節税が趣味の社長にお金が残らない理由
節税対策の種類や方法は、実にさまざまです。そのため、節税対策の基本的な考え方や財務思考が社長に身についていないと「そんなはずではなかった…」と後悔することになります。
まず、節税対策を考える上で最初に知っておくべきことは、「お金を使わない節税対策」と「お金を使う節税対策」があるという事実です。
お金を使わない節税対策には、不良債権の貸倒損失や資産の評価損などがあります。これらは実際の支出を伴うわけではないので、一番にやるべき節税対策です。
多くの場合、「節税対策」と聞いて多くの社長のアタマの中に思い浮かぶのが、お金を使う節税対策です。
お金を使う節税対策をすると、一時的には税金が安くなった…と思うかもしれません。ところが、目的と手段を間違えてしまうと、節税効果以上にお金を失う…という落とし穴にはまります。
例えば、保険への加入、投資商品や高級車の購入、接待交際…、社長には、多くの誘惑や勧誘がきます。保険の営業マンに「節税したい!」と声をかければ、喜んで節税商品を紹介してくれることでしょう。
なぜなら、保険の営業マンは商品の販売が仕事だからです。ですが、多くの保険営業マンは、会社経営にまつわるお金のことや財務に関しては、専門外です。
さまざまな金融商品がありますが、販売元は自社の売上をあげるために必死に営業活動をしていることを忘れてはなりません。
普段は財布のヒモが固い社長でも、「節税対策」と聞くと急に高額な買い物をしてしまったりします。決算が終わってから後悔することも少なくありません。
だからこそ、お金を使う節税ほど、本当に自社に必要なものかを確認することが大切です。
節税とお金の関係を簡単な例で考えてみましょう。例えば、100万円の利益で、税率30%であれば、100万円-30万円=70万円の資金が会社に残ります。
一方、節税のために社員旅行や客先との接待などで100万円の支出をすれば、税金は100万円-100万円=0円ですが、会社に残るお金も0円です。
つまり、「納税はしたくないけど、会社にお金は残したい」と思っていては、いつまで経っても強い財務体質の会社にはなりません。
納税してでも会社にお金を残せば、内部留保は増えますし、自己資本比率も高まっていきます。
融資審査の際、銀行は「自己資本がいくらあるのか、自己資本比率が何%なのか」を必ず確認します。そのため、自己資金が潤沢にあり、自己資本比率も高い会社は、金融機関との関係性で優位に立つことができます。これは、大変重要なことです。
社長が考えなければならないことは「会社経営において、何を最優先事項とするか」です。それは、会社を潰さないことであり、事業の永続です。
「会社のお金のことで不自由したくない…」「銀行の目を気にすることなく、自由に事業投資したい…」と考えるのであれば、キャッシュリッチで強い財務の会社にすることが最優先事項のはずです。
節税対策は、キャッシュリッチで強い財務体質の会社になった未来に考えるべきことです。資金不足・借入依存・赤字体質の状態の中で、節税対策をしてしまえば、いつまで経っても経営は苦しいままなのです。
繰り返しになりますが、金融機関からの資金調達を円滑にし、事業投資を自由自在にしたいと願うのであれば、まずは、節税よりも財務強化を重視すべきなのです。
この優先順位を間違えてしまうことが、将来的に自社の経営の自由を奪うのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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