経営者の仕事。「戦略」よりも大事なこと。
― 競合商品と比較表ですか?それは作っていませんが、営業ではちゃんと説明していますよ。
先々週のことですが、ご相談に来られた社長が「当社の営業と面会してほしい」と依頼され、訪問したときのことです。
社長が期待した売上には、ほど遠い現実。
理由を探るべく、営業マンと面会したのですが…5分で「こりゃ売れないわ…」と感じてしまいました。
と言うのも、売っている商品は、“一見”すると差別化されたユニークな商品ではなく、どこにでもありそうな商品。
もちろん詳しく聞けば、しっかりと差別化はされているのですが、それが全く理解できないのです。
これでは、頭をひねって差別化商品を考えた社長も、それを実現した製造担当者も可哀想です。
話を聞く限り、差別化されたユニークな部分にしっかりと焦点を当てれば、新販路も、おぼろげながら見えてきます。
ところが、その決め手を確認するために「競合商品との比較表」があれば見せて頂けないか?
という問いに…
冒頭の「競合の比較表ですか? 今は用意していませんが、私の頭の中にすべて入っています…」との回答がくる始末。
さらに追い打ちをかける言い訳(?)として、失注している主因は、競合の存在ではなく、別な理由づけをされているのです。
正直、この状態で営業コストをかけるのは、時間もお金もドブに捨てているようなものです。
ただ、誤解のないように言うと、その営業マンの方の熱意がなかったと感じた訳ではありません。
経営陣と営業の想いが通じておらず、売れる!売りたい!売らなければならない!という感情に、現場が感化されていないのが、すべての元凶でした。
そもそも、事業の方針というのは、経営陣が決定します。
その決定された方針に基づいて、営業部隊は「該当商品」を販売しなくてはなりません。
販売しなくてはならない…
この感情は明らかに後ろ向きです。
この感情が起きる原因は、経営陣と営業部隊のパイプがしっかりと築かれないまま、販売が先行したときに生じてしまいます。
逆にこのパイプがしっかりと通っていけば、事業の遂行力は一気に向上するものです。
どうゆうことか?
企業経営は、戦争論を代用してロジックが組まれることが多いので、これを戦争論で置き換えて見て行きたいと思います。
戦争論には、「戦略」と「戦術」があることは、皆様もご承知の通りです。
しかし、もう一つ大事な要素があります。
いえいえ、大事というよりは、戦争論において中核的な要素となるものです。
それが「兵站(へいたん)」=「ロジスティクス」と呼ばれる概念です。
イスラエルの軍事学者であるマーチン・ファン・クレフェルト氏は、「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」と喝破するほどで、日本が大東亜戦争に負けたもの、この兵站の位置づけを甘くみていたとされています。
兵站とは、前線の戦闘部隊を支援する一連の体制づくりを言います。
兵士の移動から、食料や弾薬、武器の補充、または戦闘を有利に運ぶための情報作戦の遂行等を総括する単語です。
前線にいくら強靭で素晴らしい能力をもった部隊を揃えても、兵站がうまく計画なされていなければ、戦闘力だけでなく、士気まで低下していきます。
これを事業活動に置き換えて考えると、「売るためのあるべき体制づくり」が、くっきりと見えてきます。
経営陣が、なぜこの商品を売るのか? どのような大義名分があるのか?を前線に伝えることは、「なぜ私たちがこの商品を売るのか」という使命感が醸成され士気向上に繋がります。
そして、敵はだれで、どのような装備をしているのか? これらを事前に知らせることで覚悟が固まり、必要な準備を整えることが出来ます。
これを告げずに営業の現場に出せば、「思っていた敵と違う! こんなにバサバサ切られて痛い目にあっていては割に合わない!」と前線の戦力は一気に低下しまいます。
従って、営業マンが現場に行く前に「勝てる絵」を共有する必要があります。
経営陣も前線の営業部隊も《共通した勝つイメージ》をもち、どのような武器(営業ツールや販促手法)が必要なのか? を充分に吟味し、最強のものを用意して、安心して戦える環境をつくっていくことが大切です。
そして、戦いの結果を正しく聞き取り調査し、劣勢であれば勝てる作戦を再考し、優勢であれば、さらに圧勝できる作戦を熟考する必要があります。
御社では、経営陣と営業部隊のパイプは強固に結ばれていますか?
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