『睡眠住宅』考
「メラトニン」と「セロトニン」
「メラトニン」は脳の松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンです。別名『睡眠ホルモン』とも呼ばれます。その主な働きは↓
①【体を覚醒した状態から睡眠へと切替える】
「メラトニン」は、暗くなる夜間に徐々に分泌量が増え始めます。「メラトニン」の分泌には日中に分泌される「セロトニン」というホルモンが欠かせません。「セロトニン」は「メラトニン」の原料であり、日中に適切な量が分泌されると夜間にメラトニンを作りやすくなります。
「セロトニン」は脳内で働く神経伝達物質のひとつで、感情のコントロール、神経の安定に深く関わっています。別名『幸せホルモン』とも呼ばれます。その働きは主に5つ。
①【大脳に働きかけて覚醒の状態を調整する】
②【心の領域に働きかけて意欲を促す】
③【自律神経への働きかけ身体が活動に適した状態に】
④【姿勢筋への働きかけ目がパッチリして背筋が伸びる】
⑤【痛みの感覚を抑制する】
不足すると、脳機能の低下からさまざまな不調が現れ心のバランスを保つことが難しくなります。逆に適切な量が出ていると、脳が覚醒し心のバランスも取れて自然に物事に対する意欲が出てきます。
朝の明るさと「セロトニン」
『朝日を浴びると、光刺激によって脳内の「セロトニン」の分泌が活発化します。そして、24時間より長かったり短かったりして個人差のある、体内時計がリセットされます。また「メラトニン」は目から光刺激が伝わり分泌が止まり、14〜16時間後にまた分泌されて眠くなります。つまり、朝日を浴びることには、
●「セロトニン」の分泌を促し、こころと身体を覚醒する
●「メラトニン」の “約15時間タイマー” を体内時計にセットし夜の入眠をスムーズにする、睡眠リズムを良くする。
という2つの作用があるのです。 睡眠の質を高めるためには日中に光を浴びて「セロトニン」を分泌させ、眠りにつく3時間前までに部屋を暗くして「メラトニン」の分泌を促すことが大切です。
ちなみに室内照明は明るくても500ルクスで、体内時計の調整に必要な朝の光は2500ルクス程度と言われているそうです。
ということで、朝の寝床での照度を測ってみました。
↑ ipadで映画を見たりする「夜更かしモード」の枕の位置では?
↑ 明るく見えますが40ルクスしかありません。朝起きれないはずです。
↑ 東側の窓にほど近い「早起きモード」の枕の位置では?
↑ スクリーン無しだと25880ルクスもの猛烈な眩しさです。さすがに日の出と共に目が覚めます。体内時計も「強制リセット」です。
次に、朝ごはんの場所の照度も。
↑ 朝日の方向を向いている2階のテーブル天板の照度(スクリーンを降ろした状態、顔の位置でも3026ルクスでした)
体内時計をリセットするのに十分な明るさでした。朝日の方向の窓際で朝ごはんを食べるのは、いい習慣のようです。
夜の暗さと「メラトニン」
悲しいことに「メラトニン」は小学生の頃をピークに年齢と共に減少するそうです。なんと35歳あたりでも小学生時代の「メラトニン」ピーク時の6分の1ほどに激減してしまうのです。
「メラトニン」は500ルクス以上の光を浴びると分泌が抑えられてしまいます。なので夜間の照明は150ルクス未満が推奨だそうです。暗めで暖色系の照明を選ぶ、間接照明を利用するといった対策もおすすめとのことです。
また、スマートフォンやタブレットの画面から発せられるブルーライトを長時間浴びてしまうことも、正常な「メラトニン」分泌の妨げになります。
ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制する力が特に強いと言われていますので、照度の調節以前に意識すべきです。寝る前にスマートフォンやタブレット、ゲーム機などを操作することは控えたほうが良さそうです(汗)睡眠の専門家に言わせれば、ベッドサイドに充電用のコンセントをつけるなどは「もってのほか」だそうです。
ということで、夜の机での照度を測ってみました。
↑1階和室の手作り机
↑1階和室の机天板の照度(顔の位置では185.9ルクスでした)
↑2階のパソコン机
↑2階の机天板の照度(顔の位置では178.9ルクスでした)
↑ロフトの机
↑ロフトの机天板の照度(顔の位置では136.6ルクスでした)
夜、目に入る光の強さが200ルクスを超えると、「メラトニン」の分泌が減少して睡眠の質に悪影響が出るという報告もあるそうです。自宅は日中明るいので、老眼の夫婦は夜になると「ちょっと暗いな」と感じていたのですが、これ以上の明るさは控えたほうが良さそうです。
社長の会社では住環境と睡眠の質の関係についての理解は十分ですか?施主が安らかに眠り、日々はつらつと生活できるよう気を配っていますか?
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