市場調査するより、まずは売ってみなはれ!
「前回のコラム「新規事業でしくじらない絶対条件とは」を読んで、勇気づけられました。我が社も新規事業を立ち上げるのですが、私の構想している方向性は、まさに“自社の強みとなる技術”のシナジー効果が働いていると思います。でも、新規事業なので、慎重にすすめていきたいのです。何しろ試作、製造体制を整えるのに、数百万近くかかります。まずは市場調査をしたいので、ぜひ相談にのって頂きたいのですが…」
以前、当社のセミナーにご参加頂いた方から、ご相談メールが届きました。
とても光栄なことですが、伺う前にまずは藤冨持論にご賛同して頂けないとお互いに時間のムダで終わります。
なので、冒頭から「市場調査は不要です」とお伝えした上で、それでも尚話を進めて行かれたいか…を確認しました。
そもそも「新規事業が成功するか否か…の感触を得るのに、テストする」という出発点自体が間違っています。
調査は、あくまでも調査です。
調査からは、タテマエしか聞けません。
本当かどうか、やってみれば一目瞭然です。
「こんな商品があったら欲しいと思いますか?」と聞き、「YES」と回答した人に、商品が出来たら営業に行ってみてください。
「訳あって予算がなくなりました」
「魅力的な提案だけど、価格が見合わないかな。一桁違えば買えるけど…」
…様々な理由で断られることが驚くほど多いことに愕然とするはずです。
なぜでしょうか?
よくよく思いを張り巡らせれば当たり前のことに気づくはずです。
調査で「意見」を聞くのと、「購入の意思決定を迫る」のとでは、心理的圧迫感が大きく違います。
それが分かっているのに、あいまいで、何ら根拠ない答え(調査結果)を欲しがるのは、事業失敗の恐怖に押されていることに他ありません。
幻想に溺れるだけであり、極論すれば現実逃避をしているだけです。
サラリーマンが、失敗したときの理由づけとして調査をするのなら分かります。
しかし、経営者であれば、もっと潔い決断をした方が結果、良い風が吹いてきます。
ムダな調査費を使うくらいなら、その費用を販促費に回した方が無難ですし、商品開発に金をもっとつぎ込んだ方が、成功確度はあがります。
新規事業は、成否を占うよりも、成功するためには何かが必要かを考え抜き、必要な投資を惜しみなくすることです。
「いや、そうは言っても、この投資は失敗できないのですよ…」という方には、実際に先に営業を仕掛けてみてください! とお伝えしています。
拙著「営業を設計する技術」でも、そうお伝えしています。
欲しい否かを調査するのではなく、半年後に出来る商品を実際に売り込み、先行予約の受注を取りにいくのです。
こちらは、営業で「購入」を迫るわけですから、本気です。
断り文句も本気ですし、商談中に出る要望も本気です。
これこそが、ホンネのホンネを確実に掌握できる調査です。
いや…できてもいない商品を売りにいって、もし作れなかったらどうするんですか?
以前、そう言われた社長もいました。
受託・下請け的な業種の社長でしたが、そんな不安に駆られるようであれば、メーカーと生きる進路は諦めた方が無難です。
根性論に聞こえるかも知れませんが、覚悟なきところに、新規事業の息吹が芽生えるはずもありません。
- 新規事業の構想を提案書なり、サンプルなり、見える化をして、本気で売りに行く。
- 開発に着手していなくても、開発に着手する寸前まで構想を練り、出来るものだと確信して売りに行く。
すると、商談中から、真の課題が浮かび上がり、何をすれば成功できるのか…確かな手応えが必ず得られます。
BtoBであれば、想定見込客をリストアップして、2〜3日間集中的に営業すれば、可能性の高低はハッキリと見えてくるはずです。
BotCなら、商流を作る目的で、狙ったチャネルのバイヤーに接触するのもありです。
アイディアが盗まれやしないか…
そんな不安も抱くのも、問題外です。
もし、そう思うのなら、倍速で商品化のスピードを速め、いち早く上市をすれば良いだけです。
画期的な技術やアイディアであれば、特許や実用新案で参入障壁を作れることもできます。
いずれにせよ、営業し始めれば、新規事業のスピード感も出てくるし、成功確度もハッキリと見えてくる。
やらない手はありません。
御社では、新規事業を構想段階で営業しはじめる勇気と行動力を持ち合わせていますでしょうか?
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