第14話 ”あうんの呼吸” が、マネジメントをダメにする本当の理由
「現場のマネジメントが全くできていません。なんとかしたいのですが、私自身、どこから手をつければいいか、わからなくなっているのです・・・」
ー事業の多様化を進める顧問先の経営者の言葉です。聞けば、現場の管理職が期待された役割を果たしていないとのこと。例えば、シフト管理ひとつとっても、一部の社員に辛いシフト勤務をしわ寄せしたり、業務の繁閑にかかわらず、社員が好き勝手に有給休暇を取得し、要員が不足したりする状況がまかり通っているようです。
また、この無責任な管理職に加え、経営者自身も、”現場の問題は現場で解決すべき”という思い(=無関心さ)に、がんじがらめになっていて、現場と本社の心の距離がどんどん離れていき、信頼関係が希薄になっているようです。
さらに、経営者が現場に無関心になればなるほど、現場の業務実態を把握することからも遠ざかり、業務手順や適切な労働時間管理といった基本的なことさえも、分からなくなってきているようです。
経営者は現場に無関心で業務実態を把握していないし、経営者の代わりである管理職も無責任な状況なのですから、冒頭の言葉(どこから手をつけていいかわからない)にあるように、業務が停滞するボトルネックを特定し解消することは、到底できず、途方に暮れるはずです。
このことは、ブラック社員にとっては、願ってもない好都合な状況です。彼らは、周囲の信頼を獲得するために、誰よりも優秀に仕事ができるように見せかけることに余念がありません。管理職や経営者自らが、”私は何もわかりません”と言ってサジを投げてしまえば、ブラック社員の天下とならないわけがないのです。
それでは、なぜ、経営者は現場に対して”無関心”になろうとするのでしょうか。その答えは、”あうんの呼吸”にあります。
実は、この会社も、規模が小さい時は、個人的な信頼関係を土台とした”あうんの呼吸”で良好なマネジメントを維持してきました。この信頼関係は、長年の付き合いの中で、”あの人はこう考え、こう行動するだろう”というレベルまで相互理解が進んだ関係であり、日常の雑談程度で情報さえ共有すれば、後は、おのずと工程と工程が連鎖して遂行されていく状況だったようです。経営者の積極的なマネジメントは必要なかったのです。
しかし、事業の多様化に伴って組織規模が大きくなり、新規採用の人材を中心とした、個人的な信頼関係を構築できていない組織が混在するようになり、”あうんの呼吸”によるマネジメントが、数年前から通用しなくなってきたようです。もはや、工程と工程は自然と連鎖しなくなり、無責任な社員が一人でもいれば、業務が停滞する事態を招くようになってしまったのです。
このような事態に陥ってもなお、”あの頃は上手くやれていたのに・・・”と昔の成功体験にすがりついている経営者が、結局は、”あうんの呼吸”が通用しない組織を”お荷物”と感じ、”自分のところだけ良ければいい”と考えるようになり(=タコツボ化)、無関心になってしまうのです。
組織規模が大きくなる時こそ、経営者は、”あうんの呼吸”は通用しないという現実をしっかり受け入れ、意図的に”工程と工程”を連鎖させるように、マネジメントに当たる覚悟が求められます。
経営者が連鎖させるものは”工程と工程”だけではありません。経営ビジョンと社員の夢を連鎖させる、事業計画と現場の計画実行能力を連鎖させる、顧客のウォンツと会社が創造する付加価値を連鎖させる・・・。”連鎖”は、卓越したオペレーションを実現するための、最も重要なマネジメント手法なのです。
貴社は、いつまで無関心を装いますか?
それとも、いよいよ”連鎖のマネジメント”に本腰を入れますか?
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。