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“困っていない”のカベの壊し方

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

あなたは今、自社商品サービスで「困っていること」がありますか? 唐突な質問でごめんなさい。大切な問いですので、60秒だけご自身の胸に静かに問うてみてください。困っていることが「ある」方は、このコラムを閉じていただいて構いません。

「商品サービス…特に今は困ってないよ」と思った方。パッと考えた時に「困っていない」と本能で思ってしまった社長、読み進めてください。おいおい、逆だろう…、と反発かもしれません。しかし敢えてお伝えします。「困っていない」と思ってしまう社長には、キケンな匂いしかしません。お進みください。

せっかくリフレッシュしたのに脅かすなよ、という声が聞こえてきそうですが、今生活者には「巣ごもりライフ卒業」の空気が高まっています。これまで賑わいをみせていた手芸店がワゴンセールをはじめています。おウチ時間の暇つぶしに人気を博した「刺繍セット」などが大量に売れ残っているのです。

他にも、おウチ時間を楽しむ商品は、さまざまあります。例えば、お宅のリビングにある大きなトレーニングマシン…。「どうしてこんなものを買ったの? 」と、思う生活者が増えています。あんなに熱中していた瞑想系や知識系、トレーニング系のYouTube動画もまったく観なくなった、という声もよく聞きます。

一方、街には人が戻りました。銀座の老舗書店、教文館の店頭で「古地図」を販売していました。幕末時代の地図が大人気で、目の前でどんどん売れていました。古きを想いながら街歩きをする人が増えているのです。また、音楽ライブをはじめ、演劇、映画などのエンターテインメントが元気を取り戻しています。

今、空気の変わり目です。2019年からの2年間、自社の問題に向き合って商品リニューアルの思想を取り入れて仕組みをつくった社長はこの「変化」をチャンスとし、動きはじめています。

例えば、自社のリアル店やネット店において、今ある商品の並び替えをするだけ、切り口を変えパッケージングするだけで生まれ変わります。新しい市場が生まれます。この2年で商品リニューアルを仕組み化している会社は、すぐに展開することができます。本質さえ定めていれば、いかようにもリボーン(甦り)できます。

生活者の変化によってジワジワと商品が売れなくなったり、返品・廃棄商品の山に頭を抱えている社長からのご相談も増えています。それでも数にすれば、わずかです。なぜなら、中小企業経営者の9割が「困っていない」からです。

最近ぽっこりお腹がかなり目立ってきた菓子メーカーのY社長は豪快に笑って、「まだまだお客さまは家にこもっているでしょう。休み明けで感染者がどっと増えたら、また巣ごもりに戻るとテレビでも言ってましたしね! コザキ先生の予兆にエビデンスはあります?」と気にしない様子です。そもそもY社長自身が自宅や会社に引きこもり状態だったのです。

Y社長の例は極端でしょうか? しかし「この2年は、感染リスクから、人に会わないようにしてきました」と自慢する中小企業経営者が案外多いのです。巣にこもっている「穴熊社長」と宣言しているわけです。

強い言い方になってしまいますが、わたくしどもでは、穴熊社長は失格だと考えています。穴から出なければなりません。世の中は大きく変わってしまったのですから!

問題なのは「困っていない社長」です。問題を見つけることができていない経営者です。むしろ第三者に相談できる社長というのは、解決への道筋をつくることができるので心配がありません。「困った化」できていれば、いかようにも打つ手はある!

一方、困っていない穴熊社長はかなりキケンな状態です。問題と感じるアンテナが立っていないからです。もちろん「変化」からの逆算をし、意図して設計している商品サービスであれば、慌てふためくことはありません。わたくしどもが提唱している「商品リニューアル」の本質を理解していれば、「変化こそがチャンス」とお考えになるはずです。

生活者の空気感がフワッと変化した時に、新しい“コトバ”を開発できるかできないかが、商品サービスの生死を分かちます。企業の生死をわけます。それほどまでにコトバが重要なのです。理由はシンプルです。人間は「コトバ」で意思疎通、コミュニケーションするからです。

コトバによって、新しい世界が生まれるからです。ネーミング、キャッチフレーズ、タイトル、本分コピー…こうしたコトバに昇華したとき、やっとお客さまに自社の思いが伝わるのです。手にとって知っていただけるチャンスが生まれるのです。

残念ながら、多くの中小企業経営者が時代の「コトバ開発」に力を入れていません。その重要性にすら気がついていません。もったいない! 何と残念なことか!

コトバを開発するためには、「困って」いなければなりません。知らなければ、知っていなければ、困ることができないのです。目の前で変化が生じていても、何か現象が起こっていたとしても、感じていなければ、困ることはできません。儲かる商品サービス、稼ぐ事業は「困っている」ことから始まるのです。

正解を出す時代が終わり、「問い」を出せる企業が生き残ってゆきます。商品リニューアルとは、今ある商品を目の前に置いて立てる「問い」そのものです。

あなたは「困る」ことが、出来ていますか? 今ある商品サービスに関わるあらゆる要素から、微弱な変化を感じることができていますか? それがわからなくて「困っている」という一歩から始めませんか?

 

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