第29話:情報が戦略を左右し、戦略が売上の差となる!
「しっかりした戦略がないと今以上の売上を上げることができない、会社の目的を達成することができないという意味が良くわかりました。」とおっしゃったのは顧問先企業のA社長。弊社のセミナーを受講された後、ご多忙の中でわざわざ九州から土曜日に個別相談にお越しになられましたのが数ヶ月前。
市場縮小で競合他社との競争が激化する中、これ以上の売上アップを望むのであれば「営業・販売の仕組み化」を導入するしかないという社長のご決断から「営業戦略・営業戦術」の構築を支援させて頂くことに…
「戦略」をわかりやすく言えば、会社の目的を達成するためのシナリオと最適資源配分です。登山で言えば、どのようなルートで登り、どこで休憩しよう、そこからは一気に登り切る!というような具合です。そして、団体で山に登るような場合、その団体の一員は異なるルートを行ったり、勝手に休憩するということは許されません。企業に例えると、社員はトップの決定と異なる商品を売ったり、自社テリトリーと異なる地域などで営業することはできないわけです。
これに対して「戦術」は、現場力であり個人の力量です。剣道で言えば、「剣術」では「突き」という技がありますが、これは個人の力量で「鋭い突き」にもなれば、「鈍い突き」にもなります。「突き」自体は「戦術」であり、面・小手・胴という叩き技の後にいきなり「突き」を出す、というのが戦略になるわけです。
多くの企業では営業マンの力量を上げるための「戦術」を研修などで学ぶということはしますが、経営トップ及び幹部が「戦略」を学ぶ、しっかり構築するということは、残念ながらさほどされていません。そうなると当然ながら、目的が達成されるはずはないのですが、多くの中小企業において「売上が上がらない」「売上を上げたい」というのが現状です。これでは上がる売上も上がりません。
法人営業において組織を動かしているトップの多くが判断を誤り、成果の出ない間違った戦略を取っています。営業の現場で数字を上げるために、対面交渉力などの営業マンの力量で決まる「戦術」も必要ですが、それ以上に現場ではどうにもできない目的達成のためのシナリオづくりと最適な資源配分、その「戦略」が不可欠です。誤解を恐れずに申し上げれば、「営業力」の差は個人の能力差ではなく、組織のトップ・幹部がしっかりと営業戦略を立て、実行し、売上をつくっていく力なのです。
例えば、貴社がルートセールスで何社かの取引先に珈琲を販売していたとしましょう。得意先を調べてみるとA社とB社が同額の100万円で貴社における上得意先であることがわかりました。もし、あなたが営業を指揮する立場なら、どちらのお客様に注力するように指示を出しますか?
当然、この情報だけでは判断できません。そこで、一歩踏み込んで調べてみると、A社は月1,000万円分の珈琲を仕入れており、B社は月300万円分の珈琲を仕入れていることがわかりました。貴社にとっては100万円という同額の売上高ですが、得意先から見た貴社における客内シェアはA社が10%、B社が約33%です。ひとつの情報を取れるか否かで物事の見方が変わり、「戦略」が大きく左右されるのです。
さて、ここでもう一度先程の質問です。営業の現場を指揮する立場として、あなたならA社とB社、どちらに注力するように指示を出しますか?顧問先や講演会・セミナー・研修などで幾度となく同じ質問をさせて頂いた私の経験から言えば、8割以上の経営者・営業マネジャーの方が「A社に注力する!」と回答されます。
その理由を伺ってみると、「月額1,000万円仕入れているA社の方が伸びシロがある」と回答される方が大半です。しかし、営業戦略の鉄則としてはA社でなく、B社に注力しなければなりません。繰り返しになりますが、「A社に注力した方がいい」ではなく、「B社に注力しなければならない!」のです。
さて、あなたが経営トップ・営業を指揮するマネジャーだったらどう判断したでしょうか?現場を指揮する組織のトップと言えど判断を誤り、成果の出ない間違った戦略を取っている例が少なくありません。営業の現場が頑張ってもどうにもできない領域、それが目的達成のためのシナリオづくりと最適資源配分、つまり「戦略」です。
中小企業から大企業まで多くの実績を残してきた本当の戦略を学び、しっかりとした営業戦略を立て、正しく実行していくことで売上2倍は達成できます。戦略なき企業は淘汰されます。貴社には競合他社に勝つための戦略がありますか?