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浄化槽にサヨナラする日(後編)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

浄化槽にサヨナラする日(前編)からつづく

 

 

庭を豊かにする「復旧工事」

 

水道屋さんの工事が完了してから待つこと数週間。庭師さんの出番がやってきました。庭師さんはいつも引渡し前の最後の仕上げの仕事なので、天候にも左右され工期が厳しい現場が多くなります。新築の現場ともなれば引渡し前に完成見学会があったりして、さらに工程はタイトになります。今回の自宅の仕事は入れる時に入ってもらえばいいので、工事の時期はおまかせしていました。

道路ぎわの枕木だった部分には石を置いてもらうことにしました。実は、新築時からそうしたかったのですが予算と工期がかかる仕事なので、自宅では見合わせました。当時は社員宅でしたから、多くのお客様がご覧になられて石工事の引き合いが増えすぎるとまずいと、変に遠慮してしまったのです。いっぽう、当時はまだ枕木はそれほど入手が難しくなく、量の確保も容易だったのです。

鹿児島の石はやわらかく、加工がしやすいので昔から様々な用途に利用されてきました。鹿児島市内で採れた石の一部は「たんたど石」とも呼ばれています。ブラタモリでは「たんたど石のおかげで、明治維新の主役になれた」と紹介されていました。切り出しやすく、カミソリの刃1枚も入らないと言われるほどの精巧な石組みができたそうです。「たんたど石」は北京原人の時代の火砕流堆積物でできた「溶結凝灰岩」だそうです。そういえば、自宅からそう遠くない場所にも石切場跡があり、バス停に「たんたど」というのがあります。

自宅に持ってきてくれた石はいつの時代からかは分かりませんが、どこかで使われていた石です。古い切石は、建物の基礎などにもよく使われていましたので、厚みの大きな四角い石が多いのです。再利用する際、地面に据えるのに土をそれだけ掘るのも、その石を持ち上げるのも大変です。なので、今回は厚みのおおきな石は半分に割ってきてもらいました。それでも相当な重量なので、ワイヤーを掛けて小さなユンボで吊り上げなくてはいけません。

 

  ↑自分で仕入れいておいたコンクリート平板(けっこう重いです)

 

↑最初はこのように並べるつもりでしたが…

 

↑こうしてひねると間隔がばらついても目立たないようです

 

↑反対にひねったほうが点検口を自然にかわせるし、建物の角度に馴染みます

 

↑石がやってきました!(こういう時は通行量が少なくて助かります)

 

↑厚みの大きな石は半割りにして持ってきてくれました

 

 

いよいよ始まった「庭師さんの仕事」

 

20年前に据えてもらっていた枕木も、再利用素材でした。鹿児島県内では1980年代までに多くの旧国鉄線路が廃線となって大量の中古枕木が地元で流通していましたが、さすがに最近では品薄になってきました。今回の石も再利用素材です。石材は運搬や設置には手間はかかりますが、材料そのものは何世紀にも渡って多くが現存しています。

コンクリートは石材の代用素材でもあり現場で固めるので施工性は良いのですが、素材の寿命は長くても100年程度とされていて、自然石とは比べるべくもなく短いものです。自宅敷地は区画整理区域から外れたので、念願でもあった永く安定している自然の材料を使うことにしたのです。

また、今回のような住みながらの工事では楽しみもありました。新築時と違って職人さんたちの仕事を間近で見たり、一緒にお茶を飲んで休憩したりできることです。新築時は営業マンでしたから、自宅の工事中現場に寄れるのはいつも深夜で、懐中電灯を照らしてどこが進んだのかを夜な夜な探すのが日課になっていました。そうこうしていると、気づくと1時間ほど現場にいることもよくありました。

思い起こせば3歳ごろに、大阪の実家の改装現場で大工さんたちと過ごしたのが「現場デビュー」でした。「三つ子の魂百まで」と言いますが、職人さんたちが色々作っていくのを見ているのは今でもおもしろいのです。(邪魔になっているかもしれませんが…)

 

↑枕木は掘り返すとボロボロになっていました

 

↑自宅に設置後20年経ってもピンピンしている枕木もありました

 

↑鹿児島の石は、やわらかいのでカッターでスコスコ切れます

 

↑見事なチームワーク。惚れ惚れします

 

↑次々と石がピッタリすわっていきます(鋭角の三角部分が難関です)

 

↑様々な色・形の石が組み合わさってしぶいです

 

↑コンクリート平板のまわりの隙間にまいてもらったクローバーの種が発芽しています

 

↑点検口もあまり目立たなくなりました(奥の方の↓のところはスギゴケが張ってありました)

 

↑庭としての緊張感が!(ここの水やりも日課になりそうです)

 

↑コンクリート平板も風雨にさらされ、このぐらいになると素敵です

 

↑ピンピンしていた枕木は、トイレから見えるココにやってきました

 

 

 

恐怖の「オオスズメバチ」出現

 

庭師さんたちと3日ほど過ごしているうちに、一匹のでかいハチがブーンと飛んできました。ススメバチです。庭師さんたちは大して気にも止めない様子でしたが、そのときイヤな予感がしたのです。「デジャブ※」のような感覚です。10年ほど前に剪定に来てもらったときに、庭師さんのひとりがスズメバチに刺されてしまったのです。しかも、そのハチの巣は自宅の木塀にからむカズラの中に出来ていたのでした。

※「デジャブ」(既視感)は、実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じる現象。

 

10年前のその日は、私自身はハチそのものは見ていなかったのですが、なんだか前にも見ていたような気がしたのです。なんとなく、10年前に問題の巣があった場所に見にいってみると、なんと同じ場所に同じような巣があるではないですか。忘れもしない逆トックリ型の小さな巣です。スズメバチは梅雨前の頃、独り立ちした女王蜂が小さな巣をつくります。そこで産み育てた子どもが大集団となって、やがて巣も巨大化していくのです。独り立ちしたばかりの女王蜂が作った小さな巣の形が逆トックリ型なのです。

慌てて、庭師さんたちに「通報」したところ、即座に軽トラから「近代兵器」が取り出されました。そして、スズメバチの女王が巣に帰ってくる夕方を待って、一撃で撃退されたのです。庭師さんが「近代兵器」を2mの近距離から噴射すると、すぐさま女王蜂が飛び出し襲ってきました。私なら、ひるんで逃げようとしてしまいそうですが、そこは庭師さん。さらに近づき噴射し続け、みごと「撃墜」したのです。

10年ぶりに同じ場所にスズメバチの巣が。しかも庭師さんたちが来ている時に。2度あることは3度あるかもしれません。その後、庭師さんたちはビビる私に「近代兵器」をプレゼントして帰っていかれたのでした。

 

↑皆さん、梅雨前にこれを目撃したらヤバいです

 

↑最大射程12mのスーパーウエポンが軽トラから登場(さすが庭師さんです)

 

↑オオスズメバチの女王です(恐怖のあまり駆除中の動画は撮れませんでした)

 

↑スズメバチの巣の最初期はこのようんトックリ型をしているのです

 

 

 

石の上を踏んで出入りする庭。20年来の念願がかないました。また、ここから時を経る楽しみが始まるのです。

 

 

 

 

 

 

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