業は、「あいまいな空気」に慣れていきます。「あいまいな空気」に慣れるとは、例を挙げるなら、
- 共有されているはずの理念の解釈がバラバラ
- 職場で守るべきルールがあるような、無いような
- 明確なルールとか、決め事がどこかに明文化されていない
- なんとなく、皆がやっているように皆がやる
というまさに、まさに全てが「あいまい」です。
組織にとって、「あいまいさ」は、弱点。
サッカーの試合で、片側にゴールが2つあったとしたら、試合になりません。どちらに入れたらいいか分からない。明確なゴールがない。そんな中で、選手が間違って後シュートするのは、選手の責任ではありません。どちらがゴールなのか伝えて置かなかった監督、コーチの責任です。
「あいまいさ」が許容される組織とは、経営者、経営幹部が「あいまいな状態」を許可しているからそうなっています。
「あいまいさ」はマネジメント技術が未熟なリーダーにとって都合がいいものです。「うちの会社の社員は皆、常識をわきまえている」と言えば聞こえがいいのですが、単なる放任です。中途入社の割合が多い企業によく見られます。
もし御社がそのような状況だったとしても、落胆することはありません。こうした企業からの相談はとても多いですから。
仮に深刻な状況にあっても、そこから組織の状態を改善することは、必ずできます。ですが、改善するためには、たった一つ絶対に必要な条件があります。
その条件とは、、、
経営者の覚悟です。
- どのような組織を作りたいのか?
- これまでの「あいまいな空気」のままやりたいのか?それとも、 「理念」を軸とした経営に切り替えるのか?
社長とはいえ、これまで「あいまいな空気」でやってきたら、別の状態はわからない。まだやったことがないことを決めるのは勇気がいることです。
だからこと、経営者の覚悟こそが、全ての基点になります。この覚悟定まらないまま、始めると、全部ダメ。改革は立ちゆかなくなります。
「企業理念とかなんか宗教くさくていやだよね」と言っていた経営者が、ある時、理念を実現するために必要な社員の行動基準を定め、 そして、経営計画書を作成されました。
そこには、その経営者が経験の上で培ったノウハウが全て詰め込まれていました。さらに、改訂を重ねて、現在では、成果を出した社員に共通した点などが盛り込まれています。
その会社の全ての智恵が経営計画書という冊子にまとめられています。その会社、16期連続増収増益です。
念のため申しますと、冊子を作って配れば、共有が進むかというと残念ながら、そうではありません。ですが、冊子もなく、明文化したものが無い状態では、間違いなく伝わりません。
伝わる前提が整わないからです。 伝わる前提とは、紙に明記されていることです。
もう一つ付け加えます。
冒頭でご紹介した経営者にもお伝えしました。
「あいまいな空気」から、明確に線引きされた、理念を元にした経営に切り替える時、経営者は痛みを味わいます。 どんな痛みかというと、人が辞める痛みです。
「あいまいさ」がなくなると、それまでは、許されていたことが許されない場面、状況に直面することになります。
「あいまいさ」に慣れてべっとりとした甘さになれていればなるほど、変化は先鋭化します。
この痛みを乗り越えるために、経営者の覚悟が必要なのです。
そこまでして、「あいまいさ」を廃して「理念」で束ねる必要があるのか?
結論から言うと、選択肢としては、どちらも選択が可能です。でも、少し見回してみてください。「あいまいな空気」経営から、理念経営に変えてよかったという話は山ほどありますが、その逆は聞いたことがありません。
さて、御社は「あいまない空気」に満たされていますか?
それとも、理念で束ねられていますか?
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