自社の顧客像を説明できますか?
今回のコラムからは飲食、サービス、小売店舗の「経営」を考えていきたいと思います。ここでいう「経営」とは、自社の目的達成のために必要な経営資源(ヒトモノカネ情報)を集め、使い、新たな価値を生み出し、配分し、成長させる意思決定と実践のことです。
この「経営」の意味から当然の帰結として、店舗ビジネスをはじめすべての企業にはそこに「目的」が必要になってきます。その目的は、経済学的に言えば利潤の追求ということになりますが、実際にはそこまで短絡的な考えだと、すぐに退場させられます。
私の考えでは、企業の目的は「誰か」の役に立つこと、困っている「誰か」の問題を解決することであり、それ以外にはありません。世の中にある企業は、その「誰か」の問題解決のために、何を提供するのか、またどういうやり方で提供するのかということで競合しあうのです。
そこでまず大事になるのは、その「誰か」が【一体誰なのか】です。その困っている「顧客は誰か」ということです。
店舗ビジネスの経営では、まず自社の「顧客は誰か」をしっかりと緻密に考え、明文化し、共有しておくことが求められます。当たり前の話になりますが、世の中の全ての人に対して自社のモノやサービスを提供し、なおかつその役に立つことは土台無理な話です。
誰に対してのサービスなのかがわからないと、どんなにいいサービスであっても誰にも知られずに終わってしまうでしょう。実際に使ってほしい人にも当然伝わらず、せっかくつくりあげたものがすべて無に帰してしまうのです。
「誰か」ということを考えず、いきなり商品をつくってしまう企業も多いでしょう(まず失敗します)。世間で流行っているから、という理由で他社の商品を模倣することもあるかと思います(そこそこ上手くいくときもありますが、すぐに廃れます)。それが良い悪いとはいいませんが、継続した経営をおこなっていくには、自社の顧客像をベースに自社独自の強みを持たなければならないのです。
誰の悩みを解決するのか。誰の役に立ちたいのか。細かく分析しだせばキリがないのですが、年齢、性別や居住地などのデモグラフィック要因はもとより、好みやライフスタイルも考慮すべきです。そして当たり前ですが、その悩み、お困りごともそれらと結びついていること。
マーケティングではこの顧客像を「ペルソナ」と言っていますが、あまり小難しく考えずに、純粋にどういうお客様に利用してほしいのかを掘り下げていくことが重要です。
「こんな悩みを持つこんな人」あるいは「こういうことを求めているこういう人」をはっきりと打ち出すことで、それらが何もなかった時と比較すると、店舗への反応は雲泥の差となります。誰に向かって発信するかが明確になるため、ずばりその客層に訴えかけるのです。
有名な例としてはスープストック東京が挙げられます。同社は「秋野つゆ」という顧客像を設定し、活用することで成功を収めています。秋野つゆは37歳女性、都心で働くキャリアウーマン、装飾性よりも機能性重視、フォアグラよりもレバーが好き、平泳ぎでなくクロールで泳ぐなど細かな属性がつけられ、それに基づいた店舗、商品開発がされています。
この例のように自社の顧客像をはっきりとさせることで、店舗が提供するモノやサービスと顧客自身の欲求とのズレがほとんどなくなるため、当然ながらお客様の満足度も向上し、リピーターになり、上顧客として顧客生涯価値(LTV)も向上します。
しかし残念ながら、中小零細企業でそこまで考えてやっているところはほとんどないと言えます。特に飲食店は「自分がやりたい店」で「自分が作りたい商品」を扱い、市場の動きとは裏腹な状況を招いてしまいます。そして早ければ1年もたずに廃業の道を辿ります。
店舗経営者の方は、こういうことにならないようにしっかりと顧客像を設定することが責務となります。店の色が見えることで、お客様も来店しやすく、選ばれる店になります。「独りよがりの店」や「何でもある店」は結局誰からも選ばれないのです。
さて、経営者の皆さん。
あなたの店は誰の悩みを解決するために存在していますか?
その顧客像は社内の全員が理解していますか?
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