売れるものを売れる場所で売ってはいけない理由
「20年前に今の事業を始めて、一時期ピークの頃にはかなりの売上を上げたんですけどね…。ここ数年激減してしまいました。」
先日の相談会にご参加いただいた女性経営者様のお話しです。最初は会社員として働きながら片手間で商売を始められたそうですが、売上も順調に伸びて軌道に乗ったな~というタイミングで脱サラをして本格的に社長業に専念されたそうです。
初めは、サラリーマン時代の経験を活かし、ご自身の得意な健康食品などを中心に販売されていたそうですが、その後、その営業力を買われて様々な商品の販売代理店業を行ってきたそうです。しかし、どの業界も競争が激しく、同じ商品なら「早く・安く・豊富な種類の中から買える」ところが選ばれようになり、また同じ時期に複数いた営業社員が退職したために、一気に営業力を失い失速してしまった…というお話しでした。
20年前と言えば、私の周りにも女性経営者が多くいた記憶があります。化粧品や健康食品、高級下着やアクセサリーショップなど、自宅に居ながら手軽に商売ができるとあって、安易にビジネスを始める女性が多かったのかもしれません。
今と違って、ネット通販などほとんど無い時代なので、人脈の広さと対面営業力の強さがイコール売上につながった時代だったのかもしれません。中には、冠婚葬祭やイベント会社などと上手く組むことで事業を大きく成長させた人もいましたが、そのほとんどが自然消滅していったように思います。
女性が多く集まる場所で、女性の好みそうなものを販売する。
健康に不安のある人が居る場所で、身体に良さそうなものを販売する。
若者が多い場所で、若者向けのものを販売する。
これらは当然、“商売の基本”だと思われがちですが、実は私はこういった考え方には真っ向から反対です。「はっ?まずはモノを売っていくためにはターゲットがいる場所を責めるのは当然でしょう!」という声もあると思いますが…。もちろん目先の売上が欲しい時には即効性のある手法ですが、基本的に、既にニーズがあるところへ相手が欲しがりそうなものを持っていくやり方は、常にお客様や他社サービスの後追いになってしまい、こちらがお願いする形の営業スタイルに陥りやすいのです。
顕在的なニーズがある場所を知っているのは自社だけでなく、そこには多くの競争相手がいるからです。20年前なら良かったかもしれませんが、現在はもっと早いスピードで、もっと質の高い物が提供される時代になり、「良いモノ選びたい放題!」…主導権はお客様が持っているのです。
これは、私が保険営業マンだった頃にいつも感じていたことでもあります。病気やケガのリスクを抱えているだろう人や、決算対策・事業リスクなどその必要性が明確な企業など、こちらから見て確実にターゲットだと思う相手にはいつも競合が複数いて、しかも商品や値段をめちゃめちゃ比較されたものでした。これらは主導権を完全にお客様が握り、常に相手のジャッジに振り回される結果を招くのです。
商品ありき、ニーズありきで営業をしてきた企業にとってはこれが当たり前なのかもしれませんが、これからの時代、本当の意味で強気の営業をしていくためには、“顧客のニーズはこちらが掘り起こす”、“新たな市場は自社が創り出す”、そういった意識の切り替えが重要になります。新しいサービス・新しい付加価値を生み出していかなければ、他社との競争に勝ち抜き、生き残っていくことが難しいからです。
経営者の皆さま。御社が販売しているものは何ですか?これまで無かったサービスを生み出す努力をしていますか?単なるモノ売りになっていませんか?今や巷にはモノが溢れ、本屋で本が売れない時代になりました。御社独自のサービスや付加価値を追求してみませんか?
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