付加価値の“価値”を考える
日本で一番人気のテーマパークと言えば、皆さまご存知のあの場所。
「もはやサービスの域を超えた感動接客」とか、「魔法にかかったような伝説のエピソード」など、多くの人々を感動させるスタッフの“神対応”で有名です。実際に体験した友人によると、買ったばかりのポップコーンをうっかり落としてしまった時、「魔法でもとに戻しますね」と言いながら、新しいものを入れてくれたことがあったのだとか。私もこれまで何度となく訪れましたが、常に新鮮な感動に包まれ私達を飽きさせない工夫が最大限なされているように感じます。
そしてあそこはとにかく不思議な国。普段は恥ずかしくて絶対にかぶれないような大きな帽子を平気で身につけることができたり、日頃は絶対に買わないようなものをビックリするような値段で買ったりが普通にできてしまう、正に非日常を演出し“価値を創造する”プロフェッショナルですね。コンビニで買えば100円ほどのポップコーンが数千円でも行列ができる付加価値戦略は、価格競争に苦しむ企業にとってぜひともマネしたいところです。
しかし、この付加価値という言葉。少々勘違いが起きやすく、「要は、何でもかんでもやたらとサービスを加えれば良いんじゃないか」と思う人も少なくありません。他社には無いサービスをお付けします、今ご契約の方にはこちらをプレゼントします、よりご安心な機能を追加いたしました…など。しかし、付加価値とはあくまでも価値を提供しなければなりません。お客様から“価値がある”と感じてもらえなければ何の意味も無いどころか、余計なお世話になってしまうことも。
そして、お客様に提供するこの新商品やサービスなどを考える時、つい自分達目線で考えてしまうところに大きな落とし穴があります。同業他社を一生懸命分析し、負けるもんかの勢いで、「これがあった方がより安心だ」とか、「もっと高機能の方が便利だ」「更にワンランク上のサービスを…」と、会議室の中で額を合わせて考えていては、とんでもない勘違いサービスが生まれます。
お客様が本当に喜んでくださる付加価値を提供するためのヒントは、間違いなく現場にあります。相手の声に耳を傾け、相手の状況を察し、何を望んでいるかを一緒に考えることが全ての始まりです。“今よりもっと”を望むニーズはもちろんありますが、“余計な事はしないで欲しい”というニーズも意外と多いからです。わざとらしい接客や紛らわしい機能ならあっさり無い方が良いというニーズです。
私自身も、どのようなお仕事をさせていただく時も必ず現場を見て、声を聞き、一緒に考えることから始めます。「これ以上は無いの?」と聞いてくる顧客はいても、「このサービスはムダです」という言葉は、こちらから働きかけ、積極的に問いかけない限り、わざわざ話してくれることは皆無に等しいからです。
私達が勝手に付加価値だと思ってやっている“それ”は、もしかすると相手にとってはとんでもない“迷惑”なのかもしれません。
経営者の皆さま。会社の命運を掛ける“付加価値戦略”、いつも会議室だけで行っていませんか?お客様のところに足を運び、生きた声に耳を傾けていますか?机上の理屈は独りよがりの迷惑な押し付けになってしまいますよ。
オマケ。
先日、私が夢の国に遊びに行った時のお話しです。一緒にいた子どもが急にお腹が痛いと言い出し、その場に座り込んでしまったので、すぐそばにあったお店に飛込んで、こうお願いしました。
「すみません、子どもの具合が悪くなってしまって…薬を飲ませたいのですが、お水を一杯いただけませんか?」
すると、
「かしこまりました。それでは、こちらの列の最後尾に並んでお待ち下さい。順番にお渡しいたします。」とスタッフ。
どう見ても30~40分は掛かりそうだったので、また別のスタッフに同じようにお願いしてみると、「皆さん並んでいらっしゃいますから、後ろにお並びください」と。
具合の悪い子どもを置いて動くこともできず、結局列の後ろに30分並んで紙コップ1杯のお水をいただきました。これが噂の“神”対応?!・・・“紙”コップだけに。。。
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