あのバスはなぜ乗客を置いて行ってしまったのか
知り合いに聞いた話です。ある日、路線バスがバス停に留まり、乗客を降ろした後、右のウィンカーを出して車両を動かしかけたとき、高齢の女性がバスに乗ろうと停留所を目指して走ってきました。手を振って運転手に合図をするのですが、運転手は気づかずにか、あえて無視したのか、詳細は定かでないものの、発進してしまった。それを見ていた私の知り合いは、バス会社に電話をして「○○路線の○時○分のバスが高齢者の合図を振り切って行ってしまった。どういうことか」とクレームを言ったそうです。当然ながら、バス会社は「教育を徹底します」と答えたそう。
なんだか小学校の道徳の教科書に出てきそうなお話しですが、もし運転手が「あえて無視した」ということであると、根深い問題がありそうです。道徳的には、運転手のモラルが低い云々という話になりますが、普通に考えると、乗客が手を振って走ってくる姿はバックミラーやルームミラーで見えていたと考えられます。ただそれが結構ぎりぎりの見え方で、無視してもオトガメなしという判断を運転手がしたとしたら……。
この微妙な瞬時の判断をお客さんの側に立ってするのか、自分の都合に立ってするのかはその人自身のモラルのレベルにもよるのですが、もう一つ見落とせないのは、その人が会社でどれだけ大切にされているか、という点です。言いたいことが言えるとか、聞いてもらえるとか、納得いく説明があるとか、そういうレベルの「大切にされているか」です。
ほぼすべての会社が、表現に違いはあれ「顧客満足の追求」を掲げます。人の感情はそんなに物事をさっぱり割り切りませんから、顧客を満足させるよう社員に期待するなら、まず社員自身を満足させるよう仕掛ける必要があります。誰かに親切にされた人は、顧客であれ誰であれ他人に対して親切になるというのは生物学的に仕組まれた構造と言われます。
社員満足というと待遇面にばかり目にいって二の足を踏む傾向がありますが、実は経済的な側面の満足は長続きしないということも証明されています。長続きするのは、もっと形のない満足。たとえばストレスのない環境で仕事ができるとか、成果が正当に評価されるとか、仲間のサポートが得られるといった側面です。
さて、知り合いの話に戻ります。何かのきっかけでこのバス会社の運転手が休憩しているところに出くわしました。そこで聞こえてきたのは会社に対する大いなる不満の数々。先日のバス発車事件を思い出して、腑に落ちたそうです。
弊社が提唱するES-CSチェーンは、業績に貢献する顧客満足を、社員満足の側面からサポートしていくプログラムです。興味をお持ちいただけましたら是非お声がけください。
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