部下が育つ仕組み
「会社で人を育てるのは、その上司の役目ですよね。私は常日頃から、管理者には部下とのコミュニケーションをしっかりとって、部下育成を責任もってやりなさい、と指導しているのですが、先日若手が退職してしまったのです。」
・・・先日、経営相談をいただいた社長のお話です。
上司に事情を聞いても、「部下とは、いつもしっかりコミュニケーションをとっている。指導をしても、本人がなかなか仕事を覚えない。」と言うばかりで、なかなか原因が見えてきません。
退職前に、その若手社員に話を聞くと、本人は「最初は良かったが・・・すぐに、忙しくなってくると相談しても親身になってくれず、お客様対応のことで、一人で悩んでいました。周囲の先輩も多忙もあるとは思うが接点を持てず、仕事での失敗でのショックも重なり、もうやっていけないと感じた」というのです。
「上司には、何度となく悩みを相談したが、真剣に考えてくれているように見えなかった」と話していたそうです。
私は、この相談を受けて、
「今回の事件は、氷山の一角です。上司だけに、部下育成を任せ続けると、また同じことが起こる可能性があります」とはっきりとお伝えしました。
●上司は部下育成していない!?
多くの中小企業では、管理職の多くはいわゆる「プレイング・マネジャー」であることが多いですね。
彼らは、個人の数字達成とともに、部下の育成をサポートしなければならない立場です。
そこで、「部下の育成と、彼らの数字をサポートすることが、部下育成につながるのではないか」と考えてしまう社長が多いのですが、実はここに問題の原因があるのです。
上司の本音は、「部下育成よりも、数字」です。会社によりますが、多くの管理職は、自分のチームや、自部署全体の売り上げや利益で評価が上下します。
そこにこだわるあまり、いつしかこう考えてしまいます。「数字を作るならば、部下を育成するよりも、自分が部下の分も数字を作る方が確実だし、早い」と。
優先順位は、自分の評価。市場は厳しくなる一方、業績数字は毎月待った無し。・・・育成は、時間があるときにやれば良い、と言うわけです。
数字を確保するために自分が数字を補填するのが上司の責任だ、と考えてしまうのです。
また、部下の数字が行かなくても、部署全体で数字を達成していれば、基本的に自分の評価が下げられることはない、と本音では考えてしまうのです。
・・・このような理由から、部下育成は後回しとなります。
そして、たまに、営業に同行させて、「自分の仕事のやり方を見て学べ」
・・・これで部下育成をやっている「つもり」になっているケースがいかに多いか。
やっているつもり、ですから、社長に「部下育成、やっているのか?」と聞かれれば、「もちろん、やっています」と答えてしまうのです。
部下育成とは、何を意味するのか?
その定義が、社内で確立されていなければいつまでもこのような問題は繰り返されてしまいます。
あなたの会社ではいかがでしょうか?
●部下育成の「仕組み」があるか?
部下育成を、そもそも上司一人に任せてはいけないのです。
管理者には、部下育成を一任せず、まず、すべきことは、部下が育つ仕組みを備えることです。
その仕組みとは、例えば、部下と上司が、「成長すること」をテーマに意見を交換し、悩みを聞き、希望を伝え、お互いに、今後の「成長目標」と「具体的に取り組むこと」を決めることです。
共通目標を持つのです。
いくら忙しい上司でも、月に1回、数十分程度、部下と対話する時間が持てないことはありません。
しかし、ここで上司任せにすると、個人差が出て、対話したり、しなかったり、という状況になります。
仕組みとして機能させるには、「会社として取り組む」、としっかり認識させることが必要です。
「(部下育成)この目的のために、会社全体として取り組む、やり方はこうで、ルールはこうする」と経営者が宣言しなければなりません。
ある意味、業務命令です。
こうなると、本音では、忙しいし、めんどくさいのだが、「形だけでも」やろうということになります。
最初はそれでいいのです。
継続する中で、毎月、部下との共通の「成長目標」を持ちますから、会話の軸もはっきりし、コミュニケーションは取りやすくなる。
すると、部下は上司の期待に応えようと頑張ります。
おのずと、成長するための疑問点に対する質問も積極的になってくるものです。
すると・・・
上司も部下から頼られたり、相談されたりする中で、指導することや、自分の経験談から教えていくことも、実は嬉しいのです。
繰り返していくと、部下との信頼関係も深まっていく。
退職リスクも低減します。
そもそもの目的である部下のスキルもアップしていくでしょう。
しかし、仕組みがなければ、個人差がでます。相性の問題もありえます。
そんなことで、大切な社員を失うことは、あってはなりませんよね。
会社として、仕組みを作ること。
そして、仕組みの運営を継続し、次第に育成者の自覚を育むこと
・・・このような工夫が大切です。
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