事業を発展させるための採用基準、、、「優秀な人材を求めない」?
「矢田先生、新卒2名採用できました。経営者仲間からは、今年はなかなか採用できない、と聞いていましたが、そんなことはありませんでした。」
年商(総粗利)4億の不動産業社長の言葉。
予想以上の退職者が出て、急遽8月の地元の商工会議所のフェアに参加、男性1名、女性1名を獲得、かかったコストは2万円と。
そして、社長「優秀な人材を求めなければいいんですよ」
仕組みをつくる目的は、一部の優秀な社員しか出来ない業務を、より多くの社員が出来る様にするところにあります。
大きく儲けるためには、大きく展開、すなわちそのサービス(業務)を量産することになります、並の人でもその業務を同じように出来る様にすることは避けては通れません。
人材レベルを10段階で見た時に、上位のレベル10、9、8の能力を持った優秀な人材しか出来ない業務も一つひとつその業務を仕組化することにより、その業務の難易度を下げ、レベル7、6、5、と並の人材でもできるようになってきます。
この自社で活用できる人材レベルを下げること、自社の人材要件を拡げること、これが仕組化です。
その仕組みづくりの内容は、大きくは以下のものになります。
- ビジネスモデル:社員ができ、大きく展開できる事業モデルを構築します。
- メニューを減らします。
- 分業を進めます。
- 提案書、契約書、ヒアリングシート、チェックシートという武器を持たせます。
- マニュアルを整備し、訓練体系をつくります。
- 機械やコンピューターシステムを導入します。
仕組みを一つ入れれば、自社が活用できる人材のレベルが一つ下がるというイメージを持ちます。より多くの人、より能力の低い人が同じようにその業務を出来る様に、一つひとつ仕組みを作っていきます。
そして、レベル3ぐらいの人だけでも、問題なく通常業務を回せ、狙ったサービスを顧客に提供でき、稼げるという状態になった時、その事業は大きく展開するための準備が出来たと言えます。
その業務が求める要件が広ければ広いほど、人的資源の調達は容易になり、よりスピードを持って、より安いコストで大きな展開が可能になります。雇用体系の理想は、パート、派遣、高齢者です。
新しい店舗を出せば、人材要件が低いので、採用も容易にできます。また、すぐにその人は業務に付くことができるため、短期間で店舗としてオープンすることができます。 また、欠員が出ても、すぐに補充が効きます。
支店を新設しても、仕組みがあるので、現地採用した社員でも、すぐに営業に出ることが出来ます、内部はパート事務や派遣で回すことができます。
また、そのノウハウや情報は仕組みにより会社に残り、「永続性」を確保することができます。我々は、日々この状態に近づけるために、仕組化を進めているのです。
仕組みができていない会社では、これとは逆の状態になります。
優秀な人材しかできない業務があり、その人材の退職リスクが高い。ローテーションもできない、休むことも出来ない。採用しても、自分の給与分稼ぐまでに時間がかかり過ぎる、そして、補佐業務しかやらせられない。
そして、この行き着くところは「優秀な人材がほしい」という発想です。
この「優秀な人材が欲しい」という発想は、仕組化とはまったくそぐわないどころか、真逆を向いた考え方です。もし、その事業が優秀な人材でしか回せない事業であれば、それは事業ではない、間違った事業だと考える必要があります。(職人型の事業を望むのであれば問題ない)
この発想を捨てなければいけません、正さなければいけません。
あるスタッフが、業務でミスをしたとしたら、仕組みの考えを持っていない社長は、「このスタッフはまだまだだ、もっと教育が必要だ・・・」と考えます。
仕組みの考えを持った社長は、「こういうところでミスが起きるのだ。マニュアルを見直すか・・・」と考えます。
向かう先が違うのです、
前者は、「人の能力をより高める」ことに向かい、
後者は、「業務の難易度をより下げる」ことに向かいます。
そして、採用の基準も変わります。
仕組みが出来ていないと、採用の基準は「優秀な人」となります。
仕組みが出来ると、採用の基準は「問題を起こさない人」となります。
選考のための面接や書類審査、適性検査など、それらの観方も全く異なります。問題を起こさないレベルの人であれば、当社では仕組みがあるので、ある程度は必ず成果を出せるのです。
冒頭の不動産業社長の会社では、仕組化が進み、並の人でも成果が出せる様になっています。
新卒者が入社1か月で不動産を売ってきます。パートタイマーの女性が、賃貸アパートの内覧から契約までを完結します。
社長は言われます
「3年前までは、新卒採用の基準は、「優秀な人材」でした。その頃は、会社総出で会社説明会から面接など、いろいろやってきました。今では、採用基準を下げたのでそんなに力を入れることもありません、それでも、問題なく回っています。」
5年で倍のペースで成長しています。
そして、「その3年前に採用した優秀な人材は、すでに退職をしてもう居ません。あまり期待していなかった彼が、いま安定した売上げを毎月出しています。採用の時に誰が優秀かはある程度解るかもしれませんが、誰が自社に貢献するかまでは解りません。」と。
まとめておきましょう。
並の人を使って成果を出すための仕組みを作るのが、我々経営者の役目。
その事業は、それにより大きく展開が可能となり、より多くの人に素晴らしいサービスを提供し喜ばれる。そして、その事業の中で、その並の人は、日常業務をしっかりこなすことで、安定した生活を得るとともに人格を高めていく。そして、その人の中から頭角を出した人材を、一緒により仕組みを発展させるために、管理職者として登用する。
年商数億社長は、「優秀な人材」を求める、
年商10億社長は、「問題を起こす人」を弾く。
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