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第30話:9割の営業マンが営業の定義を知らない事実

9割の営業マンが営業の定義を知らない事実

「今まで意識することなく営業してましたが、営業ってそういうことなんですね!」とおっしゃったのは顧問先企業の営業マネジャーN氏。とても優秀な方なのですが、無意識にできてしまっているからこそ、部下を指導しようとする時、言葉では上手く説明できないということが…

顧問先様などで「営業は何をすることですか?」と「営業の定義」を訊ねると、営業経験の長い方でも答えられない場合がほとんどです。なぜ、今さら「営業の定義」にこだわるかというと、しっかりとした定義(その言葉の持つ意味)を知らなければ、「営業」という行動そのものが曖昧になり、思うような成果につながらないからです。「言葉が曖昧であれば曖昧な行動になり、曖昧な行動からは曖昧な結果しか生まない」ということになってしまうのです。

言葉の定義がいかに重要か…私が良くセミナーなどで中小企業の経営者の方にお伝えする言葉のひとつに「値下げは弱気な経営。値引きは強気な経営。」という言葉があります。この「値下げ」と「値引き」を同じ意味に捉えている方が少なくありませんが、その意味・定義は180度異なります。

「値下げ」は選ばれる前に価格を下げること。「あの会社が値下げしたからうちも1割引だ!」とやるのが「値下げ」です。これに対して「値引き」は選ばれてから価格を下げること。お客様から「どうしてもこの商品・サービスが欲しいけど、予算が厳しいので1割引いてもらえないか?」「いいですよ!」とやるのが「値引き」です。

選ばれてから価格を下げる「値引き」ならまだしも、選ばれる前に価格を下げてしまう「値下げ」は、まるで「うちのは安いんだから商品・サービスに何か瑕疵があっても文句ないでしょ?」と言わんばかりの売り方です。経営者が自社の商品・サービスに自信がないのに、社員に自信を持って「売って来い!」と言えますか?ということです。このように言葉の定義をしっかり知ることで、その言葉の持つ意味や行動までが明確になるのです。

では、ここで再度質問です。「営業とは何をすること」でしょうか?営業とは「商品・サービスの特性を紹介し、お客様のニーズを満たし上で、高い価値を提供すること」です。もちろん、営業活動の先に「売る」という行為はありますが、営業という活動自体が「売る」ことでもなければ、営業の定義でもないのです。

下記のケースで、それぞれどの文章が「特性・ニーズ・価値」に該当する か、わかりますか?(スーパーの店員さんと営業マンというケースです)

店員:賞味期限が短くて困る。

営業:この商品は真空パック加工がしてある。

営業:賞味期限切れによる廃棄が少なくなる。

正解は上から順に、「ニーズ・特性・価値」です。つまり、「顧客にはニーズがあるので、商品・サービスの特性を価値に言い換えて紹介する」ということです。このように「営業」の定義・言葉の持つ意味・行動を理解している営業マンと理解していない営業マン、どちらの営業活動・営業成績が期待したものになるか、言うまでもないでしょう。

さらに「営業の定義」を理解した上で、トップセールス・売れる営業と言われる営業マンが共通して実践している営業活動4つのプロセスがあります。1)アプローチ、2)ヒアリング、3)プレゼンテーション、4)クロージングです。これら4つに関しても奥深く、顧問先などで研修をするとほとんどの営業マンが誤った認識を持っているのです。

例えば、営業活動の最後、4)クロージングは「売ることではなく、約束を取り付ける行為」と捉えるということです。車の販売で言えば、「いつまでに車庫証明をご用意頂き、いくらご入金ください(買う側)。こちらは、いつまでに納車できるように◯と△を準備します(売る側)。」という具合です。営業における一連のプロセスのひとつであり、ごく当たり前のことです。

営業におけるごく当たり前のこと… 安くない給与を払っている貴社の営業マンは当たり前のことを当たり前のようにできているでしょうか。プロの野球選手やサッカー選手はプロとしてお金をもらっている以上、寝る間を惜しんでそのスポーツに全力投球しています。オリンピック選手を見てもそれは同じで、練習せずして金メダルなどということはあり得ません。

貴社の営業マンがお金をもらって仕事をしている「プロの営業」であれば、寝る間を惜しんでとは言わないまでも、スポーツ選手の練習に変わる研修やロープレ(ロールプレイング)を定期的に実践していても不思議ではないどころか、当たり前であるはずです。にも関わらず、定期的にそのような場(研修・ロープレ)を設けている中小企業はほとんど見受けられません。

「普段から不断の練習」を積み重ねているか否かが企業の営業力・組織力になるのです。その環境をつくれるのは、社内に何十人・何百人いようと、たった1人の経営者以外に存在しません。経営者が「普段から不断の練習」を積み重ねることができる環境を与えることができるか、つくることができるか、その「仕組みづくり」で将来の明暗が分かれます。それをいつやるのか?来年、再来年… そうこうしている内に競合他社が先を行くのは目に見えてます。

ビジネスはスピードが命。事業を成長させている経営者に共通するのは決断が早いこと、先送りにしないこと。企業の生命線となる営業のテコ入れに待ったはありません。