依存者を集めると開業カウンセラーは成功できない
「カウンセリングを受けたら、私の症状は治りますか?」
カウンセリングを受けるかどうか迷っている見込み客が、カウンセリングルームに電話やメールで問い合わせてくるケースがあります。
今の辛い症状をなんとかしたいという思いから、治してくれる人や施設を探しているのです。
この時カウンセラーが「治りますよ」と断言すれば、予約してくる可能性は高いです。探していた人がやっと見つかったことで、見込み客は安堵するかもしれません。そして、開業カウンセラー側は、こういう人達の予約をとることで売り上げが上がることでしょう。
しかし、目先の売り上げ欲しさにこういったことを続けていると、この先には多くの危険性がはらんでいるのです。
この質問を別のシチュエーションから眺めてみましょう。
例えば、東大に何としても合格したいと願う受験生が「この塾に入ったら東大に受かりますか?」と塾の講師に質問したら、どう思いますか?
良識のある塾であれば「絶対受かりますよ」とは即答しないはずです。合格できるだけの勉強のカリキュラムは提供できるけど、受験生本人がどれだけ真剣に取り組むかにかかっているからです。
カウンセリングも同じです。症状を楽にしていく優れた技法をカウンセラーが持っていても、それだけでクライアントを改善させることはできません。
カウンセラーだけがどんなに頑張ってもクライアントが自らの意思で良くなっていくための行動をとらない限り改善方向には進んでいかないのです。
塾の講師がどんなに素晴らしいサポートをしても、どんなに腕があるカウンセラーが寄り添っていても、最終的にはクライアント自身が「自分がやるんだ」という意思がないと上手くいきません。
こういう人を積極的に取り込むことで、クライアントからは非常に頼りにされることでしょう。
「助けてください」
「先生にすべてお任せします」
と言われて、ある種の心地よさを味わえるかもしれません。
しかし、クライアントのカウンセラーに対する依存傾向がジワジワ強まってくるのです。日常生活で簡単にできる課題を出しても、行動しようとしません。このままカウンセリングを続けていると「あなたがいないと生きていけません」という状況になっていくのです。
一時的には売り上げが上がるかもしれません。しかし、長期的な視点に立つと、このような関係が長続きしないことは明白です。
いつまでも変化がない自分にクライアントが気づいて、不満をためこんでいくかもしれません。あるいは、家族に指摘されたクライアントが我に返るかもしれません。いずれにしても、その不満が怒りとなって、いつ爆発するかわからない危険な状態なのです。
依存者の手のひら返しほど怖いものはありません。もちろん、そういう状況にカウンセラーが導いてしまったということに気づかないといけません。カウンセラー側の精神的な負担は相当なものになります。
逆に依存傾向が少ない人達は、こちらが出した課題をやってくれる可能性が高いです。全く行動しない人に比べて、成長スピードが格段に違います。そして、比較的早い段階でカウンセリングを卒業していくので、クライアントの満足度が高いのです。
卒業というゴールから逆算して、カウンセリングの組み立てをするようになるので、自分の強みが深まってきます。その強みが見込み客にとっての魅力に映り、新たなクライアントがあなたの元へと続々と集まってくるようになるのです。
問い合わせがあった時点で、依存傾向が強くないか、しっかり確かめることが大切です。そして、カウンセリングの方針もしっかり伝えておきましょう。
あなたは依存者を集めたいですか?それとも自立したい人を集めたいですか?
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。