資金繰り悪化は、社長の集中力を破壊する。
「今回は、本当に助かりました。資金繰りが、こんなにも自分の頭を占めるなんて、思っていなかったのです。資金を短期的にまわすばかりに気がいってしまって、他の事を考えられない。自分が集中力をなくしていると分かりました。計画を立てようにも、事業が順調に回っていく状態のイメージが、浮かんでこなくなって、そうなると、数字は全く浮かんでこなくなるのですね。」
数ヶ月前、新規事業計画をたてたいと相談にこられた若い社長さんの開口一番は、怒り心頭とばかりに、弟さんに対する不満話です。
A兄さんとB弟さんは、兄弟でイベント事業を起業し、事業展開してきました。
B弟さんは、広告代理店にパイプがありプランをたて、人を動かす分野。
A兄さんは、HP制作セミナーを開催し、人材発掘しながら、企画・チラシ・HPを担当しています。
さて、そのB弟さんが、自分の分野で独立する、とある日宣言しました。
B弟さんの不満は、売上を見れば、一目瞭然。
売上の75%が、B弟さんが主催で開催したイベントの売上です。
企画・チラシ・HPの制作もこのイベントに関連したものが多く、B弟さんは、全部オレの売上だろう!と主張しました。
A兄さんは、事務所を整え、HP制作を教えるセミナーを開催してきました。
料金を取り、教えながら、優秀で、短時間のパートタイマーを育成してきました。
イベントを、安く宣伝広告できてきているのは、この仕組みの“おかげ”です。
しかも、営業で信用を得られるよう、A兄さんは株式会社を設立しました。
事務従業員も雇い、社会保険・雇用保険と、会社の義務はきっちり果たしています。
とにかく忙しそうだったB弟さんを助けようと、A兄さんは、面倒な事務方を全部引き受けて代表取締役を拝命しました。
ですが、売り上げの仕組みは、結果的にB弟さんにおんぶしていた訳です。
今まで経営してきたのだから、明日からも同じだ、A兄さんは、働きます。
月末には、給与の支払いがやってきます、家賃の支払いも必要です。
ともかく、自分のHP制作部門で売上を上げて、事業を軌道に乗せよう。
目の前の資金を稼がなければと焦り、夜遅くまで、制作に没頭する毎日です。
イベント事業は、預かり資金があり、途中の資金が一部担保されていました。
しかし、HPやチラシの制作は、完了して納品した後、翌々月の入金になります。
この間の資金繰りが必要になります。
制作をしていても、頭の中は今月末の支払いが気になります。
営業の方針を決めようにも、どこから考えていけばいいのか、詰まっていきました。
今までと同じやり方ではダメだ、と分かるのですが、身動きが取れないのです。
経営の緊急時には、資金が必要です。
「頭の中が、借入でいっぱいだ。」という弁護士事務所TVCMが放映されています。
頭の中で、借金のパーツがドンドン大きくなって、他の問題が小さくしぼみます。
経営者に取って、お金がない事は、「つぶれたらどうしよう!!」という恐怖です。
恐怖から、社長の頭を解放する。そのための優先順位第一位は、借入です。
決算書類を三期並べて、事業の概要をまとめていきます。
ありがたい事に、日本の金融機関は未来よりも過去が好き、決算書は過去の宝庫。
直前までイベント事業が大きな売上を上げていました。
A兄さんは、その会社の代表取締役です。
事業の流れも、資金の流れも、内容も、しっかり説明できます。
ただ、B弟さんに「任せている」と広言してしまい、自分でも思い込みました。
自分が会社の責任者なのに、作業を任せた別な人に、責任まで任せていたのです。
金融機関には、自分の事業として今までの事業を説明してください、代表取締役としての責任ですよ、と尻を叩いて借入を実行していただきました。
A兄さんは、金融機関に出向き、事業の説明をしました。
イベント事業の説明しながら、ふと気づきました。
「な~んだ、今 自分がはなしているとおりに事業を進めればよかったのだ、スケジュールも、見込客の設定も、提案も、自分が理解できていたから、パートタイマー人材で、十分な広告ができていたのだ。」
次第次第に、自分の事業が、腑に落ちてきました。
「今度行うイベントのチラシです。ひとつひとつ、やっていけばいいんですよね。地域の大手企業の協賛もあって、進んでいます。区役所にもつながりができて、顔見知りが増えています。別な課からも声をかけられます。」
「今回は、ボランティアを募っての運営です。素人ですから、好き勝手にいいたい事をいいます。ボクは、ぼこぼこにされてますけどね」と笑顔の報告です。
経営には、ヒト・モノ・カネ・情報、が大切だといわれます。
一番大事なのは、経営者の情熱です。
この情熱を、言葉にして、伝播させていく、それこそが事業の拡大です。
経営者が情熱を失う事は、事業そのものが無くなっていく事につながります。
お金は、経営者の情熱に火をつけます。
お金は、従業員の生活安定を支えます。
会社にお金があって、お客様には商品・サービスを提供し続けることができます。
だから、経営者にとってお金は、とても大事です。
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