売上病の社長が会社を潰す理由
当社には、毎日のように「事業は順調なはずなのに、いつもお金がない…」「自分の会社のどこに問題があるのかわからない…」「借金が思うように減っていかない…」といったご相談が寄せられます。
その上で、時折「間違った経営判断」を無防備に下してしまっている現実を目のあたりにします。
例えば、経営に前向きな社長さんほど、「攻めの投資」を積極的に行っていきます。積極的な事業投資は決して悪いものではありませんが、問題なのは、そのやり方です。
大きな投資をする際、社長自身が正しい財務を知っていて、経営判断している…のであれば良いのですが、多くの場合、「売上が増えそうだから」、「なんとなく良さそうだから」という漠然とした理由で決めてしまっています。
その経営判断が、自社の財務に及ぼす影響まで考えていなかったりするのです。
言い方を変えれば、正しい財務の知識を持っている人からすれば、「NG」でも、間違った財務の知識しか持ち合わせていない人からすれば「OK」になってしまう…これが財務の怖い部分です。
大切なことなのであえてお伝えしますが、会社が潰れてしまうのは、お金が尽きた時です。
財務を知らない社長が会社を潰してしまえば、社員や家族は社長と運命を共にするしかありません。特に、同族会社の場合、社長しか本当の意味での財務の実務を担えませんから、家族や社員さんにはどうすることもできません。本当に理不尽なことです。
だからこそ、少なくとも社長は、正しい価値判断の基準を知った上で、自社の経営の質を向上し続けなければならないのです。
たとえば、「あなたの会社の数値目標を教えてください」といわれたら、どんなものが思い浮かぶでしょうか?
一番最初に思い浮かんだのは、「売上目標」ではないでしょうか。
私のこれまでの経験上、「数値目標」といえば、ほぼ100%といってもいいぐらい「売上目標」という回答が返ってきます。
そして、「それ以外の数値目標はありますか?」と尋ねると、ほぼ例外なく「ないです…」という回答が返ってきます。
会社で決定している数値目標が「売上」しかなければ、当然会社は、「売上至上主義」に傾いていきます。社長だけでなく、社員も「売上」を基準にすべての価値判断をするようになっていきます。
給与や賞与などの人事評価制度に始まり、会社のあらゆる意思決定において、間違った判断基軸で、間違ったお金の使い方をしてしまうのです。
売上が増えていっているにも関わらず、それが「表面的」なものであれば、当然、お金は残りません。むしろ、お金は減って、借金ばかりが増えていく…まさに、負のスパイラルが待っています。
あくまでも、事業を永続させていくためには、絶対的に「お金」が必要です。
しつこいようですが、会社が潰れるのは、売上が減った時や赤字決算になった時ではなく、「お金」が尽きてしまった時です。
そして、その「お金」とは、税金や借入金返済をした後に残るものです。
具体的には、お客様からいただいた「売上」から、商品の仕入代金や社員の人件費などの「費用」を差し引き、「税金」を払って、銀行から借りたお金の「借金返済」をして、その上で残る「お金」のことです。
ですから、売上規模以上に多額の借金を背負っていれば、当然、毎月の「借金返済」は苦しくなってしまいます。それに、「売上」を上回る「費用」が発生するのであれば、「利益」も出ません。なぜなら、そもそもの構造自体に問題があるからです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは、社長として、どんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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