コロナ禍で経営者が自分に問うべき2つの質問
前回のコラムでは、コロナ禍により銀行の倒産が多発するような「超緊縮時代」ともいえる状況が来るであろうことを書きました。
いまはまだ「それほど大げさでは…」と多くの人が思うところではあると思いますが、なんといっても人間は感情の生き物です。志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなったとたん人々がコロナに対して恐れを抱いたように、これからよく知っている企業の倒産が続いていくと、世の中の消費意欲は一気に減退していきます。
消費減退→企業の業績悪化→リストラ・大量解雇→さらなる消費減退…という負のループに陥ることは避けられようもなく、一部を除いたほとんどの業界で大きな影響を受けることになるでしょう。
ポストコロナで世の中はどう変わるかということについて、多くの人がいろんな持論を展開していますが、経営者はまずシンプルな2つの問いに答えを出す必要があります。
そのまずひとつ目は、「自社の業界はどれほどの市場縮小となるか?」という点です。
いまいまはそれほど影響の出ていない業界でも、今度少なからず市場が縮小していくこととなります。なぜなら、今後はコロナの直接的な影響(=一時的な引きこもり)によるものではなく、深度の消費減退が引き起こす「景気後退」の局面に入るからです。
その減少幅は業界によって波があると思いますが、影響が大きい業界では3割から下手すれば5割、影響が小さいところでも1~2割は市場縮小を余儀なくされるでしょう。
そして、経営者が自らに問うべき2つ目の質問は、その市場縮小の局面において「自社は縮小か拡大かどちらに進むべきか?」という点です。
つまり言い換えると、自社は「コストカット」か「事業拡大」かどちらに舵を切るかをしっかり決断するということです。
「ん? そんなの両方やるでしょう」と思われた方もいるかもしれませんが、この相反することを同時にやったのでは、どちらもチマチマしたものになり、コストも大して下がらず、当然事業は伸びず…といったどっちつかずの結末にいきつく可能性が高いです。
どちらを選択するにしても、ここは全社を挙げて一気呵成に動く必要があります。
コストカットでこの市場縮小の局面を乗り越えられるのであれば、ここは思い切ってこれまで先送りしていた「無駄の排除」を徹底してやるべきでしょう。
無駄な残業はもちろん、人が余っているのであれば、まだ世の中の雇用機会が枯れていない今のうちに転職を支援するなどしてでも退職してもらい、人員のスリム化を講じる必要があります。
あるいは、無駄な営業活動、効果の薄い宣伝広告費、割高な外注費などなど、見直すべきところは聖域をつくらずカットし、できるだけ身軽になっておくことです。
ここで留意すべき点は、こういった「縮こまる」施策は、基本的には社員の心も縮こませるということです。こういうことをやりながら、「事業を革新して業績を拡大しよう!」とはなかなか気持ちが切り替えられません。
ですから、この「縮小政策」を採るべき会社は、「事業拡大の余地がない」かつ「縮小すればなんのか生き延びられそう」ということが条件となります。
この2つの条件を吟味することが非常に重要です。
まず「事業拡大の余地がないかどうか」ですが、あるなら絶対にそちらに着手すべきです。というのも、コストカットは前述のとおり社員の意識を縮こまらせます。短期に成功させてすぐに気持ちを切り替えさせられればいいですが、基本的にはコストカットばかりやっている会社は社員の心がすさんでいきますし、それが会社のカルチャとなってしまうリスクがあります。
また、「縮小すれば生き延びられそうかどうか」も大事なポイントです。コストカットをしたところで採算が合う見込みがないなら、安易な縮小政策は採るべきではありません。
先日行ったあるチェーンレストランがいい例ですが、そこではメニューが刷新されており、セットメニューを頼んでみたらえらいボリュームダウンしていました。ディナーセットとして量はまったく足りないわ、見た目もしょぼいわと、非常に残念な状況になっていました。しかも20組はゆうに座れそうなスペースに客は2組だけです。
このような安易なコストカットは必ず事業を駄目にします。それは顧客の不満足を引き起こすだけでなく、そこで働く従業員の情熱も完全に奪ってしまうことになります。
顧客も社員もがっかりさせたあげく黒字確保もできないような縮小政策を採って「やるべきことはやった…」というのは完全に経営者の自己満足です。前回のコラムでも書きましたが、自社の都合ばかり考えていたのでは結局顧客のニーズを捉えることができずに市場撤退を余儀なくされるでしょう。
「この状況でうちの事業を拡大させる切り口など、ありそうにない…」と決めつける前に、現状維持、あるいはコストカットによる縮小路線で本当に生き延びることができるのか、今一度真剣に考えてみてください。新しい時代に合った新しい顧客貢献の仕方はきっとあります。こういう時代が動くときほどチャンスなのです。
当社では、新しい「顧客の困りごと」や「潜在的ニーズ」を解決するユニークな事業の構築を今度もご支援していきます。
こういう局面こそやる気が出る! 奮起する! うちの出番だ!と思われる経営者の方、ぜひ共に世の中を変える特別ビジネスをつくっていきましょう。
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