不良在庫が隠れているのも、郵便ポストが赤いのも全部社長の責任です。
「税理士先生から、試算表の利益率が毎月変動するのは、棚卸しをしないためだって言われました。私は制作販売商品の売価を計算するのに、去年の決算書の利益率と今の試算表の利益率どっちを使うべきか聞いただけなのに、、、。数字が違うからと言ったら怒り出しちゃって、棚卸しが不正確だからだ!と叱られました。」
商売の鉄則は、「売れる在庫」を「安く仕入れ(製造)」、「速く売る」です。
ところが、半分以上の事業体で、この全く逆の商売になっています。
「売れない在庫を放置して」、「仕入れた後に保管費かけて」、「倉庫の奥で滞留」
なぜ、在庫管理は大事にされないか?
それは、売上=金額と考えてしまって、そもそも商売は在庫を売り切る事にあるという鉄則を、自覚していないからです。
もう一つ、在庫管理に目が向けられないのは、在庫管理が面倒だからです。
在庫管理は、通常「商品別」仕入情報から単価・数量・月次の受け払いなどの情報で作成します。
電子部品を製作する或る工場で、商品数を数えたところ、10000部品。
実際の数量をカウントして、表にする作業は、煩雑です。根気がいるし、時間もかかります。人手で行うのは、大変手間のかかる仕事です。
ご相談の婦人服販売店の2階には、大きな生地の巻物がうずたかく積まれています。
一着分の生地を利用した後に、そのまま在庫になっている生地もあります。
段ボール箱には、ファスナーやボタン、バックなどにつかう部材など、たくさんの部品が山積みです。ざっと5000程でしょうか?
しかも、在庫の一つ一つに残数のメモが無いため、在庫数を調べようと思うと、そう考えるだけでも立ちくらみがしそうなボリュームです。
「不良といってもね、つい先日もあったのよ、以前のお客様から、この袖を直したいのだけど同じ生地ないのかな~って。言われれば、探すじゃないですか、2年前のモノだからありませんというのは悔しいのよ。」
在庫はまず「売れる商品」にするためのものです。
確かに、お客様からの要望で在庫が無くて販売ができないとなれば、売上の機会を失うことになるので、持っていなければならない在庫です。
「といっても、確かに、このままじゃ、不良在庫よね~、売り切ってなんぼだものね。えっ!税金上は不良在庫を焼却処分にしないとダメなの!仕入れて、売れてないから、税金を払うなんてバカなこと言わないでヨ」
そうです。税金払っています。
売上げていないから、手許のお金はなくなっているのに費用には計算されず、結果として利益を押し上げて、税金を増やしてしまうのです。
何より問題なのは、売れると思って仕入れた商品を、売れない物にしてしまっている経営体質です。売る視点で在庫を見ずに、不良にしているのは、社長の責任です。
さらに滞留させて不必要な税金まで支払うのは、やはり社長の責任です。
気をつけなければならないのは、「感情的にならないこと」
税金を払いたくないから、不良在庫と決めつけて、焼却するなんてダメです。
感情的になって、思いついたことをすぐに実行してはいけません。
「売れる商品にする」視点で、在庫を棚卸しするスケジュールを立てました。
本来、毎月末に全商品を棚卸しすべきでしょうが、主要材料から場所を区切って見ていくこととしました。
そもそもこの店舗の在庫が増えたのは、布地を販売しようと考えていたためです。
パッチワークや手作り品が流行した時代に、手作り品制作キットにすれば、店頭でもホームページでも販売できる。
日本国中に販売できる、そう考えたのです。
確かに日本国中から問い合わせはありますが、販売総数はせいぜい年に200個。
競合がいっぱいの市場でした。
ブームで出店した結果が出た、と判断すべきです。
「やっぱり捨てられない。商品する!」
今売れている商品に、この在庫を活用する方向を社長は決めました。
セール時の景品やアンケートに記入いただいた謝礼にする商品を段ボール箱の端布・部品からつくり始めました。タダだと、皆 手にして喜びます。
不思議と、会話時間が長くなり、もう一品お買い上げに繋がるお客様もいます。
Amazonの配送センター、在庫管理が話題を呼んでいます。
売れる商品を在庫して手早くお客様へお届けする。
商売の基本どおりの在庫管理を実践しています。
顧客第一主義をバックヤードで支える仕組みです。
売りきる商品として在庫を見直すと、金額で基準が出てきます。
仕入れてから売りきる期間2ヶ月と考えると、在庫の総額はこの金額と分かります。
自分の商売に必要な数字を決めておけば、経営判断が早まります。
顧客をハッキリさせる。
売り上げ目標を定める。
必要な在庫が分かる。
これら全て、経営者の決める事です。
だから、不良在庫が隠れているも全部社長の責任です。
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