より多くの時間働く人は、勤勉です。努力している人です。より短時間でより成果がでる働き方を創る経営者は、会社も社会も豊にします。
「確かに、あの事件は問題だね、残業時間が長すぎだよね。
だけど、オレなんか朝から晩まで本当に働いているよ。零細企業経営者の悲しさ、年末年始休みの日にも一人で仕事をしていると、社員のやる気に期待しちゃうものね。昼飯だって、夜食だっておごっちゃうよ。」
「時短はしたいけど、必要な残業もあるよね。」と社長さんは話し出されました。
「いやー、今は人を使うのが大変だね、シフトを組んでいても、インフルエンザやノロウイルスだろう。思い通りにならなくて、、、」
昨年から、小さな子供がいる、高齢者を介護しているといった既婚の女性パート社員を採用し始めました。
女性パート社員を積極的に採用しようと考えたのは、正社員採用の失敗から。
人材採用業者に大枚払って採用した正社員が、4月1日たった一日の出社で辞めてしまったのです。
どうやら、もっと休めるハズだと思って転職してきた応募者は、会社の忙しい状況を知って、早々に辞退届けを出して、いなくなりました。
もう、こんなやる気のない若い男性社員はいやだ!
一生懸命働く主婦を採用しよう!
ありがたいことに、女性で事務職、時間も短いというと応募が多数です。
家庭の事情を十分考慮して、各人の仕事の時間は短くしても、ワークシェアをし合えば、お客様の要望に応えられる仕事ができるはずだと考えました。
パート女性陣は優秀です。
自分の決められた時間内で、手許にある資料を整理し、どこまで完了したいかを帰社する折りに正社員の上司に報告します。
仕事に必要だけど知らない分からない事項は、上司に確認、上司を飛び越えない。
上司の社員は、パート女性陣の質問を受けますが、それこそ分からないことばかり。
一件ごとに問い合わせをして、整理して、パソコンへの入力もします。
人の仕事はちょっと気にいらない、科目を直したり、細かな記載をいれたり。
となると、ドンドン自分の時間が足りなくなる。
夜は残業時間がこれ以上加算できないからと、専務が、肩たたきにやってきます。
「体を悪くするから、早く帰ってね。」と
じゃ、どこで自分の仕事をすればいいのか、仕方ない、休日出勤だ。
休日、事務所にでると、社長の姿がありました。
「お、どうした!」
「ええ、パートさんの書類をチェックしないといけないと思って」
「どうなんだ。パートの女性たちは優秀だろう?」
「ええ、できるのですけれど、最後の詰めの確認は時間がないからと言って、僕のところに仕事が回ってくるんですよ。時間が短い人は、仕事を放り投げなげますから。」
「えーっそうか、パートの女性たちから、もう少し仕事をしたいから時給上げてくれと言う話があるんだけれど、どう思う?」
「はい、結局お客さんと話ができる時間まで待っている必要がありますから、正社員が必要です。僕と同程度の能力がある人にして下さい。」
大手企業で起きた過労死問題や、アルバイトに対する残業指示問題が、マスコミで取り上げられています。
今より業務能力を高めたい。
それには残業して仕事の量を増やして能力をつける。
がむしゃらに働くことが、能力をつける方法だと信じられた時代がありました。
仕事の能力は、長時間会社にいることと正比例するものでしょうか?
社長さんは、パート社員採用時に、ほしい結果を定義していました。
- 各人の仕事の時間は短くしても、
- ワークシェアをし合えば、
- お客様の要望に応えられる仕事
書き直すと、「時短を実現し複数の知力能力を統合して製品を作る。」それが目標。
ところが、このほしい結果の具体的な成果目標制作期間(日数or時間)も、今までの平均的制作時間も明確にしないままでした。
責任者は何となく正社員の一人を任命にし、仕事の評価者は総責任者の社長自身がなるのは、全社員暗黙の了解。
結果、正社員は一緒に残業して責任もとれる人材採用を要求し、パート社員は自分たちの処理能力を評価されていないと不満を持ち、やる気を失っていきました。
社長さんは、上司とパート社員の仲が悪いからと考えていましたが、双方から話を聞いてみると、パート社員も上司も、「どうすればイイ仕事になるのか」「いい仕事にしたい」と、悩んでいました。
ただ、何がいい仕事かが、確信できないまま、自分の仕事が翌日までに直されていたり、消えていたり、別の人に担当替えされたりと、理由が分からないままであったので、互いに疑心暗鬼になってしまったのです。
ワークシェアに限らず、組織で効率よく仕事をこなそうとするのであれば、始めに、何を共有の価値とするのか、いつまで達成するのか、使える資源は何で、していけない事は何なのかが、共有されている事が何より大事です。
社長さんは、組織の報告命令系統として正社員を上司に据えただけで、その社員に仕事のリーダーをしてもらう意識がなかったと思い至りました。
「仕事のことは何でも僕に聞いてもらうのが、僕の仕事してる感だった。
忙しいから休日に自分の仕事するしかないんだけど、その休日に社員が会社に来て仕事してくれると愛しく思う、本音だ。休日出勤を社員に期待してしまう自分の愚かさに気付かされて、にが笑いだよ。」
政府が唱える「働き方改革」を、やらされる経営者になりたくはありません。
会社の戦略として、「この会社で長くやっていこう」と思われる自社の働き方を作る取り組みこそが、経営の進化です。
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