営業のブラックボックスはどこまで可視化できるか?
「最近は“可視化”という言葉がよく使われますよね。ウチの営業も何やってるんだかよくわからない部分がたくさんあって…。どうすれば見える化できますかね。」
先日ご相談にいらっしゃった住宅メーカーの経営者様のお話しです。社内に5人いる営業マンの成績がまるでバラバラ。売れる人はどんどん売れるし、売れない人はサッパリ。きちんと社内で情報を共有し皆んながそこそこ売れるようにしなさい…と部長にハッパを掛けても一向に改善しなくて困っていらっしゃるそうです。
弊社では、営業の素人を戦力にする教育体制づくりなどもご指導させていただいていますので、この社長のおっしゃる“見える化”“標準化”したいという気持ちはとてもよくわかります。特に売れている社員のノウハウやツールを社内で共有できれば、他の社員の力にもなるし辞めた後にも残る社内資産になるのですから。見込み客の発掘からニーズ喚起、解決策の提案など、言葉では分かっていることでも、実際にいつどうやって行っているのかを共有できている会社はごく稀です。
例えば、会社や商品をアピールするパンフレットやプロポーザルも、使う目的・タイミングでその効果は大きく違ってきますし、せっかく見つけた見込み客にも、繰り返し接触できる仕組みを持っている社員と、いきなり勧めて売ろうとする社員とでは半年後、1年後の成果に大きな差が出てきてしまうものです。
会社としては、ある程度この営業戦略の「型」を決めていきたいところですが、全社でこれを統一させることは非常に難しいことです。我々営業の世界では、そのやり方によって“農耕型”“狩猟型”などと呼んでいますが、農耕型とは、種を蒔いて水や栄養をあげて成長するまでを根気強く待つスタイル、また狩猟型とは野山の獲物を求めて歩き回り、見つけたら即効アプローチする形…で、その営業スタイルには向き不向きもあり、当然好き嫌いもあります。
目先の実績を求められる営業マンの中には“何度も繰り返し”や、“コツコツ地道に”を苦手とする人も多く、長く継続させる仕組みを作り上げることはそう容易いことではありません。正し、全てにおいて農耕型、コツコツ型が相応しい訳ではなく、特に売れるタイミングを予測しにくい長期戦の商品には農耕型が、また、今月・来月の短期的な売上を伸ばすためには狩猟型の営業戦略が適しており、それぞれの特徴を理解してうまく使い分けて行かなければなりません。
一方で、どれだけシステマチックに長期的な作戦を立てたとしても、それだけで上手く行くほど営業の現場は生易しいものではありません。過去に上手くいった手法が通用しなかったり、また、同じ顧客でも営業マンが代わるとこれまで売れていたものがピタッと売れなくなったり、逆に担当者が代わった途端に急激に売れ出したり、業界全体が冷え込んでいると思っていたら実は落ち込んでいるのは自社だけだったり…全く予測不能な厳しい世界です。
ここで一つ大切な事は、目先の“営業スタイル”に縛られてはいけないということ。最近は、どの業界でも「モノを買ってもらえない」「モノが売れない」などと言われていますが決してそうではなく、従来型の“営業”という形だけでは顧客が満足しなくなっているという点が大きいのだと私は思っています。
例えば、対面販売や直接サービスばかりが顧客満足を上げる訳ではなく、仮にメールや電話であったとしても、素早い対応・丁寧な言葉づかい・気の利いたアイディアがそこにあれば顧客の満足度は上がりついつい買いたくなってしまうものですし、きっと、「またあの会社にお願いしよう」と思ってもらえるはずです。
時間を掛け、労力を使い、“直接販売”に歩くばかりが営業ではありません。今や、バーチャルの世界でも顧客に満足を与えビジネスになる時代です。顧客が何を求め、どういう価値を提供すれば満足していただけるのか?それを考える事こそがこれからの時代に求められていることだと思っています。
経営者の皆さま。営業とはこうあるべきだと思い込んでいませんか?視線の先の顧客は喜んでくれていますか?営業の仕事とは、相手が求める価値と期待を上回る満足を提供することなんですよ。
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