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日立を救ったマニュアル破り

SPECIAL

成長支援部づくりコンサルタント

ヒーズ株式会社

代表取締役 

会社の大元となる「総務」を革新すれば、すべての事業部に影響を与え、顧客志向になり、驚くほど業績が伸びる。経営者が着手すべき、「成長支援部づくり」を指導。

基本に戻ってマニュアルを破る

1997年7月23日、羽田発新千歳行きの全日空機がハイジャックされました。

犯人は機長を刺殺、自ら操縦かんを握りましたが、当然のことながら上手く操縦できません。そして、あわや墜落直前という危機を救ったのは、たまたまその飛行機に乗り合わせていた非番のパイロットでした。

この飛行機には後に日立をV字回復に導いた川村隆日立製作所相談役(事件当時の肩書は副社長)も乗っておられました。川村さんが日経新聞に掲載されていた「私の履歴書」によると、そのパイロットの方は「ドアを蹴破ってコックピットに突入し、操縦かんを奪い返した」のですが、その行動は「実は航空会社の定めたマニュアルに反していた」そうです。

当時のマニュアルでは、ハイジャックへの対処方法=犯人の言うことを聞くだったので、犯人の言うことを聞かずに操縦かんを奪い返したのは文字通りで言えばマニュアル違反という訳です。

もちろん、このマニュアルができた背景にはハイジャック犯の要求を入れてさえいれば、最悪の事態は回避できるという考え方があります。そして、マニュアルを作る際には、基本となる考え方があってマニュアルの規定ができるという流れがあります。

けれども、多くの場合、マニュアルはいったんできてしまうと、その規定に各人の行動が縛られてしまうというリスクがあります。その場合、必要なのは基本の大元に立ち返って行動する習慣を普段から意識することです。

先のハイジャックの例で言えば、基本的な考え方:「ハイジャック犯の要求をのんでさえいれば、最悪の事態は回避できる」→マニュアルの規定:「ハイジャック犯の言うことを聞く」という構造です。しかし、もっと根本に立ち返ると、航空会社のマニュアルにおける基本は、乗客の安全を守るということです。

この基本の大元に立ち返れば、まさに飛行機が墜落寸前の状態の時には、マニュアルの規定を順守して犯人の言うことを聞くのではなく、マニュアルの規定を破って犯人から操縦かんを奪い返すことが正しい選択であることは明らかです。

このハイジャックの事例はやや極端なケースかもしれません。けれども、会社の日頃の活動の中で、「ウチのマニュアルではそれはできない」というマニュアル至上主義が横行して思考停止、ひいては行動が止まっているということはないでしょうか。

皆で考えて作ったマニュアルを守ることは大切です。誰も守らないマニュアルなど作るだけ時間のムダです。でも、そのマニュアルを作った際には、「会社としてはこうあるべきだ」「会社にとって一番大事なのはこれだ」「会社としてこれだけは譲れない」という基本中の基本があったはずです。

そして、基本中の基本はごく当たり前のことが多いためについ意識してないことがあります。常に基本に立ち返ってマニュアルを見直すマニュアルは変えるためにありです。

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