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業績が良くても社長の不安が消えない訳

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「はい、足元の業績はおかげさまで悪くないのですが、今のままでは非常にリスクが高いですねえ…」ー 先日個別相談にお越しになったM社長の気分は晴れません。

同社は精密部品の製造を営んでいますが、売上の大半を大手自動車部品メーカー1社からの受注に頼っており、実質はこの部品メーカーの下請けの状態にあります。

M社長いわく、「簡単に他社に切り替えられるような部品ではないし、その顧客との信頼関係もあるので大丈夫だろうと、自分に言い聞かせてこれまでやってきた…」とのことですが、さすがに放っておいてはこの先まずいだろうと思われ、ご相談にお越しになりました。

そもそも受注の大半を一社の顧客が占めるという状況自体、非常にリスクの高いことですが、その1社が自動車部品メーカーということですのでそのリスクは何倍増しにもなります。

日本が世界に誇った自動車製造業は過去最大の転換期にあります。かつて日本メーカーがこぞって製造していたガラケーがiphoneの出現によって一気に壊滅に追い込まれたような、そんな大波に既存の自動車メーカーが呑まれてしまう可能性は非常に高いです。

そんな未来を見越して株式市場はわかりやすい反応を示しています。いまやテスラの時価総額は100兆円を超え、トヨタを含む主要自動車メーカー7社の時価総額を足し合わせても届かないところまで行ってしまいました。

この差は市場が過剰反応した一時的な現象ではなく、おそらく今後ますます拡がって行く可能性が高いでしょう。自動車を製造販売して利益を得る会社と、自動運転システムのアップデートをサブスクで販売して定期収入を得る会社とでは思想が違いすぎます。

自動車業界での価値創造はハードからソフトに移行します。当然、テスラのみならずGoogleやAppleらITのビッグジャイアントも主要プレーヤーの座を取りに来ます。「モノづくりの会社」というアイデンティティが抜けきらない自動車メーカーをトップとしたピラミッドに取り込まれている企業はこの先苦しくなることでしょう。

さて、本稿でお伝えしたいことは「自動車業界の厳しさ」ということではありません。大事なことは「生殺与奪権を他者に握られていないか」ということです。

M社のようにごく少数の顧客しか持たない場合、それらの企業に発注を止められたら自社の経営はたちまち苦しくなってしまいます。たとえその顧客とは信頼関係が築けていたとしても、その会社が急に廃業を決めたり、M&Aにより買収されるといった事態はこちらで防ぎようもありません。

もちろん、事前にはなかなか備えきれないリスクというのは常に存在します。リーマンショックや今回のコロナ禍もそうでしょう。我々の暮らしが大雨や地震でいつ脅かされるかわからないのと同様に、大きな環境変化により経営が傾くリスクは常に存在します。

しかしながら、経営リスクの多くは事前に自社の力で事前に回避できるものです。繰り返しますが、経営リスクを考える上で非常に大事なことは「自社の生殺与奪件を他者に握られていないか」ということです。

生殺与奪権を握られてしまっている例は多岐にわたります。前述のように少数顧客からの受注に頼っているというのはわかりやすいケースですが、外注先や自社の社員に握られている場合もあります。

外注先でいえば、自社の商品やサービスのキモとなる部分を一社の外注先に任せているケース。この場合もその外注先になにかあったら危険です。複数の外注先を起用したり、自社でもできるようにしておくなどの事前措置が必要です。

あるいは、わかっていながらも放置してしまいがちなのが、事業のキモの部分を特定の社員に頼るということです。これは、たとえば「営業」で勝負している会社が、実は受注の大半をひとりのトップ営業に頼っているような場合です。顧客が会社ではなく「人」についてしまっている場合、その社員が辞めてしまったら顧客も失ってしまう可能性が高いです。

あるいは「技術」で強い会社が、内情はひとりの職人的な技術者に頼っているケースも同様です。その技術者に何かあった場合自社の強みも失われてしまいます。

さらに言えば、事業運営のキモを社長がすべて握ってしまっているケースも会社にとっては同様のリスクと言えます。個々の案件にいちいち社長が介入しないと回らない状態になっているとしたら、社長に何かあった場合に社員が大変に苦労します。

少数の顧客や外注先、一部の社員、あるいは社長自身…特定の誰かがいなくなったら会社が傾くリスクをできるだけ事前に排除しておくことです。「攻め」を大事にする社長にとっては保守的な話に聞こえるかもしれませんが、自社の生殺与奪件をこちらで握っておくことで、安心して攻めることができます。備えあれば憂いなしです。

当社のクライアント先にも、冒頭のM社同様、自動車業界で少数顧客に頼る経営をされてきた会社は複数あります。いずれの会社もその下請け体質から脱却すべく、頑張って新たな自社サービスを立ち上げ、顧客領域を広げて広げていかれています。

そのうちの一社のH社長は言われました。「いやあ、自分たちの可能性を感じることができましたよ。いままで自動車業界で奴隷のように働いてましたからね…」同社ではいまや多岐にわたる業界から広く受注が取れる体制ができてます。思い切って事業構造の改革に着手された成果です。

御社は生殺与奪権を特定の誰かに握られてしまっていませんか? 自社でコントロールできるリスクには事前に対処し、長きにわたって攻めていける体制をつくっていきましょう。

 

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