経営のものさし、営業のものさし
「ウチの社員は言った事しかやらないんだよ」という経営者のグチをよく聞きます。また、「ウチの部下は言われたことすらやってくれないんです」という管理者のグチもこれまたよく耳にします。
これらの言葉の裏には、「言われた以上の事をやって欲しい」とか、「最低限言ったことぐらいはきちんとやって欲しい」という期待が込められているんだろうなあとお察ししますが、指示をする側とされる側、期待する側とされる側の温度差は思った以上に開きがあるものです。
特に営業の現場において、「拡販に向けた活動を強化しろ」「新規開拓に力を入れろ」と言った経営者のゲキに対して期待以上の成果を持ち帰る社員はほんの一握りほどで、大抵の営業マンは「何でこれしかできないんだ!」と怒鳴られる結果となります。
多くの場合、「指導する側が自分を基準に考えるから悪いんだ」とか、「部下に考えが無いから悪いんだ」などとどちらか一方を悪者にして納得しようとしますが、そもそもの意味が伝わっていないケースが殆どだったりします。なぜそのような指示を出したのか?これによって何をしたいのか?どうすれば目的が達成できるのか?本当の意味はどこにあるのでしょうか。
「拡販する」とは、=「販売数の拡大」=「数量を多く販売すれば良い?」
「新規開拓」とは、=「新しい法人の見込をつくる」=「今まで行ったことの無い白地開拓をすれば良い?」
この場合、実は経営者が真に伝えたい事は、単純に数多く販売することや行ったことの無い企業に飛び込んで来いという単純な話しでは無いことが多いのです。例えば、これまで長くお付合いのある顧客に向けて、複数ラインの商品提案をしていなかった場合、他の商品やサービスを提案し、売上の上乗せを図ると同時に、より相手のニーズを掴み信頼関係を深くすることが目的だったり、また、自社がこれから開拓しようとする新しい分野に詳しい人物やそれらとつながりを持てそうな企業を開拓することで将来のビジネスパートナーにも成りうるような全く新しい世界を開拓して来て欲しいと思っていたりするのです。
ここまで説明すると、目先の訪問件数や販売台数ということを言っているのではないということはお分かり頂けると思いますが、多くの場合、その半分も意図が伝わらないままに、目先の売上目標や訪問件数に置き換わり、意図しない結果を出し続けることになるのです。
これまで多くの企業を見てきて痛切に感じることは、人はそれぞれ置かれた立場によって持っているものさしが大きく違い、その違いを認識していないと本当に大切なことは伝わらないということです。そして、それを積み重ねることで事業の方向性も大きく変わってくるのです。日頃、現場で繰り返される売上目標や新規開拓・販売数の伸びなどの数値達成の陰には、本来の経営者の考えがきちんと反映されているでしょうか?
経営者のものさしは、タテ・ヨコ・ななめを上から図れる立体定規であるのに対し、社員のそれはタテ専用やヨコ専用なものが多く、しかも長さが短い。経営者が考える「ものさしの半分」は、社員にとっては恐ろしく大きいものに感じるかもしれません。社員にそれを理解させるのは難しいことかもしれませんが、それを伝え続ける努力はしなければなりません。
何故なら、別々のものさしで測った家は真っ直ぐに立たないからです。経営者のものさしはビジョンや理念によってその大きさが決まり、社員のものさしは社内の体制や仕組みで統一することができます。特に“会社を売る”営業組織の仕組みは、会社の根幹となるものなのです。
経営者の皆さま。社員とものさしが違うなあと感じたことはありませんか?それは仕方がないことだと諦めていませんか?強力な営業組織を作るということは、“会社を売る”という共通のものさしを作ることになるんですよ。
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