第35話 社長の仕事は、階段を登ること。
「ソノダさん、人員不足のため、職場を超えた業務支援をお願いしているのですが、一部の社員が協力してくれないんです・・・・」
顧問先の人事担当役員の言葉です。さらに詳しく聞いてみると、頼みの現場の管理職も、社員に対して支援理由を丁寧に説明してくれない。それどころか、「実のところ、俺もよくわかってないんですよ・・・」と部下に放言している様子。管理職にもちゃんと説明して来たのに、正直、失望している・・・とのことでした。
さらに、当該役員としても、これまで現場の朝礼にも出席し、社員に直接声掛けしてきているのに、信頼している社員から理解を得られず当惑している。しかし、社員に辞められたら困るので、強く出られず、八方塞になっている、と意気消沈し、途方に暮れている様子です。
ここまで聞くと、課題が山積している現場のように感じられるのですが、実はそうではありません。私からは、「落ち込むことはありませんよ。いよいよ次の成長ステップに差し掛かったのです。」とお伝えしました。
というのも、この会社は、半年前、管理職のズサンなマネジメントに、人員不足が重なって、業務が混乱・停滞し、顧客に十分なサービスが提供できない状態に陥っていました。
その解決策として、管理職に丸投げのマネジメントを一旦経営者に戻し、就業規則の再整備と徹底、経営者による勤務表の出面確認や毎日の朝礼への出席、月次の管理職会議の議事・運営方法見直し等、働き方と情報共有に係るマネジメント変革を、段階的に進めて来たのです。
これらは全て、まずは、社員が公平感を持って安心して働ける職場を作り、業務の混乱・停滞を解消するためでした。これらが功を奏して、少しばかり余裕を持って業務が遂行できるようになって来たのです。
その状況を受けて、一部の社員が、ワガママを言い始めたというのが実態でしょう。水は低きに流れ、人は易きに流れるものです。
加えて、頼みの管理職は、まだまだ独り立ちできていないはずです。この時点で、過大な(勝手な)期待はできないのです。なぜなら、この半年は、経営者と管理職の間で、情報を正確に共有する癖をつけるだけで精一杯だったからです。管理職から社員に経営者の意図をわかりやすく伝えたり、社員の経営者に対する本音を吸い上げる方法(”コミュニケーションの場”の設定方法)については、何ら指導・教育を行っていないのですから。
つまり、現場のマネジメントが不在で、業務混乱・停滞が生じていた状況から、現場にマネジメントが戻り、業務が通常通り流れ始めた”成長の第1ステップ”に、半年かけて到達できたということなのです。
そして、これからも、管理職や社員が責任を持って業務を完遂する”成長の第2ステップ”、更に、経営者と同じ視点で自律的に業務を遂行する”成長の第3ステップ”へと、階段を、一歩一歩登っていくのです。
人事担当役員の閉塞感は、私の説明不足もあり、この階段を登るイメージが腹に落ちていないために、生じて来ているのかもしれません。
”社長・役員の仕事は、社員と共に階段を登って行くこと”ということを、私は改めてお話したいと思っています。
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