なぜ、営業では、守・破・離の考え方が重要なのか
「うちの若い営業マンは、いくら教えても育たないよ、やはり営業は教育しても無駄なのかな〜」という相談をよく受けます。その相談に対して当方がよくする質問なのですが、「御社は営業の型はありますか?」と聞きます。
そうすると、「営業の型?何を言っているの?営業に型なんてそんなものあるわけないでしょう。営業は人の経験によって様々なのだから〜」というお答えを良くいただきます。
この型というのは、守破離の「守」を意味しています。守破離とは、日本での茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方の一つです。一応、この意味についても簡単に記しますね。
守:決められた型や指導者の教えを守ってこれを繰り返して基本を習得する段階のことを「守」と言います。
破:基本を習得したら、自分なりの工夫を行い、基本を破り発展する段階のことを「破」と言います。
離:基本の型から離れて、独創的なオリジナルの領域を発揮する段階のことを「離」と言います。
なんとなく、守破離の意味は理解できたでしょうか。ここで言う、営業の型とは、守破離の「守」になります。そう、営業のやり方の基本ということです。
これらを理解できたところで、この「守」の重要性を理解してもらうために、次の簡単な演習をよくやっていただいております。
一枚の紙に1から57までランダムに書かれた数字があります。90秒の時間で、1から順番に次の数字を見つけて○をつけていってもらいます。さて、90秒でランダムに書かれている数字を目の前にして、あなたは、全ての数字に○印をつけることが出来るでしょうか?だいたい多くの方は、30前後当たりの数字で終了します。
でも、90秒で上記の演習は誰でも終了することができます。このことを演習体験者に話すと目がキョトンとしておられます。さて、普通は30前後当たりの数字で終了するのが、誰でも90秒以内に最後の数字の57まで○印をつけることができるのでしょうか。その答えについて自問自答してみてください。
さて、皆さんは、どのような答えがでてきたいでしょうか?
何回も同じことを繰り返して行う経験でしょうか?(何度かやればそのうち分かる)、できる人をじっと見ていればそのうち分かるでしょうか?(俺の背中をよく見ておけ)、できるまで、あきらめずにがんばるでしょうか?(気合と根性でなんとかする)
この演習と上記の答えを営業に当てはめてみてください。皆さんの会社でも上記の答えのようなことが起こっていないでしょうか?
もし、そのようなことが起こっていれば、この演習を90秒でクリアするには時間がかかります。これが、うちの若手は成長しないという考え方に近いものがあります。
では、90秒でクリアするためには、どうすれば良いでしょうか。答えは、この演習にはやり方があります。そのやり方を知れば誰でも90秒で57の数字まで○をつけることができます。そう、答えは、やり方を知っているかどうかだけです。経験も背中を見て盗むも根性も関係はありません。やり方を知るというだけです。
もし、営業のやり方について基本の型があればどうでしょうか。それを知ることによって成長のスピードは速くなると思いませんか?でも、多くの会社では、営業は属人的なので、型をつくるのを面倒くさがり、直属の上司に任せているというのが実情のようです。
上記のようなことは製造の作業現場ではありえないことです。1日の生産量は、属人的になるので、何個できるかはやってみないと分からないということです。ありえないですよね。でも、営業の現場ではそのようなことがあります。
では、何故、営業の基本の型が必要なのか。ここからは、私見を述べさせていただきます。私が30代の時に述べ1,000人ぐらい(中小企業の営業担当者)のロールプレイング(セールストーク演習)を実施してきました。そこで、分かったことは、トップセールスマンと言われている素質を持っている方は、10人中1人もしくは2人ぐらいだったということです。残りの9人は凡人です。そう、多くの方は凡人なのです。
トップセールスマンの素質を持った人であれば、守破離の「守」は必要ないと個人的に思っております。もともとセンスが良いので、どんどん自己成長をしていきます。逆に基本を教えることで成長が鈍化するケースもあります。
でも、今までの経験則から、多くの営業担当者は凡人です。ちなみに、私が営業を担当した時も超凡人でした。(この超がつく意味は、過去の“営業コンサルタントとはトップセールスマンの人がなるのですか”のコラムを参照願います。)凡人ゆえに、営業における基本の型が必要であると思っております。
そして、トップセールスマンであるほど、基本の型を熟知せず、部下に守破離の「破」を教えている場合があります。例えば、訪問販売の会社で初対面のお客様に会ってから30秒以内で笑いを取ることが大事であるということを新人に教えていました。その人は、ホストみたいなタイプで、キャラが確立されているので、30秒で笑いを取ることは簡単ですが、新人にとっては、30秒以内で笑いを取ることは至難の技です。この教えを忠実に実践する凡人の営業マンの多くは、自分は営業に向いていないということで辞めていってしまいます。
ここで、誤解のないように補足をしておきますが、「守」は若手の成長を早めるために必要であるということです。「守」ができあがれば、次は、「破」「離」の段階に行きます。次のステップに進まないと成長がないからです。逆に「守」の段階で止まっていると営業テクニックだけのマニュアル人間になってしまいます。
営業は、人間対人間になりますので、その人らしさが必要になります。その人らしさが加わるので、営業は属人的であると言われるのかと思います。しかし、凡人であれば、その人らしさを付加する前に基本の型の習得が必要になると私は思っております。
貴社では、営業に関わらず、守破離の基本の型はお持ちでしょうか。
この基本の型が、若手の成長の起爆剤になります!
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