経営者の採用方針。鶏が先か、卵が先か。
「事業は人なりというように、やはり採用活動は重要ですね」
ある社長と採用に関してお話をしました。
企業を存続させるために、利益(=売上-費用)をどのように確保するのか。そのための人材をどのように確保・育成するのか。社長の悩みは尽きません。その入り口が『採用』です。自社に必要な人材をいかに確保するのか。経営の最重要課題です。
「先月の退職者に続き、今度は内定式直前の辞退。人事部門と連携し、慎重にフォローしていたつもりですが、なんとも悔しい限りです。今回はいけると思っていたのですが…」
社長向けの相談会では、このような悩みもよくお聞きします。
多くの場合、中小企業は大手企業よりも人員の余裕がありません。得意先からの受注が増え、製造設備を増強。ようやく育ってきた現場リーダーに期待したものの、想定外の退職。もともとギリギリの人員で運営していたため、次世代社員の育成もままならず…といった状況です。
製造業、卸売業、サービス業など、業界はそれぞれですが、同様な悩みを持つ企業様も少なくありません。
即戦力の中途採用に注力するのか、将来に期待し新卒採用に注力するのか。
そもそも採用に注力するのか、既存人材の育成に注力するのか。
どちらを選んでも、選択した意図があります。
鶏が先か、卵が先か。因果性のジレンマ。経営者としてどちらを優先していくのか。御社は、今後どちらに注力していきますか。
【 新卒採用に注力する場合 】
例えば、採用コンサルティング会社を利用する企業も多いことでしょう。大手とは異なる魅力をどのように打ち出すのか。どのようなチャネルを使うのか。経営者自身が前面にでて、学生に思いを伝えます。「どのような考えで経営をしているのか。」「職場環境は十分ではないが、新人でも活躍できる場がある。ともに成長しよう。」というメッセージを伝えるのではないでしょうか。
【 中途採用に注力する場合 】
例えば、人材紹介会社(ヘッドハンティング会社)を利用する企業も多いことでしょう。どのようなチャネルを使い、自社に必要な人材にどのように振り向いてもらうのか。金銭面や活躍する場の提供など、処遇はどうするのか。経営者の思いを直接伝えるます。そして、既存社員の納得度をどのように確保するのかも配慮するのではないでしょうか。
どちらの選択が、御社にとって最良と言えるのでしょうか。
【 育成に注力する場合 】
どれだけ採用に力を入れても、人材が育ち定着しなければ意味がありません。まずは、既存社員の育成に注力すべきだと考えるケースです。例えば、教育体系を見直し、人材育成に注力する企業も多いことでしょう。
精神論重視の社長や理論重視の社長がいます。Off-JTにOJT(※1)。階層別にテーマ別、選抜研修も必要です。OJTの場合は指導員の育成も必要です。その一方で自己啓発の支援もしなければ…。ただし、予算は限られている。5年、10年と中長期的な計画で導入するしかない…という状況でしょうか。
【 採用に注力する場合 】
どれだけ育成に力を入れても、既存社員にそもそものポテンシャルがなければ伸びしろは知れている。(既存の社員には大きな声で言えないが)やはり、採用に注力すべきだ。育成に疲れ、諦め、改めて採用に注力する企業も多いことでしょう。
どちらの選択が、御社にとって最良と言えるのでしょうか。
中小企業の場合、いずれの選択も、経営者が自ら関わらなければ、成功することは難しいものです。この点は、言うまでもありません。それでは、経営者が自ら関わった場合、どのような選択が最良といえるのでしょうか。
実は、次の特徴が見られる場合、その選択は誤っている確率が高いものです。
それは「採用や育成は『投資』である」といいながら、実際は『投機』になっているケースです。
「去年の採用は当たった(外れた)。今年の採用は当たるかな」など、原因ではなく結果に注力している場合です。「去年はダイバーシティ研修。今年は生産性向上研修」など、本質的なテーマではなく、流行のテーマに注力。偶然当たるケースもあるが、勝率にはバラつきがある。中長期的に勝ち続けることはできない。といった状況です。やがて、組織は混沌としてくるでしょう。
このような社長は、<投機に盲信し偶然を呆然に変える迷経営者>と言えます。
それでは、どのような経営者が成功を手にするのか。
それは「採用や育成は『投資』である」といいながら、実際は仕組みづくりに『投資』をしているケースです。
企業の土壌を改良する仕組みづくり。企業文化を育み、採用力や育成力が高まる仕組み。この仕組みづくりに投資をしている。優秀な人材が集まり、社員が自ら次の世代を育成する。このような仕組みを、一人ひとりの社員が進化・成長しながら構築する。鶏が先か、卵が先か、と悩んでいる場合ではありません。鶏も卵も同時に確保し、同時に育てる仕組みを考えています。すぐに成果が出る保障はありません。しかし、偶然の成功も失敗も、次につながるフィードバックと認識しています。勝っても、負けても一試合毎に強くなる仕組み。成功する確率を上げる仕組み。ここに注力し、継続して投資をしているのです。
このような社長は、<投資を決断し偶然を必然に変える名経営者>と言えます。
『投機』は、欲にまみれた迷経営者が資金を投じる機会(=ワナ)である。
『投資』は、意思を持つ名経営者が資金を投じる資本(=コツ)である。
今後、御社はどのような投資を考えていきますか。そして、実際にどのような投資をし、自社の将来をよりよいものにしていきますか。
※弊社は、投資の一つとして「業績3年 先行管理 の仕組みづくり」を提供しております。仕組みづくりに興味がある経営者様は、ぜひセミナーにご参加ください。
※1:Off-JT:Off The Job Training の略称。通常の業務を一時的に離れて行う教育訓練(研修・講演会など)のこと。
OJT:On The Job Training 略称。通常の業務を通じて行う教育訓練(指導、報告・連絡・相談など)のこと。
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