なぜ、言葉1つで売上がアップもすれば、ダウンもするのか?
「何とも情けない。
任せないと、やる気をなくすのではないか、成長しないのではないかとか、自分の子供だからと、余計に気を遣って距離を置こうとしたけれど、ダメなものはダメといわなきゃね。たった一年で、こんなに既存客数が減っているとは。
商品に自信があるから、お客様を引きつける自信があったけれど、だれど、耕さなければ、お客様との関係は生きてこないのよ。
朝から夕方まで会社にいるから仕事してます、と思っているんでしょう。でもね、お客様の気持ちを聞いてないなら、それは仕事じゃないのよ。」
決算の数字をお知らせすると、「う~んーーー拙い!」と唸りだした社長さん。
「う~ん、消費税納税額が少なすぎる。
つまり、お客さんのために仕事をしてないということよね、あの子たちは。自分たちのために経費を使っている。」
社長は、一営業地区を、子息の担当としていました。
その地区は、もともと社長が自ら担当した思い入れのあるエリアです。
一軒一軒、扉をたたいて営業活動をした地域です。
社長にとっては古くから絆の深いお客様が多くいます。
この地域を、自分の子息の担当としようと決めた時、お客様にあるお願いをしました。
お願いは、「自分の子息に任せるが、どうか何でも指摘してほしい。」
お客様からは、
「大丈夫だよ、社長の子息だから。それより、あまり口を出さない方がいいよ、やる気をなくしちゃうからね。」と助言をいただきました。
確かにそうかもしれない、言いすぎてはいけない、そう心に決めました。
報告を受けるとき、何か問題はないか?と聞きました。
最初の3ヶ月、返ってくる答えは1つ。
「まあ、まあ、やっています。」
次の3ヶ月、どうも数字が上がらないから、どうなのかと口火を切ると
「年齢が上の人達の売上がのびない。客層の変化かと思うので、新規を伸ばしたい」
そうか、自分で獲得したお客様の売上を伸ばしたいんだろう、応援するよと伝えました。
次の3ヶ月、売上は上がらないどころか、ダウンのし始めました。
子息に預けたチームの中で、トップの売上成績を上げていた社員の売上が、急激に減少し出していました。
そんな折、古くからのお客様から、社長にあてた直々の手紙が届きました。
「永いことお世話になってありがとう。高齢になって今後のことを考え、住まいを変える決断をしました。遠方の子供の近くへ引っ越します。ここで取引もお仕舞いにします。」
少子高齢化は、時代の流れ。
確かに子息のチームに預けたお客様達は年齢層が高い。
この層のお客様が次第に減少するのは、当然かもしれない。
しかし、だとすれば、他のチームも皆売上が下がっていく?
そうではない。
子息に預けたチームの売上は下がっているけれど、他チームは伸びている!
“古くから”社長の顧客だったお客様の年齢層は確かに着実に上がります。
問題なのは、そのお客様に、商品が販売できていないこと。
さらに問題なのは、そのお客様から、知人を紹介すると言ってもらえないこと。
そこで、社長はお手紙を頂いたお客様の処に足を運びました。
「永いことお取引を頂きありがとうございました。」と頭を下げた後、
対応のまずさがあったのだろうと、取引を止める本当の理由を聞きました。
「私の取引金額は少額です。
だから、あまり気にかけてくれないな~と感じていました。
いえね、返品だったから、小さなお礼のつもりで、手仕事の折り紙を入れたのですが、何にも答えがなかった。」
お金の事務的な処理はしてくれたが、折り紙には反応がなかった。
商売に関係ないけれど、社長は折り紙を渡すと嬉しそうに孫に渡したら喜んだとか、以前渡した折り紙をしおりに使っているとか関心を示したが、今の御社は、返事がない。
地域事務所に戻り、積まれていた返品の箱、控え伝票のファイルを見返しました。
すぐに、そのお客様からの封筒が見つかりました。
封筒の中には、綺麗に折られた折り紙とお客様からの一言便せんが見つかりました。
見ていなかった…。
“古くから”は、年齢層の高い顧客で、今後売上の伸びのない層だ。
新しい顧客開拓と、自分と同年齢の友人達に連絡を取っていた。
子息は、お客様の特性、統計的特性に目を奪われていました。
居住地域、経済的収入の層、年齢、…。
見込客の客層です。
売上のほしい社長の子息は、回り道をしたくなかった。
早く売上を上げたい!
客数を、しかも当社の商品にお金を使う顧客層をとるべきだ。
もっと売上を上げたい、社長に評価されたい、だから新規を増やしたい!
子息の思い描いた理想の販売計画です。
しかし、この計画には穴がありました。
“古くから”を年齢層の高いお客様と定義していたのです。
“古くから”を購入期間の長い、弊社にカスタマーロイヤリティーを持つお客様と定義する社長と、反対のフォロー体制をとったのです。
購入期間が長いお客様は、会社に取ってとても大事な存在です。
何よりもありがたいのは、商品単価の高い低いで購入を決めないお客様達だからです。
安いから、あっちへ行こうはしないのです。
当社の商品への信頼がある、当社の文化と馴染みのイイ、当社を人に勧めてくれる、ありがたいお客様層です。
定期的に、一定の購入を習慣として行ってくれるお客様なのです。
商品購入を、定期的に、一定の購入を習慣として行ってくれると、どうなるか?
会社の収益は安定します。
一定の収益が継続して入ることが、予想できます。
来月の収入の予想がつけば、人も雇える。
来月収入の予想が立てば、投資もできる。
何より、社長のあたまの中が、平安で、楽~~~~に、なります。
年齢層によって、購入商品の傾向が変わる。
お客様特性を掴むために、統計的特性は有効です。
特に取引期間が長い既存客にこの特性を見極めた提案をするのは有効対策です。
会社との絆が深くなっているお客様に、お客様のことをよく知っている提案、
「あ~っ、私のことをよく分かってくれている」提案は、受け入れられます。
お客様は、「私」のこと知ってほしいのです。
実は、この『「私」のこと知ってほしい』は、新規獲得に直結しているのです。
「あ~っ、私のことをよく分かってくれている」は、お客様購入事例です。
取引期間の長い既存のお客様が、新規のお客様に話しかけてくれます。
“古くから”を、社長のシンパで、オレのシンパではない、と定義したら、それは売上ダウンへ大きく舵を切ります。
“古くから”を既存優良顧客と定義すると、売上を伸ばす足がかり手がかりを得ます。
売上アップは、みんなの願いです。
我が社の売上アップに、新規顧客拡大は欠かせません。
新規顧客拡大定着に必要なのは、まず、既存顧客をよく知ること、です。
ピータードラッガーは、
「ビジネスの目的は、顧客を創造しそれを維持すること。」と定義しました。
さあ、あなたは、お客様をどう定義しますか?
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