アフターコロナ、社長が知っておくべき地方企業活性化のために必要な条件―マーケティングは科学である―
ラジオの生放送風景。「情報発信」実践中。
地方で多くの中小企業を顧客として仕事をしていますと、「経済」の基本構造というものが、或る意味よく理解できます。
大都市圏のように、業種も多種多様で国際取引なども複雑に絡んだ経済状況の中ではなかなか見えにくいものも、地方であれば、「地域経済」という割とコンパクトな構造で出来上がっているため分かりやすいのです。
そういった環境の中で私が掴んだ「地域経済」というものは、次の3つの要素から成り立っている、ということになります。
それは、「人口」と「購買力」と「購買意欲」です。
まず、「人口」というのは「量」の問題です。
この「人口」という「量」が少ない状態では、経済は基本的に活発にもならなければ発展もしません。地方が衰退した最も大きな要因は、いうまでもなく「過疎化」のプロセスの中で「人口」が減少したからにほかならないのです。
次に「購買力」というのは、分かりやすく言えば「収入」のことです。
売上にしろ給料にしろその絶対額が少なければ、可処分所得は低くならざるを得ず、「購買力」が低いのは自明の理です。近年特に、都市部との所得格差が広がり、地方の「購買力」はますます下がっているのが現状なのです。
これも人口とは違った意味で「量」の問題といえましょう。
最後に「購買意欲」というのは「質」の問題ということになります。
仮に所得が高くても「購買意欲」がなければ消費にはつながりません。ただ、そもそも所得が低ければ使えるお金にも限度がありますので、自然と「購買意欲」は減退せざるを得ないのです。さらに、地方の場合、過疎化に伴って高齢化率もどんどん上がっています。
高齢者は普通、若い人に比べてモノを欲しがりませんので、総体的に購買意欲も低いということになるのです。
「人口」が多く一人一人が「購買力」もあって「購買意欲」が高ければ、その集合体としての地方或いは国といったものは、全体として経済的に発展するでしょう。
しかし、日本の場合、その3者すべてが低くなっているために、いつまでも経済的低迷を余儀なくされているのです。
中でも、日本の地方においては、「人口減」が既に昭和の時代から続いていたために、経済的な低迷状況はかなり継続的な現象になっていると捉える必要があります。
さてここまで、経済活性化の要因が、「人口、購買力、購買意欲」の3つであると述べてきました。それでは今、これらのすべてが失われた日本の地方において、復活のきっかけというものはないのでしょうか。地方活性化のための、何か有効な手立てというものは存在しないのでしょうか。
ただこれは、経済を俯瞰的に見たときの話であり、統計的な分析によるものです。
個々の事業を営んでいる側から見れば、また違った風景が見えてきます。
というのは、これまでの時代と異なり、事業者側にも事業を発展させる上での「戦略的手段」の選択肢が格段に増えてきたからです。
さてそれでは、その「戦略的手段」には、どういったものが考えられるでしょうか。どういった打ち手があるのでしょうか。
例えば、人口減というのは主に地方のエリア内の問題です。したがって、このエリアという限定的な枠組みを捨て去ればいいことになります。
つまり、従来の「商圏」という設定を取り払ってしまうのです。
そのためにはネットビジネスの世界への進出という、一歩踏み出した行動を決断する必要があります。
このエリアを取っ払って発想するというのは、私がこれまで度々触れてきたところの「地縁血縁義理人情ビジネスモデル」をベースに商売を進めてきた地方の経営者には、なかなか受け入れがたいかも知れません。
しかし、これこそが以前には全く選択肢にあがってこなかった新しい「戦略的手段」なのです。
こういった「戦略的手段」というのは、きちんと考えればほかにも様々あるといっていいでしょう。極めて悪条件下となった地方の経済事情においては、こういった新しい「戦略的手段」というものを考えて行く必要があるのです。
また、地方の活性化の一つの手段として「地産地消」ということがよく言われます。これは、地域で取れた食材や産物はできるだけその地域で消費して地域経済の活性化に貢献しよう、というほどの意味で使われている言葉だと思います。しかしながら、それだけで地方の活性化につながるとは思えません。
もう一歩踏み込んで、地域の特産物などを地域で消費しながら、全国に通じるような力を持った商品にまで育て上げる、といったチャレンジが必要だと考えられます。
単に地産地消するのではなく、その試みそのものを高度な商品開発にまで発展させるのです。
そうやって開発された商品は、先述のエリアを超えたマーケットに近代的な流通手段等を使って届けることになります。
つまり、伝統的な従来の産品や商材に新しいコンセプトを加えて、付加価値の高い商材に育て上げ、それを流通まで含めてパッケージ化することにより、新たなビジネスにつなげていくのです。
こういった地道な努力を繰り返していけば、やがて地方の活性化が実現していくのではないでしょうか。
こういった一連の試みの最も基本となるのが「マーケティング」ということになります。
どういったものがマーケットに支持され、どういった売り方をすれば利便性が高いのかといったことを、今後は戦略的に考えていかなければなりません。
そういう意味でマーケティングは科学といえます。
市場を分析し、市場に支持されるにはどうすればいいのか、を客観的に深く考察しその欲求に沿った戦略を実行していく必要があります。
また、そのプロセスにおいて必ず必要になるのが「情報発信」ということになります。
地理的には不利といえる地方の商材を、都会という大きなマーケットに届けるためには、事前に十分な情報を知らしめておく必要があります。そういった情報が届いていてこそ、初めてリアルな経済的な取引につながるのです。
日本における中小企業の経営は、これから益々難しくなりつつあります。中でも、地方のそれは、商売を維持するための諸条件が崩壊寸前に至っているだけにより難しくなっているのです。
この状況を打破するためには、改めてマーケットを見直して魅力ある商材を開発し、近代的なテクノロジーを駆使してその新しく広いマーケットに届けていく、といった大胆かつチャレンジングな試みを次々と仕掛けていくしかありません。
簡単な挑戦ではありませんが、やりがいがあることも確かです。地方の中小企業の経営者の皆さんが果敢にチャレンジすることを望んでやみません。
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