長期的な目線と近視眼的な視点
「私は今年で社長になって10年、これまで、親父の代のやり方をずっと続けてきましたが、もうそろそろ真面目に向き合わないといけないと思いまして…」
先日ご相談にいらっしゃった50代の社長様のお言葉です。業界自体が全般的に縮小方向にあり、営業マンの努力や目先の手法を変えるくらいではもうごまかせないほどになってしまったのだとか。
このようなご相談はこの社長様に限らず様々な業種の経営者からいただきます。「そろそろ何か他の事業を考えた方が良いでしょうか?」という類いのご相談です。最近は、自社の強みや既存の顧客を活かした新商品・新サービスの開発だけでなく、他業界とのコラボが流行り目らしく、「どこか良いマッチング先をご存知ではありませんか?」というご相談も増えてきました。
確かに、これまでの固定概念に囚われ、現状維持やその延長線上でしか物事を見ないようでは時代に取り残されてしまいますし、新たなアイディアも生まれません。社内で新しい意見を募ってもいつも同じようなものしか出てこない…という声もよくお聞きしますので、誰か新鮮な人の意見を聞いてみたいということなのでしょう。
しかし、最近面白い事を発見しました。この「ご相談」の時に、熱心に色々と聞いて帰られた経営者ほど、その後何もしていない…ということです。何もしていない、というのは語弊があるかもしれませんが、それに等しい状態であるということです。「色々なご意見を頂きましてありがとうございました」というパターンです。
一方、ピンポイントで「今度、この新しいサービスを始めようと思いますが、ここの部分について相談を…」という経営者はどうでしょう?…そう!お察しの通り何かしらの行動を起こしていらっしゃいます。良くも悪くも、です。では一体、前者と後者の違いはどこにあるのかと言えば、
「ご相談にいらっしゃる前に、“何かしら実行しよう”と決めて来ているか、そうでないか」
ただそれだけです。いやいや、色々と相談して意見を聞いてから行動を起こそうと思っていました、という声が聞こえてきそうですが、本当のところはかなりあやしいモノだと思っています。
何故なら、“新しいことに挑戦する、新しいサービスを始める、これまでとやり方を変える”など…経営者が何か大きな舵取りを判断する時には必ず痛みが伴うからです。
現場の手が止まる・効率が悪くなる・クレームや問題が発生するなど、予想される困難は思いのほか多く、上らなければならない壁は想像以上に高いからです。売上が減り、いや、もしかするとゼロかマイナスになってしまうリスクが高く、それを乗り越えた先のメリットよりも目先の痛みの方が圧倒的な脅威だからです。
特に、現在の営業体制から抜け出し、売り方・魅せ方・取り込み方をガラリと変え、社内の体質改善、高利益体質への大改革に取り組もうという時には、自分自身の意識の切り替えはもちろん、社内の抵抗や現場の一時的な停滞など乗り越えなければならないハードルが多く、相当の決心を固めなければなりません。
しかし、この先の5年・10年を考えた時、きっと心のどこかで“今やらなければいつやるの?”…というもう一人の自分の声が聞こえてくるはずです。
経営者の皆さま。会社の方向転換、先送りになってしまっていませんか?短期的な痛みから目を逸らしていませんか?目先の労力を惜しんでいては一歩も前に進むことができませんよ。“やる”と決めないことには何も始まらないのですから。
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