社長の夢を達成するには、目標を数字にする事。数字がない夢物語だと、コストだけ拡大していきます。
「会議で、みんなで決めましたよね。拡大路線で行くと。
社長だって同意したじゃないですか。だから工場用地を購入したんですよね。
それで借入が増えるのは当たり前じゃないですか。返済で、資金が出ていくのも仕方がないでしょう。」
専務には夢がありました。
給与も増やしたいし、息子も会社に入れたい。
そのためには売上だ、大手企業との取引金額を拡大したい。
大手企業の評価基準にあわせて、従業員人数を増やして、設備も刷新していこう。
ひたすら安定路線を行こうとする兄・社長とはことごとくぶつかります。
しかし、前年前々年と好況で利益が出たと、会議で報告がありました。
ここで一気に拡大路線に持って行きたい、自分主導で会社を動かしていこう。
地元の銀行も、熱心に土地の斡旋・借入の手続きを応援してくれました。
さあ、借入も土地取得も終えた。
そこで、ぱたりと受注が止まりました。
取引先大手企業の真意は、確かめていませんが、製品は輸出用です。
米国大統領選の後は、新規製品の動きが止まってしまいました。
取引先大手企業から引き抜いた営業担当者も、足繁く通って受注を目指しますが、大口の話は出てきません。
「新工場計画をどうするのだ?」と社長に問われた専務は、悔しさのあまり、
「社長だって同意したじゃないですか?」と反発して席を立ちました。
次第に左前になる会社には、共通する特徴があります。
「経営幹部間の不調和」と「数字の人任せ」です。
中小同族企業の家族は、親子兄弟夫婦、名目上は何であれ、皆幹部です。
その幹部が、直接二人だけで膝を詰めて話をすることがない、月に一度も一緒に食事をしない、としたら、それは不調和の始まりです。
話さなくても、よく分かる。
昨日も今日も問題ない。
なんていうほど経営環境は、甘くあり得ませんよね。
話合いをしないのは、自分の意見で押し通したいからです。
取引先の欲求をちゃんと見極めて、社員を引っ張っていくのが幹部なのに、幹部同士が、相手の問題を指摘することに躍起になっている。
幹部同士がいがみ合っていては、社員を一丸に引っ張るなんてできません。
さらに、自分のやり方は押し通したいけど、「数字は人任せ」が多いのです。
数字は、経理担当か会計事務所がやってくれ、税務署が入らないのがいい。
労働分配率など、難しいことは聞きたくもない。
数字と聞くと、財務会計の決算書を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、財務諸表も大事な数字ですが、大事なのはそれだけではありません。
経営者が、人任せにしてはいけない数字とは、「目標となる数字」です。
生産性を上げたい・利益率を改善したい・給与を上げたい・etc.
社長の夢、会社の目標を会社全体で共有するには、「数字」です。
数字は、夢を実現するための具体的な基準を会社全体で共有する言語です。
それを人任せというのは、実は社長は考えがない、夢なんて持っていないと、社員に公言しているようなモノ。
きっと、適当に社長と話をあわせておけば、給与が出る会社と思われてしまいます。
もし、同族経営者が、もっと売上を上げたい、儲かりたいと思っているのであれば、絶対に勝ち取らなければいけないのは、従業員からの信頼です。
きついことも言うけど、人柄は楽しい、夢がある。
この経営者について行けば、給与が上がる、かもしれないぞ!と期待感がある。
ともかく、社長と一緒に仕事をしていこう!と決める。
それが、従業員からの信頼です。
従業員は、夢みたいな話、大ぼら吹きは、信用できません。
売上が10億にするぞ!と社長が言い、従業員は感心した顔で聞いていたとしても、心の中では、具体的には何で?とその理由を探っているものです。
真実みが伝わるのは、納期やコスト、品質に対する具体的な数字が入る時。
「この部品は単価100円だけど、、、、」と従業員も知っている具体的な数字が出てきて初めて 本当かもしれないと話を聞いてもらえるのです。
人が話を信用するのは、自分の信頼する情報を相手も信頼する情報として話すから。
社長が話しているんだから、ちゃんと聞け!と言いたいところですが、信頼が無ければ、子供だって親の話を聞かない、生徒も先生の話を聞かない、社員も社長の話をいい加減に聞いているのです。
儲かるには、社員がやる気を出して社長の目標に向かって一丸となること。
社員がやる気をだす、には、成果の分配も大事です。
何より、社長が信用できる、ついて行くという信頼を得ることが大前提です。
新工場で売上の拡大は、大きな夢です。ですが、そこに具体的な数字が見えていなければ、それは「夢物語」、コストだけが出ていきます。
大きな設備投資案件は、経営判断が大変に難しいものです。
同族経営者が膝つき合わせて深く話をする、一丸になる、数字を共通言語にする。
社員が信頼して付いてくるのも、目標の数字が、共通言語になるからです。
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