ルールは人の心理面からも検証する
セキュリティ強化で情報漏えいを防ぐために、パソコンなどのパスワードは定期的に変更することが推奨されています。私もインターネットバンクにアクセスするたびに、「パスワードを変更して下さい」というメッセージが出ます。
けれども、米国の調査によると、「パスワードの頻繁な変更はかえって逆効果だ」
という結果が出ています。「3ヵ月おきに変更を義務づけた学生らのパスワードを調べたところ、以前のパスワードの数字・文字を入れ替えただけのものが多かった」そうです(2016年3月9日付日経新聞夕刊より)。
理屈としては、同じパスワードを使い続けるより、定期的にパスワードを変更した方が良いというのは誰もが納得いきます。一方で、実際にパスワードを変更する人の立場に立ってみると、「いちいちまったく違うパスワードを考えるのは面倒くさい」という心理が働きます。これは、ご自身でも心当たりはあるのではないしょうか。
その結果、複数のパスワードをローテーションで使うとか、先の調査のように以前のパスワードから簡単に類推されるものを使うといった行為に走ります。すると、パスワードを定期的に変更するという行動の本来の目的であった、セキュリティを強化して、情報漏えいを防ぐが達成されません。
このように、目的は正しいし、その目的を達成するために正しい行動であるとしても、機械ではなく生身の人間がその行動を行う以上、行動心理や感情の部分にまで踏み込んでいかないと、正しく行動していても、本来の目的が達成できません。
仏作って魂入れずではありませんが、人の情が分からないと、せっかく決めたルールもかえって手間ひまばかりかかる割には、まったく効果がないものになります。
ルールを守るのも、破るのも人間。人は理屈だけでは動かず、感情で動きます。正しい目的をハッキリさせた後は、ルールを細かく定める前に、人の特性をしっかり踏まえて検証しましょう。
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