社員の「質」は、社長のたてる戦略が決定している。
「私が決めた戦略で、客層が決まり、競合も、サプライヤーも、定着する社員までもが決まるのですね。社員の成長を研修に期待して、会社を変えられないか…と願っていました。でも、それは大きな勘違いでした。環境は私が変える!という意思が会社の文化と成長基盤を作るのですよね」
以前、クライアント企業さんがセミナーを受講したあとに述べられた感想です。
まさに真意を得たり…と嬉しくなりました。
富裕層を対象にしたレストランを経営しようと思えば、それに相応しい社員が集まってきます。そうでない社員は居づらくなります。取引先(サプライヤー)も当然変ってきますから、入ってくる情報の質も変っていきます。
競り合う競合も変りますから、ウォッチする視点も調査も変るので、経営陣や社員の行動パターンも変っていきます。
そう、対象市場を決定すると、企業の内部環境までもが必然的に変ってしまうのです。
経営者の戦略的意思決定が、自社の企業体質を決定している。
これが揺るぎない現実だと理解できるのではないでしょうか。
社員が変れば、会社が変る?
処遇を変えれば、会社が変る?
確かに一理はあるかも知れませんが、それは本質論ではありません。
会社の戦略を実行するために、成功する条件を整えたり、努力した人を正当に評価する制度は必要です。
タスクをこなすスキルを身につける訓練であったり、人事考課制度を入れることは、大切なことです。
しかし、それは目的を遂行するための手段であるはずです。
手段が目的化した取り組みは、結果的に「ヌカに釘を打つ努力」に終わりかねません。
経営の目的を達成するためには、どのような商品を、誰に売って、どのような市場ポジションを確立するのか…の上位意思決定が“ありき“なのです。
これが、すべての企業環境に影響を及ぼしてしまう「極めて重要な戦略的意思決定」になるからです。
ウチの会社にはモノを考える社員が少ない…とおっしゃっていた社長は、受託生産型の下請け的な会社経営をしていました。
言われたことをそのまま実行することが求められる会社では、モノを考える文化は育まれにくいのは、ある種自然なことです。
会社の戦略的決定が、社員の質を決めていたのです。
同社は、自社商品を作り、独自の販売努力で、売上を立てる努力を奮闘し、成果が出つつあります。そうしたなか、社員が少しずつ考えて行動するようになってきた…と、社長は感慨深く話をしてくれました。
これは、とても自然なことです。
「主君と奴隷」の関係から、「売り手と買い手」の関係になったためです。
売り手は、買い手がいないと、飯が喰えません。
飯を食う為には、買い手が満足する要素を考え出し、実行していく必要があります。
考えさせるのではなく、考えざるを得ない環境が、社員を育てるのです。
繰り返しますが、会社として「どのような商品を、誰に売って、どのような市場ポジションを確立するのか」という戦略的意思決定が、会社の体質を決定します。
社内の空気は、すべて会社の戦略が強く影響しているのです。
「ウチの社員は、自主性が足りない」
「ウチの社員は、行動力がない」
と思われたら、まずは環境がそうさせていないか…。
じっくりと内省する必要があるのではないでしょうか。
御社での戦略的意思決定は、社内文化や会社の体質にどのような影響を及ぼしていますか?
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