第37話 社長の仕事は、社員にフィードバックすること。
「ソノダさん、”社長ならどうするだろう?”と自問自答できるプラチナ社員を、どうすれば育成できるのでしょうか?」ー社内業務の混乱・停滞に改善の兆しが見え始め、いよいよ社員教育に本腰を入れたいと感じていらっしゃる社長からの質問です。
社長と同じモノサシで機動的な判断ができるように、日頃から、社長の経験や知恵、そして想いを社員に言い聞かせてください・・・と言われても、日常業務に加えて、社内外の調整に追われていて、社員教育や面談をする時間を捻出するのは難しい。ましてや社員一人ひとりのレベルに合わせて言い聞かせると言っても無理がある・・・ということで、相談に来られました。
そこで、プラチナ社員の教育は、日常業務の中で実施してください・・・と改めてお伝えしました。特に、中小企業の社長は、一人で何役でもこなして、改めて社員教育の時間を確保できないというのは、おっしゃる通り。ですから、日常業務や定例会議の中に”プラチナ社員が育つ仕組み”を入れておけばいいのですよ・・・と。
例えば、社内で、月に1度、業務の進捗状況を確認する定例会議を開催しているとしましょう。この会議を、”プラチナ社員を育成する場”として捉えるか、”社員の仕事を管理・監督する場”として捉えるかで、忙しい中でも効果的にプラチナ社員教育ができるか否かに大きな差が出てきます。
実際のところ、私が顧問をさせていただいている中小企業の社長の多くは、こうした定例会議を、”社員の仕事を管理・監督する場”として捉えて、社員からの報告を求め、対処療法的な業務指示をして会議終了・・・という状況が常態化しています。
報告を受けることがありすぎて、社長がしゃべる時間がない・・・という訳でもありません。ただ、中小企業の社長の心根には、”わたしは自分だけでここまでやってきた”、”社員は自分自身で勉強すべき”、”今時の社員はなぜそれができないの?”という”コダワリ”が厳然としてあり、想いや知恵の”出し惜しみ”をしているに過ぎないのです。
だからこそ、”定例会議はプラチナ社員を育成する場”と捉え、そこに向き合う覚悟を持つことが、まずは肝要なのです。覚悟さえできれば、会議の前日ともなると、社員に言い聞かせたい、あるいはフィードバックしたい様々なメッセージが、社長の心に思い浮かんで来るものです。
”昨今の経営状況を踏まえて、私のこういう経験談を言い聞かせよう”、”○○君には、あの件についてフィードバックして、仕事の仕方を修正してもらおう”、”△△さんには、もう少し難しい課題に挑戦させてみよう・・・という具合に。
一見、定例会議における、ありきたりのフィードバックに見えて、其れ相応の時間をかけなければ獲得できない貴重な経験や知恵が、そこには沢山込められているのです。こうしたフィードバックを受けた社員と、そうでない社員に成長の差が出てくるのは、火を見るよりも明らかです。
フィードバックを徹底して、日常業務や定例会議をプラチナ社員育成の場にしてしまう・・・中小企業の社長にとっての人材育成は、ここにあるのではないでしょうか。