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管理人さんと、悲喜こもごも(その2)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

管理人さんと、悲喜こもごも(その1)からつづく。

 

養生(ようじょう)考

 

※養生(ようじょう)とは、本来のあるべき姿でいられるよう、保護をすること。 建築や引っ越しの現場などで用いられる場合は、周囲に傷がつかないようシートなどで保護をするという意味。

マンションの玄関ホールや廊下・エレベーターなどの共用部分は区分所有法で定められた各部屋の所有者全てが持ち分(所有権)を持つものです。

実際にそこに訪れてみると、共用部分は誰のものでもないような雰囲気があったりしますが、感覚的には管理人さんやそこに住まう人みんなのものという感じがしてきます。所有権はお持ちではありませんが、ふだん共用部分を一番気にしているのは管理人さんだったりするからです。

共用部分とはいえ、自分の家の玄関や廊下に外部の業者がキズ をつけたり汚したりするのは不愉快に決まっています。その場合、工事を依頼した部屋の所有者としては肩身の狭い思いをされることも当然の成り行きです。最近ではマンション内の住民同士のお付き合いもほとんど無かったりしますので、工事に関するクレームは管理人さんに集中することになります。クレームを言う人も「誰が言ってるのか?」は伏せておきたいので、管理人さんが怒られてしまうことも多くなるのです。

 

管理人さん 「昨日、工事の音のことでクレームがあったんよ」

吉岡「え!すみません、お詫びに行ってきます。何号室の方ですか?」

管理人さん 「それがね。変な感じになりたくないから、それは言わないようにって…」

 

というようなこともよくありました。このときは、理事長さんとも相談してエントランスホールやエレベーター内などの掲示板にお詫びの張り紙をすることにしました。(しょっちゅう張り紙するので、掲示板のサイズが大きくなったりしました💦)

なので、養生はどんなに丁寧にやってもやり過ぎということはありません。自分の家の玄関、廊下なのですから。

 

↑お手軽でクイックな物品搬入系のエレベーター養生

 

↑今まで見た中で、間違いなく史上最悪のエレベーターの養生

 

↑色もあっさり、ストレッチャー用の開口部や掲示物用のくり抜きを施した『思いやり養生』

 

↑狭いので何かとキズ・汚れが心配なエレベーター前スペースも養生

 

エレベーター内の養生は工事中つけたままにしていましたが、その後築浅物件の工事の際に「毎朝養生して毎夕取り外してください」との指示でカーペットに薄くて柔らかいマグネットがついた取り外し式の養生マットを使うようになりました。これって意外といい値段がするのですが、施工側としては問題もありました。

 

●ほこりを取り込んでしまう
●意外と重い
●くるくる巻いて運ぶのでかさばる
●マグネットがくっついたまま引きずるとエレベーター内の壁にキズがつくことも

 

↑エレベーター用の取り外し式養生マット

 

築10年ぐらいまでの新しいマンションではそうでもありませんが、築年数が増して古くなってくると共用部分の大規模修繕が実施されたり、個別の部屋でも改装工事などが次第に増えてきます。また、同時に複数の部屋の工事が同時進行したりするケースも稀ではなくなってきます。そうなるとエレベーターの使用が問題になります。よほど大きいマンションでない限りエレベーターは1機しかないことが多く、朝夕の出入りの多い時間帯にもたもた材料の積み下ろしなどしていると、叱られることになります。荷上げや荷下ろしのタイミングや声かけはとても大切です。

 

ホコリ・におい考

 

季節にもよりますが、マンションでは上層階に行くほど風が強くなります。

いくら共用部分の掃除を徹底していても、工事関係者が部屋に出入りする度に木くずなどが飛び散ってしまうことになります。猛暑続きの夏場であればバルコニー側の掃き出し窓は開放して仕事をしたい訳ですが、バルコニー側の窓を少しでも開けておいて玄関ドアから出入りすると、驚くほど風が通って一瞬にして廊下や上下階の別の部屋のバルコニーまで木くずだらけになることがあります。工事中は部屋の中の間仕切り壁は全部取っ払ってありませんので、本当に驚くほど風が通るようになるのです。ドアの開け閉めの際、ヒューヒュー音が鳴ったりします。

「マンションでエアコンのない生活を、またそれで年中快適に過ごせたら」ということを考えて放射式冷暖房にトライした際のことでした。この放射式パネルは一体式で大きくて搬入も大変なので、床が出来上がったら早めの段階で設置します。せっかく設置したのだからという事で、試験運転もかねて工事中動かしてみたところ、冬は暖かいし夏もばっちり涼しい。しかも音も風もなく作動するのです。これで夏でもバルコニー側の掃き出し窓も閉めたまま仕事ができます。近隣住戸への音もホコリも大幅に改善できます。もちろん、職人さんたちも大喜びで、全員パネルの周りに集まって仕事しているのに気づきみんなで笑っていました。

 

↑無風の冷暖房完備の現場を実現する放射式空調パネル

 

総会という戦場

 

初めて中古マンションの部屋を買って、フルリノベーションの施工中に早くも2軒目の部屋を購入することになりました。それも、ご縁があって最初の物件(詳しくは 管理人さん悲喜こもごも(その1)をご覧ください)の隣のマンションでした。築年数は1軒目よりさらに数年古い築40年近いものでした。 管理人さんは年配の男性でしたが、1軒目の管理人さんと隣どうしで仲良くされていてホッとしました。

その2軒目のマンションの部屋を購入した直後に、管理組合の総会がありました。1軒目にならって住民の方々と顔見知りになる良い機会と思って、参加させていただきました。 隣の1軒目のマンションでの経験があったので、その日はなんとなくご年配の皆さんが仲良く集まっているイメージで会場に入りました。が、しかし会場に入るなり、なんとなくピリピリした空気が漂っていました。

その日の議題には、

 

●管理会社の変更について
●大規模修繕工事の発注について
●修繕積立金の残高状況について

 

といった生々しく濃いテーマが並んでいました。

総会に参加して分かりましたが、このマンションでは大規模修繕工事をめぐって大揉めに揉めて工事が数年間滞っているとの事でした。原因は、管理会社からの紹介の業者の見積もりが非常に高く、準備されている積立金で賄いきれないとの事で、建設関係の住民の知人業者に相見積もりを取ったところかなり安くできるということが判明。しかし、様々な思惑が絡んで別の住民が連れてきた第3の業者も入り乱れ、不信感が頂点になり管理会社を変えるという事態にまで発展している状態でした。

総会後半では管理会社の担当者は半ばやけくそな感じで、ついに3派のボス格の方々で自身の席で立ち上がってののしり合うところまで紛糾し、そのまま閉会となりました。なんとも、おそろしい経験をしました。外観からは同じように見えている中古マンションなのに、中のコミュニティの状況は天と地でした。要因は様々な要素によるものと思われますが、1軒目のマンションはなんと言っても理事長さんが建設のプロであったという事、そういう理事長さんが長年メンテナンスについても目を光らせてきたという事が大きいと思います。ということは「ののしり合い」は別としても、2軒目のようなケースの方がむしろスタンダードなのかもしれません。持ちまわりで巡ってきた2軒目のマンションの理事長さんが気の毒でなりませんでした。

 

↑管理組合の総会は全体に高齢の方が集まる傾向が

 

管理”状況”いろいろ

 

かくして、2軒目にして大きく状況の違うマンションに遭遇し、所有者のストレスや経済的負担ががどのように違うのか?を体験することになりました。新築マンションを購入する時に未来のことは分からないのですが、中古マンションを購入する場合はそれぞれの物件にこういった ”状況” みたいなものがあるのだという事は認識しておくべきと強く思ったのです。リノベーショ工事後、しばらくモデルルームとして活用・検証の後にどなたかに買っていただいて生活してもらう訳ですから、いったん所有者(の担当者)になった事でお伝えすべき事(状況・対策)が分かった事は大変収穫であったと思いました。

2軒のマンションの管理人さんはそれぞれ異なる環境でお仕事をされていますが、住民にとってはよそのマンションはどうしているのか?的な情報は管理会社の担当者よりもずっとたくさん持っていらっしゃるようでした。一緒に休憩していると、おふたりで「お宅はどうだった?」と情報交換を毎日のようにされていましたから。管理会社と理事会の板挟みとなることもしばしばですから、独自の情報収集は必須スキルだと思いました。なかなか奥の深いお仕事です。

 

社長の会社では、マンションの買い取り再販リノベーションをされたことありますか?その際に、建物の中での管理組合やコミュニティで起こっている事を把握されていますか?

 

 

管理人さんと、悲喜こもごも(その3)につづく

 

 

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