グリーンファイナンスのメリットとは
CO2排出量を減らす取り組みなどに資金を供給することで、最近各方面で注目されるようになってきたグリーンファイナンスですが、世間一般ではまだまだ認知度が高いとは言えない状況だと思います。2017年に環境省が定めたグリーンボンド発行ガイドラインでは、発行体の目論見書にセカンドパーティが意見書をつけることでスキームの信頼性を担保する仕組みが求められています。意見書を書いてもらうためには当然コストがかかります。
今のところ、政府による補助金などを活用することができれば、ある程度のコスト増は吸収できるようですが、伝統的な財務面の評価において明らかな優位性~たとえば利率が下がる、といった~が生じる仕組みにはなっていません。それでもグリーンファイナンス市場では、自治体や大手企業による発行(借入による資金調達)が相次いでいるのです。それは一体どうしてなのでしょうか?
ひとつには資本市場において、借り手側の非財務情報がこれまで以上に重要視されるようになったということがあると思います。グリーンファイナンスによる資金調達は、環境に良い仕事をしていることの間接的な証明を得ることと同義に捉えられており、昨今注目されるSDGsとの親和性も高いことから、企業の社会的な信用度を高める効果があると考えられます。この社会的信用度は、資金提供を行う金融機関にも波及的に歓迎されており、現在日本では年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が積極的にグリーンファイナンス市場への資金提供を行っています。
残念ながらもうずいぶん日本はカネ余りの状態が続いており、円滑な資金供給だけでは強いメリットになりにくい市場環境なのですが、クラウドファンディングなどの新しい市場が充実して行く流れの中で、グリーンファイナンスの考え方も今後確実に広まってゆくものと思われます。
一つの例を挙げると、世の中には風俗産業やギャンブルなど、必ずしも社会的評価が高くない事業で財を成した人たちがいて、そういう方々が潜在的に求めている社会的評価とグリーンファイナンスはごく近しいところに位置すると考えられます。今仮に、グリーンな投融資に資金を提供することを評価する社会的なクレジットが客観性のある形で提供されるとすると、その分だけ利率が低くても資金を提供したい、その代り社会的評価がほしいという事業家は必ず存在するだろうと思われるからです。
そういった資金スキームを金融機関と一緒になって作ってゆくことで、社会全体がグリーンファイナンスのメリットを享受できるような仕組みが出来上がると、日本の資金市場も確実にそのすそ野が広がってゆくことになるでしょう。
環境ビジネスの経営者にとっても、ファイナンスの面で新しい可能性が広がる好機なのです。グリーンファイナンスの今後にぜひ注目していただきたいものだと思います。
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