「チェーン経営の日常データから失敗を発見する」
「チラシ削減も視野に入れて、生産性を上げようと思ってるのですが、どうも売上が厳しくて・・・」
セミナーにご参加いただき 個別相談でお越しになった経営者からのご相談です。
小売りチェーンの「生産性」が伸び悩やむ原因は、誰もが感じていても、それが問題と意識されていないからと言えます。
ご相談のチラシひとつとっても、利益達成できないのは、その戦略のありかたに、問題があるといえます。
売上が悪いのは「雨が多い、お客さんが少ない、商品が売れない」利益が出ないのは、「人がいない、人件費が上がったから」とチラシ問題を避けて言うべきだと 取締役、運営部長、店長は学んでいます。
冷静に考えてみればわかることなのですが、取締役や運営部長や店長は、優秀な人材であり店の売上利益を上げるために、日夜努力している人です。
しかし その説明は婉曲的で「雨が多い、客数が少ない・・・」どれも少しずつ真実が含まれていますが、真相を明らかにしていません。
確かに、ときには、遠回しな言い方をしないと・・・その気持ちも理解できますが、これが年間の利益に大きく影響が出る、となれば見過ごすわけにはいきません。
特に9月~11月の3か月間というのは、売上が低いため、赤字もしくはギリギリの月となりがちです。
ここの対策をとれば、次年度以降の利益の増え方が変わってくるのではないか?と考える重要な時期と言えます。
そういう伊藤自身、これに気づいたのは、前職時代からのある失敗があったからといえます。
前職のチェーンでは毎年この季節になると、某プロ野球球団の優勝セールに乗じて、売上が大きく変動しました。優勝セール開催には、数日前からセール商品搬入が始まり、店舗は在庫の山となります。
また、セールに備え店舗は、常に人員を多く抱え続けていくこととなります。誰もが、野球の勝負に集中し、時間感覚が麻痺し、手をうたなければならない在庫と人員という大きなリスクに、異を唱える状況になかったのです。
問題は、一瞬上がった売上はあっという間で終わり、残された在庫や人件費の検証が、されなかったことにありました。つまり、このセールの是非について議論するというよりも、それが問題として存在してなかったのです。
この単純なこと気づかなかったのは、セールの開催の有無を理由に、日常的なデータを収集してこなかったことにありました。
幸いなことに、店舗の日常データからこのおかしな構造に気づくことができ、数店の店舗で起こっていることは、同じことが全店で起きてるはずと仮説を立てることが出来たのです。
年間利益の6割を12月で稼ぐという収益構造は、売上のピークに合わせるという高コスト構造を常態化させ、平常月でもこうした優勝セールがあれば、人件費をかけることを容認するものとなっていました。
これをきっかけに、利益を更新するためには、新たな基準を設定し必要人員で運営する原点に立ち返るべきだということとなり、20年間続いた「某プロ野球球団の優勝セール」は終止符を打つことになったのです。
「野球」という文字を「チラシ」に置き換えてみればわかると思いますが、そのおかげで「チラシ」を打たないという、次の一手が打つことができ、利益更新ができる企業となったのです。
この売上が下がるリスクをとり、実をとっていったことで、それまでかかっていたコストを軽減させることができ、そこから全ての月が黒字に変わっていったのは言うまでもありません。
商売の未来について予測するのは難しいですが、失敗は、想定を超えた時に起こるものであり、そこに大きな次へのヒントが隠されているといえます。
詳しくは セミナーでお伝えしておりますが、小売りチェーン改革に関わる中で、終始一貫して申し上げているのは、「失敗」は、我々の意識や行動をどうしていけばいいのかを 教えてくれるということです。
何か失敗をしたとき「調査する時間やそのリスクは取れるのか」という声が聞こえてきそうですが、「失敗」をするようなことに挑戦しなければ、学習も更新もできない。むしろ「失敗活用」はビジネス上最も効果的な手段といえます。
さあ、貴社では、「失敗」をリスクと考えますか、それとも利益更新の手段と考えますか?
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