まともな人が集まる会社にする、優秀な人が残る会社にする、その方法とは
住宅関係サービスを展開するK社長が部屋に入った時に電話が鳴りました。
私はジェスチャーで「電話に出てください」とお伝えします。
電話を終え、K社長は姿勢を正し、口を開きました。
「先生、うちの課長からでした。」
次の言葉を待ちます。
「今日入社した社員が、今日辞めました。」
K社長は、笑みをつくり「人を見抜くのは難しいですね。」と言われます。
どうやら、K社の仕組みは完成の域に達したようです。
訓練の目的は、「立派な作業員をつくること」にあります。
彼ら作業員(層)が日々現場を回すことで、日銭を稼ぐことができます。
そのため訓練プログラムでは、「決まったことをその通りに出来るようにする」を一つのゴールに設定します。その決まったことには、作業はもちろんのこと、言葉遣いやマナーなどの態度も含むことになります。
それに対し、教育の目的は、「立派な管理者を育成すること」にあります。
管理者が目標への進捗を管理します。そして必要に応じ仕組みを作り変えていきます。
それにより、作業員(層)はより正確に、より効率的に働くことが出来ます。
この進捗の管理と仕組みづくりを、「未来づくりに参画する」と表現することもできます。そこに参画させることこそが教育になるのです。
作業員(層)がしっかり日銭を稼ぐ、管理者(層)がしっかり未来をつくります。
そのための訓練であり、そのための教育です。
この両方の機能を会社として獲得する必要があるのです。
会社としてその訓練をするためには、仕組みが必要になります。
仕組みすなわち「決まったことがある」から、訓練を提供することが出来るのです。そこに再現性があるから、訓練プログラムで作業員を『量産』できるのです。
そして、会社として教育をするためには、組織が必要になります。
組織とは、成長のサイクルです。未来に向けて進んでいく機能であり、そこでの経験を確実にナレッジ(仕組み)として残す機能です。
組織が出来ているから、教育を行うことが出来るのです。
仕組みが無ければ訓練を提供することは出来ません。
組織が無ければ教育をすることも出来ません。
多くの年商数億企業は、訓練も教育も出来ていないのが実情です。それでもそれを行おうとして「社内勉強会」や「講師を招いての研修」をしているのです。その結果、大きな遠回りをすることになっています。やはり本当の『仕組み』と『組織』の獲得無しには、先には進めないのです。
と、ここまでは復習になります。
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この訓練の仕組みが、『首切り装置』になります。
もっと柔らかく表現しましょう。
「合わない、出来ない者を、際立たせる機能」を発揮することになります。
訓練で主に教えるものは、大きく二つになります。
一つは態度、もう一つは作業です。
中には、どうしても「遅刻してしまう人」がいます。また、どうしても「挨拶できない」人がいます。その当社のサービスの基準に合わせられない人は、どうしてもいるのです。
また、「入力作業でミスを連発する人」がいます。また、「作業手順を覚えられない人」がいます。自社の訓練プログラムには、「この時期までには、ここまでは出来ること」という期限があります。
そんな合わない、出来ない者を際立たせることになります。
この仕組みが無いと、そんな社員が長く会社に居続けることになります。
そして、1年が経つ頃になって現場から「あの人が・・・」と問題が打ち上げられることになります。そのタイミングで「人の素行を直すこと」は容易ではありません。それ以上に、そのタイミングで辞めさせることはもっと容易でないのです。
入社初期に伝えるべきことはしっかり伝える、そして、出来るようにさせる、それが訓練の仕組みなのです。その訓練プログラムこそが『首切り装置』の機能も発揮することになるのです。
その一方で、教育が「優秀な人を自社に留める制度」になります。
優秀な人は、向上心があり、自分を成長させたいと思う気持ちを強く持ちます。そのため、それが得られない環境であれば、新天地を求めて会社を去ることを選びます。
大体それが仕事を覚えた3年前後というタイミングでやってきます。その本人は、その頃になると一連の作業も覚え、日々にマンネリ感を持つようになります。
その時に、「未来づくりに参画できる」という機会があれば、彼らはその新たな挑戦できるテーマにやる気を高めることになります。また、会社から「期待されている」と感じ、愛社精神もより持つようになります。
教育すなわち組織、すなわち成長のサイクルが「優秀な人を自社に留める仕組み」になるのです。
これが全ての仕組みではありませんが、その中核であることは間違いありません。
研修などの他の施策があったとしても、その効果は限定的であり、『組織』が無ければ「優秀な人」は辞めていくことになります。
住宅関連サービスを展開するK社長は、課長から電話で「今日採用した社員が、今日辞めた」との報告を受けました。
姿勢をこちらに向けたK社長は言いました。
「先生、人を見抜くのは難しいですね。」
そして、笑みを浮かべ次の言葉を付け加えられます。
「その課長も、早くてよかったです、と言ってくれました。」
首切り装置が適切に機能したのです。
その日が初日です。K社の訓練プログラムでは『態度』を重点に伝える日になっています。
一人の先輩社員がその新入社員にテキストを使い説明をしました。すると、午前中が終わるころに、その社員は「辞める」と言ったのです。
その伝えた内容は、極めて常識的なことであり、社会人として当然のことばかりです。
その人はこのように思ったのでしょう、「この会社はしっかりしている」と。そして、「自分が通用すると思っていたが、自分では太刀打ちできない」とも思ったのでしょう。
または、「ここでは楽が出来ない」と、早々に見切りをつけたのかもしれません。
実は、K社長は面接の際に気になった点がありました。そして、それをその課長と共有していました。それは今までの選考方法では、絶対に気づけないことでした。
「採用面接」の仕組みの中の「人を見抜く仕組み」の機能もしっかり機能していたのです。この仕組みの出来も確認できました。
そして、実は、K社長が本当に嬉しかったのは「課長」がその役目をこなしてくれたことです。自分と同じような意識で社員を観ていてくれたのです。また、同じような視点で今回の現象を捉えてくれていたのです。
もし、その新入社員が初期訓練を乗り切ったとしても、そう長くは続かなかったことでしょう。その課長がいます。また、態度を説明した先輩社員がいます。その態度の基準を共有した職場があります。
その職場では「自浄作用」が働くはずです。今のK社は過去とは違い、社内には正しい考え方と規律があります。その社員はいずれにせよ「変えられた」か「辞めること」になっていたはずです。
訓練と教育ができる会社にしましょう。
それにより、人が育つ会社ができます。
それにより、まともな人が集まり、優秀な人が残る会社にすることができます。
本当に良い会社をつくるのです。
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