成長する企業の社長は知っている、今、最も必要な若手育成の重要視点
先日のセミナーでお伝えして反響があった一つが、職場でのメンタル不調者が1名出て休職した場合、企業が負担する費用のシミュレーションでした。休職者へ支払う給与だけではなく、マイナス1名となった現場の負担や、直属上司や人事担当者のフォローなどの業務を費用として換算すると、実は驚きの数字が出てきます。
「自社では、メンタル不調者は1、2名だからまだまだ良い方だ」などと楽観している場合ではないのです。
実際に、中間管理職の現場の声でよく耳にするのが、仕事への取り組み方やスキルを教えるという以前に、社会人としての在り方や基本が身についておらず、まるで家庭で行う「しつけ」を会社で行っているようだとか、まるで管理職が親代わりまでやらざるを得ないなどの生々しい悲痛な叫びです。
今、良くも悪くも、現場の管理職は、若手社員の心を育てることも担わなくてはならない状況になっているのです。これでは、自ら考えて自ら行動する自律した人財を育てるには、相当な労力と時間がかかると言わざるを得ません。
しかも、管理職自身が、若手育成に時間を取られてしまい、本来行うべき仕事に取り掛かる時間が少ない、あるいはもっと深刻で、管理職の疲弊を生み、自らがメンタル不調予備軍となってしまっているという現実もあります。
さらに問題なのは、このような若手社員と管理職の抱える問題を、経営陣が「個々人の問題」として捉えてしまうということです。つまり、その若手社員の性格や能力の問題であり、その管理者本人の管理不足であると認識してしまっているとことです。
その結果、疲弊した社員が休職してしまうという悪循環を生み出しており、それに伴うコストを全く無視したまま、対処療法が繰り返されているのが現実なのです。
一方で、メンタル不調者を出さないばかりか、若手社員の心育てに対し、組織として積極的に取り組み成功している企業もあります。
そもそも、職場においてメンタル不調になるのを和らげる要因として最も重要なのは、「上司や同僚からのサポート」なのです。ですが、これまでお伝えしてきたように、仕事を覚え、独り立ちできるための仕事上のサポートだけでは、現状の問題解決にはなり得ません。
心を育むサポートが必要だからです。これがまさに相手の「自己効力感」を育めるようサポートするということです。自己効力感とは、カナダ人の心理学者アルバート・バンデューラが提唱したもので、「自分は出来る、大丈夫、上手く乗り越えられる」というセルフイメージを持つことでもあります。
自己効力感を育むには自らが出来ることと、他者からのサポートなどで得られる方法があります。そして、他者からのサポートというのは、まさに職場で管理職が部下に対して出来るサポートでもあります。
仕事を教える、指導するだけではなく、意識的に継続的に部下の心を育てる関わり方をするのです。部下の方も、しだいに「自分は出来る」という自己効力感を培うことが出来、心が折れそうになったら助言を求められる信頼できる上司がいると確信できるようになると、自信を取り戻し、責任ある仕事にも果敢に挑戦できるようになるのです。
さて、ここまでの取り組みは人財育成に熱心な企業では、すでに実施していることでもありますが、さらに、メンタル不調予防と若手の育成を、該当する個々人の問題ではなく、組織全体の課題として認識している経営者になると、これらを職場に仕組みとして導入しようとします。
現場の管理職のやる気に一任したり、若手育成を上手な管理職とそうでない管理職との間で差が生まれないよう、ツールを利用したり、制度を導入したりと様々な、仕組みとして活かす工夫を行っているのです。そして、仕組みを継続することにより、次世代にも引き継がれ、会社の貴重な財産として残っていくのです。
さて、御社は、自己効力感を育む若手育成を、組織として上手に行っていますか。仕組み化して財産に残していますか。
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