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優秀な人が採れれば、会社は変わるのか。答えはNO。その前にやるべきことがある。

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

海外からの観光客でごった返す夏の東京。
「なんとしても事業を大きくしたい」と相談に来られたU社長は、汗を拭きながら書類を取り出しました。
 
システム開発事業の概要と課題が書かれています。
その課題の多くは、人に関してのものです。「人がいない」「人が育たない」。
 
課題に、「人」を挙げる社長は、大概、自社の本当の問題を取り違えているものです。私は、訊きました。「どのような人がいれば良いのですか?」
 
U社長は、答えました。「優秀な人です。」
この答えで、間違いが確定しました。


採用で最も重要なのは、『欲しい人』を明確にすることです。
 
採用は、マーケティングとは良く言ったものです。顧客のイメージを明確に描きます。そして、その人がどんな思考でどのように動くのかを予測し、広告媒体の選定やキャッチコピーづくりを行います。
 
それと同様に、採用も、欲しい人材のイメージを固め、そして、届く媒体とコピーを選ぶことになります。
 
これを聞くと当たり前のことと思えるかもしれません。
しかし、間違えている会社は、実に多いのです。


 
設備工事業のI社長は、「優秀な施工管理者が欲しい」と言っていました。しかし、ホームページのトップには、工場の配管とそこで作業をする社員が映った写真が使われています。そのため、作業員(体を使うことが得意な人)ばかりを集めていたのです。
 
ユニフォーム業M社の営業担当を求める媒体には、「にこりと笑いユニフォームを手渡す営業担当」の写真が使われています。しかし、その時のM社は、「ユニフォームを管理するサービス」を展開していました。そのため、求めるのは「ロジックに商談を進める営業担当」です。欲しいのは、人の良さでなく、BtoBの商談向きの人材なのです。
 
これらの間違いは、「自社がどのような人材を求めるのか」が明確にイメージ出来ていないことが原因です。正確に表現すれば、「この先の自社に、どのような人材が必要になるのか」となります。
 
「この先、このような事業を展開していく。だから、こういう人材が欲しい」なのです。「この先」を明確に描く必要があります。『この先の事業に必要な人』を入れていくことで、変革を加速させるのです。
 
今までの事業のイメージに引っ張られてはいけません。「この先」が違うなら、がらりと変える必要があります。そして、それをしっかり伝える必要があります。社員やWEB製作会社、広告媒体の担当者、にです。
 
もし彼らから出されたものが、異なる場合には、作り直しを指示します。そして、再度、こちらのイメージを伝えます。絶対に譲ることはありません。
 
求人担当の社員は、いままでと同様の求人媒体を選びます。そして、同様の文章をその窓口の人に渡します。WEB製作会社は、自分が持つその会社の事業イメージで素材を選んでくれます。それは、『過去』の自社のイメージなのです。
その結果、『いままでと同様』の人が、集まることになります。
 
いままでと同様の人を採用し、更に「過去の事業」を強めることになります。それは、『設備工事会社』や『ユニフォームを配達する会社』というものです。
その結果、会社の変革は、遅々として進まないことになります。


いままでのU社の事業は、典型的な受託型のシステム開発でした。この時、年商3億円、社員数20名です。
 
「相手合わせ」、「クリエイティヴ」、そして、「単発の売上げ」と、年商数億ビジネスの条件を完全に満たしていました。その結果、U社長と一部の優秀な社員だけが超多忙という状態に陥っていたのです。
 
U社長は、言いました。「優秀な人材さえいれば、当社はもっと大きくなれるはずです。」
提出された書類には、「人が採れない」、「人が育たない」、「退職率が高い」と課題が書かれています。
 
私は、お聞きしました。「私の本は、読んでいただけましたか?」
U社長は、答えます。「はい、読ませていただきました。だから、ここにいます。」
自社の本当の問題がどこにあるのかは、気づいているのです。
 
絞るように言葉を出します。
「しかし、今までの10年間を否定するようで・・・」
 
半年かけて、事業モデルを作り上げました。一部の業界の人達に圧倒的に喜んでもらえる商品です。これで、展開のための準備に移ることができます。
 
そして、改めて「人」についての意見交換を行いました。
U社長は、言われました。「この商品なら、優秀な社員でなくても、十分こなせるはずです。」
 
見込客を集める仕組みもできました。このシステムを体系的に説明する資料もあります。そして、商品は一つであるため、その一つの仕組みづくりに注力できます。
 
矢田は、お尋ねしました。「どのような人材が必要ですか」
U社長は、少し考え、答えました。
「基本的な能力が有り、真面目でさえあれば、十分にこなせるはずです。」
 
U社長は、内部の仕組みづくりを進めながら、人材の採用活動を始めました。
この要件であれば、対象となる求職者は少なくないはずです。
 
あの暑い日から2年が経ちます。
U社の年商は、3億2千万円と微増しています。しかし、その内容は変わっています。受託開発の割合が6割、この一つのシステムが4割となっています。
 
「クリエイティヴ」、「相手合わせ」、「単発の売上げ」は、すべてクリアしています。
社長は、社長としての時間が作れるようになりました。また、一部の優秀な社員は、仕組みづくりや次の商品開発に向かうことができています。そして、案件は「並み」の社員がこなしています。
 
2年前のU社が抱えていた人に関する、「人が採れない」、「人が育たない」、「人が辞める」という課題は、すべて解決されたのです。
 
事業が変われば、採用を変える必要があります。
採用を変えれば、会社が変わるのです。
 
採用の本当のメリットは、ここにあります。
 
ホームページのトップ画像を変えます。工事でなく、施工管理のイメージです。
求人広告も変えます。感じの良さでなく、BtoB向きの営業担当のイメージです。
 
これは関係者へのメッセージになります。大きな影響を与えることになります。自社の社員は、「これが俺たちに求められているものか」と初めて解ります。
顧客も、「この会社は、施工管理の会社である」と、観るようになります。特に、新規顧客は、最初からそのイメージで見てくれます。その通りに当社と接するようになります。そして、それに応えるように会社は変わっていきます。
 
そして、この流れの中で、一番変わるのは、社長です。
過去のイメージに一番取りつかれているのは、実は社長なのです。一番その事業に、長く、そして、深く関わってきた分、誰よりもその過去のイメージを強く持っています。
 
そんな社長も、普段見る自社のホームページや顧客からの扱いが変わることで、芯から変わることになるのです。
 
2年経ったU社長からは、「システムの受託開発の会社」という自社のイメージは、抜けきっています。完全に、「一つの商品を展開し、さらにその分野でシェアを取りに行っている会社」に置き換わっています。
 
人の問題を抱える会社の本当の問題は、事業にあります。
事業モデルが悪いから、人の問題が表出するのです。
 
条件を満たした事業モデルを見つけることです。

 

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